レポート  ・水素社会について   
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水素の性質と水素利用の課題 − 水素社会について(3)
中学校の理科の教科書といえば、表紙裏に見開きで貼り付けられていた元素周期表を思い出す方は多いと思います。この周期表は実は、近年ゆとり教育による教科書改訂の一つとして中学高校の教科書から削除させていたのが、学力低下が叫ばれる中で、今春(2006年)から復活することになったようです。


1.最も軽く、原子半径の最も小さい元素


さて、元素周期表では、最も軽い元素から順に並べられていて、最後に最も重い元素がきます。その最初にくる元素番号1の元素が水素なのです。
・元素周期表
 → http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/9948/pt1.html


水素は、元素のなかで、『最も軽く、原子半径(いわば元素の粒)が最も小さい』という性質を持っています。空気の重さを1とすれば、水素の重さは約 0.07 という軽さですから、水素を入れた風船は軽々と空に浮遊して行きます。


2.水素脆性とリーク(漏れ)


原子半径がとても小さいので、水素はどこにでも入り込んでいく性質があります。材料中に侵入し自由に抜け出せる、空中を自由に飛行し、大空へ拡散して行くという、忍者のような性質を持っています。この水素の性質で問題になるのが水素脆性(ぜいせい)とリーク(漏れ)の問題です。


金属材料が水素と接触すると、水素が金属材料の結晶粒界(結晶と結晶の境界)に侵入していって、材料を脆(もろ)くしてしまいます。金属材料、特に最も頻繁に使用させる鉄鋼材料が、水素雰囲気中で脆くなる性質を『水素脆性』(すいそ・ぜいせい)といいます。


水素を入れた風船は、空気を入れた風船より早くしぼみます。これは、水素が風船のゴムの材料を通り抜けるからです。水素を入れた金属の容器でも同じように、水素のリーク(漏れ)が問題になります。


水素が持っているこれらの性質を克服してどうやって水素を輸送し、貯蔵するのか? 水素の流量(使用量)をどうやって計測するのか? 利用する機械の材質は? など、水素エネルギーシステムを実現させるためには、材料開発や各要素技術の開発、社会基盤(インフラ)の整備が前提となります。


3.水素貯蔵合金


逆に、水素が材料中に侵入しやすいという性質を利用すれば、金属材料中に水素を貯蔵することできます。金属の中には、より多くの水素を取り込む性質のあるものが複数あることが知られています。これが『水素貯蔵合金』と呼ばれているものです。


材料中に貯蔵して置いて、必要な時に取り出して利用できることは、電気や熱エネルギーにはない、水素エネルギーの利点とされます。


4.拡散しやすい水素


LP(プロパン)や都市ガスには、ガスが漏れたときに気がつきやすいようにわざと特有の臭いをつけてあります。LPガスや都市ガスは、水素のように軽くないため(空気を1として、LPガスの比重は、1.56 都市ガスは 0.6 程度)、低いところにこもってしまった引火して爆発する」危険性があるからです。


これに対して、水素は漏れれば軽いので大気中で上昇し拡散して行くので、こもってしまうことがありません。水素の救いだといわれます。したがって、水素は無臭で使われます。


5.安全性の確保


浮揚ガスに水素ガスを用いた全長約 245mの巨大飛行船ヒンデンブルグ号は、1937年5月6日、大西洋横断を終え、アメリカのニュージャージー州レイクハーストに着陸する際に尾翼付近から爆発・炎上し、乗員・乗客97人中 35人と地上の作業員1名が死亡するという事故を起こしました。この事故以来、水素は危険と考える人が増え水素ガス飛行船は姿を消してしまったのです。
・報道写真展 特別編(20世紀の残像)
  → http://news.goo.ne.jp/news/exhibition/vol_06/photo02.html


しかし最近では、この事故の原因は、水素の爆発ではなく、外皮に使われた引火性の高い塗料と燃料の油による火災だったという説が有力とされています。


中学校の理科の実験でだれもが経験したように、確かに水素は、空気と適度に混ざると爆発を起こして燃焼しするとい性質を持っていますが、それだけ燃料として優れているということであって、危険ということでは、ガソリンや灯油、天然ガスやLPガスも同じです。水素利用の安全確保に関するいろいろな取り組みがなされています。


そのような現状の中で、3つのトピックス記事をあげてみました。


■家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(松下電器)
  → http://panasonic.co.jp/appliance/FC/index.htm


最近、テレビのコマーシャルに登場している家庭用水素燃料電池システム。電気や、都市ガスのように、水素をライフラインで家庭に送るところまでインフラがまだ整備されていません。そこで、松下電器は、都市ガスが燃料にして燃料電池本体で水素を作って、電気や熱を発生させる家庭用システムを開発して売り出しました。


■水素燃料電池バス 世界9都市でデビュー
EICネット海外ニュース 2001.03.21   
  → http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=447


2001年、ロンドン、アムステルダムなどヨーロッパの9都市は、世界ではじめて、水素を燃料とする燃料電池バスを試験的に導入することを発表しました。実際に走るのは2002年末、または2003年からの予定。試験期間は3年程度の見込みのようです。試験運行に参加する9都市は、ロンドン、レイキャビク、ストックホルム、アムステルダム、ルクセンブルグ、ハンブルク、シュトゥットガルト、バルセロナ及びポルト。


■水素燃料電池自動車、米の開発計画に日本勢3社参加
NIKKEI NET:車 特集/燃料電池車(2004年4月29日)
  → http://car.nikkei.co.jp/sp/fuelcar.cfm?i=2004042808708s1


米エネルギー省は米政権が国家プロジェクトとして取り組んでいる水素エネルギー研究開発計画に参加する 100以上の企業、大学、国立研究所を選定しました。日本からは水素燃料電池自動車の開発プロジェクトにトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの米現地法人が参加。  



2006.03.22 
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