レポート | ・暮らしぶりと制度 − シンガポールについて(3) |
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暮らしぶりと制度 − シンガポールについて(3) | |||||
第1回で、国のはじまりと歴史について、第2回で街並みと車事情についてレポートしましたが、第3回(最終回)は、暮らしぶりと制度についてのレポートです。 1. 共働きとメード 資源のないシンガポールは、人が財産ということで、女性の就業率が63%とアジアの中で最も高い国です。託児所が少ないこともあって、共働きの家庭ではメードを雇っています。 シンガポールはもともと多民族国家であるためメードを雇うのに抵抗はないようです。総人口 420万余のなかで、約14万人のメードが働いているといわれます。メードは、住み込みが一般的で、育児から料理、洗濯、掃除まで引き受けてくれます。ほとんどが、インドネシアやフィリピン、スリランカから働きに来ている若い女性で、賃金は、月2万円前後ですが、毎月約2万3千円の外国人雇用税を別途払う必要があります。 シンガポールは、日本より少子化傾向の強い国で、政府は少子化対策の一環として、メードの人件費を所得税控除の対象とするなど、さまざまな助成策を実施しているようです。 2.外食と七度の食事 シンガポールでは、家庭で料理を作ることは稀(まれ)で、基本的に3食とも外食だそうです。最も一般的な食事の場は、ホーカーといわれる、日本でいうフードコート(ショッピングセンターやアミューズメント施設で、軽飲食店を集めた区画のこと)で、ショッピングセンターや団地、バスターミナルなどのあちこちにあります。 そして、一日三食ではなく、サパー(Supper)と称して夜10時以降に4度目の食事をとるばかりでなく、午前と午後に軽食をつまみ、そして深夜に夜食をとる人も珍しくないようです。一日七食ということになります。 ニュートンサーカスという、地下鉄ニュートン駅近くにある屋台風のフード・センターにフルーツを食べに行きましたが、夜11時前というのに沢山の客でごった返していました。24時間営業の店も多く、徹夜で食べ明かす人も多いようです。 ホーカーでは、一皿あたりS$2〜4(140〜280円)くらいの値段ですから、500円〜 600円もあればおなか一杯食べられるようです。シンガポールは、食材のほとんど100%を輸入に頼っていますが、多種多様の食材が安定的に供給されており、政府の政策もあって、ホーカーや屋台などで安価で美味しい料理が庶民の胃袋を満たしているということのようです。 3.年金制度 シンガポールには日本の健康保険にあたる制度がない代わりに、CPF(中央積立基金、Central Provident Fund)という制度を利用します。CPFとは、すべての国民が給料の2割を、国の管理下にある個々人の口座に積み立てることが義務づけられている強制積立貯金制度です(企業側からも賃金の16%が拠出されます)。 この制度は、老後に備えて貯蓄するという目的で始まったものですが、現在では、主に、年金・医療費・住宅購入費などの国が認める用途に限って引出しができるしくみになっています。若いうちから、計画的に将来のことを考え、また健康なときから病気になった場合に備えることを国が義務付けているわけです。個々人が、自分のことは自前で保障しょうという考え方のようです。 4.住宅事情 シンガポールは、国土が狭いので土地が高価です。そのため持ち家を持てないという国民の不安を解消するため、政府がビルの建設を積極的に行なってきました。 シンガポール人の85%が、政府の住宅開発局・HDB(Housing Development Boad)が建設した公共住宅団地、いわゆるHDBに住んでいます。HDBには、賃貸と分譲がありますが、95%以上の世帯が分譲で、そのためシンガポールの持ち家率は、90%近くに達しています。 日本の公団住宅と違ってHDBは、地下鉄が走る沿線沿いの、すぐ目の前にバス停があり、タクシーも簡単に利用できる交通の便のよい場所に立地しています。というのは、マイカーをもたない層を対象にした公団住宅だからです。外国人はHDB住宅の購入はもちろん、賃借も直接はできませんし、シンガポール人でも独身者は申し込みできないそうです。 国民の4%程度の人が、HDBよりランクが上のコンドミニアム(通称コンド)と呼ばれる民間の高層住宅を購入しています。プールやテニスコート等の諸設備の整った高級マンションで、こちらの方はマイカーを持てる金持ち層を対象にした住宅のため、HDBより奥まった場所に立地しています。 一戸建て住宅は、シンガポール植物園の裏手の鬱蒼(うっそう)とした樹木が茂る閑静な住宅街辺りで3億円以上し、少し外れた区域でも一億円するそうです。一戸建てに住んでいる人は、国民の数%にすぎません。 5.教育制度 シンガポールには義務教育制度はありませんでしたが、98%以上の就学率が達成されてきたそうです(2003年1月から小学校の6年間が義務教育になったようです)。 シンガポールでは、小学校(6年間)、中学校(4年間)、ジュニア・カレッジ(2年間)の6・4・2制が標準的なコースで、その上に大学(3〜4年間)があります。 小学校4年生を終了するとき、全国共通の一斉テストが行なわれ、その結果に応じてコースに振り分けられて、5、6年生の教育は実施されるそうです。中学校も、特別コース(Special)と短縮コース(Express)、普通コース(Normal)に分けられ、普通コースはさらに学術コースと技術コースに分けられるそうです。 大学進学を目指す生徒は、日本の高等学校にあたるジュニア・カレッジに進学しますが、工業技術や商業に興味のある生徒は、ポリテクニック(Polytechnic )と呼ばれる実務教育(職業訓練)を行う3年制の専門学校へ進みます。 大学は、国内に4つしかなく狭き門となっていて、海外に留学する人も多いようです。全国民に占める大卒者の割合は1割程度に過ぎず、大学を出れば国を支えるエリートというわけです。 以上のように、シンガポールでは、小学校から始まる厳しい選別、振り分けが教育の基本にあり、子どもたちは初等教育の段階から進学を意識して勉強せざるを得ないわけで、見方によっては、日本以上に厳しい受験戦争社会と言えるのかもしれません。 シンガポールの教育制度にも、人こそ財産という一端が伺い知れます。 (完) |
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2005.10.19 | |||||
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