レポート  ・街並みと車事情 − シンガポールについて(2)   
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国のはじまりと歴史 街並みと車事情 暮らしぶりと制度

街並みと車事情 − シンガポールについて(2)
シンガポール観光の魅力といえば、まず緑豊かな美しい街並みがあげられます。都心の西端の先にあるシンガポール植物園(Singapore Botanic Gardens )は、観光ルートの一つですが、その鬱蒼(うっそう)とした樹林の雰囲気は、都心を東西約2キロにわたって横切るシンガポールのショッピングタウン、オーチャード・ロードをはじめ、市街のあちこちまで続いています。
 
                  1.ガーデンシティ政策
 
1963年に、マレーシア連邦から「足手まといだ」と見捨てられるようにして分離独立せざるを得なかった危機存亡の中で、初代首相リー・クアンユー氏は、通商都市国家として生きていく道を選択しますが、人口密度が高く不快なだけの単なる近代都市ではだめだとして、公園のように美しい近代国家(ガーデンシティ)を思い描きます。
 
そして、「環境および公衆衛生に関する規制」や「公園および樹木法」といった都市景観を保全するための法律を制定して、積極的な統制政策を実施してきました。
 
公園などの公共の場所で煙草の吸殻やゴミをポイ捨てしたり、植物の採取などをすると、最高5,000S$( 35万円)の罰金が科せられるなど、厳しい法規制が敷かれていますし、樹木保全地区内では、たとえ自分の土地にある樹木や植物であっても、所定の大きさを超える木は勝手に切れないし、手入れも義務付けられています。
 
国民に様々な規制を強いる一方、政府自らも徹底した樹木の管理を行ってき、 500万本ある街路樹の一本一本について、肥料を施した日、開花や落実の時期などの細かい点に至るまで樹歴がコンピュータ管理されているそうです。
 
                     2.車の価格
 
アジアの多くの国で交通渋滞が慢性化していますが、淡路島ほどの大きさの国土に、420万余の国民が住む国でありながら、シンガポールでは、ほとんど渋滞なしで車が行き来しています。常に通過車両のスピードが時速20km〜30kmを保てるよう統制されているといわれます。
 
シンガポールの車の約80%が日本車だそうです。トヨタ・カローラ、日産・サニー、ホンダ・シビック、マツダ・ファミリアなどが人気のようですが、これらの排気量が1,300〜1,500CCの車が、 500万円以上するというのですから、シンガポールでは車は高嶺の花です。
 
シンガポールで車を所有しようと思えば、製造国でのメーカー販売価格に輸送費、保険、装備費などを加えた市場価値にさらに、関税、物品サービス税、車両登録料、追加車両登録料を払う必要があるばかりでなく、ユニークな制度として、新たに自動車を所有したい者は、国が発行する自動車所有権証書(COE)を取得する必要があります。
 
例えば、シンガポール市場価格が150万円の1,500CCクラスの車を所有する場合について、費用を計算してみましょう。関税、物品サービス税、追加車両登録料が、それぞれ市場価格の20%、5%、110%、車両登録料が約1万円ですので、取引価格は354万円になります。
 
COEは、陸上交通庁が毎月2回実施する公開入札によって取得します。その時の取得希望者が多いと入札価格は上昇しますが、排気量 1,600CC以下の車の場合、落札価格は約 160万円前後のようです(有効期間は10年間で、10年したら取得し直す必要があります)。
 
したがって、取引価格にCOE取得費用を加えると 500万円を越えます。このようにシンガポールでは、車の取得費用を上げることによって自動車の所有に制限を加えていて、車の所有率は、国民10人に1台の割合に過ぎません。
 
                   3.ERPシステム
 
シンガポールでは、高速道路も全て無料ですが、ただし渋滞緩和の目的でピーク時に市内中心部の幹線道路および高速道路を通過する車から料金を徴収するシステムがあります。
 
ERP( Electronic Road Pricing)と呼ばれるこのシステムは、一種の混雑税で、道路上に設置されたガントリー(門型の架橋)が通過する車を認識して課金する仕組みです。
 
例えば、午前8時から午前9時30分のピーク時に幹線道路を通過すると最高で 160円程度が課金されます。ガントレーを通過するたびに料金が課金されるので複数回通過すれば、それだけ費用がかかります。したがって、運転手はそのことを念頭において走行ルートを選択しなければなりません。
 
                  4.安い公共交通機関
 
日本製の小型車が500万円しますから、ベンツやBMWなどは 2,000〜3,000万円するといわれます。なのに、ベンツやBMWがたくさん走っていますから、シンガポールはやはり、金持ちの多い国なのでしょう。
 
とはいっても、10人に9人は車を持っていませんので、車の所有制限と利用制限を行なう一方で、政府は国民に不便を生じさせないよう公共交通機関の充実に力を入れています。
 
公共交通機関として、(1)タクシー、(2)バス、そして、(3)MRT(大量高速輸送)と呼ばれる地下鉄・電車がありますが、いずれも極めて料金が安く、かつ便利です。
 
MRTやバスは、どれだけ乗っても2S$(140 円)ですみますし、タクシーも、たとえば、ラッフルズ・シティ・ショッピング・センターからオーチャード・ロードまでの約2kmの距離を、4〜5S$(280〜350円)あれば行けます。信号待ちもあるので、日本国内だったら1,500円以上はかかるでしょう。
 
このように、シンガポールでは、政府による車の「所有制限」と「利用制限」によって、ガーデンシティにふさわしい、渋滞のない交通状況を作り出している一方で、公共交通機関の充実に力を入れて、国民の便を図っています。ここにも、「効率と統制の国」といわれるシンガポールの一端が伺い知れます。
 
【参考にしたサイト】
車の関税、物品サービス税などの税率の具体的数値については、下記のサイトを参考にしました。
・シンガポールだより
 → http://www.pref.shimane.jp/section/kokusai/singa041110.htm
 

2005.10.19  
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