レポート  ・ロシア民謡   
− ロシア民謡 −
ロシア民謡といえば、きっと皆さんにもお気に入りの曲があると思います。民謡というから、ロシアの伝統的民族音楽かというとそうではなく、帝政ロシア時代からソ連時代に生まれた大衆歌曲のうち、戦後日本で広く歌われるようになったものをひっくるめて、ロシア民謡というジャンルで呼ぶようです。
 
例えば、ソ連時代の1982年に人気歌手プガチョワがモスクワで歌って大ヒットし、日本では、松山善三・訳詩、加藤登紀子の歌で1987年に発表された『百万本のバラ』も、これらのジャンルに入るようです。ロシア民謡には、物悲しいメロディの曲が多いですが、日本人好みのする短調な曲だけが日本に持ち込まれたのが実情のようです。
 
ロシア民謡といえば、歌声喫茶。昭和30年(1955年)代に流行しましたが、昭和40年(1965年)頃をピークに急速にブームは衰退、カラオケスナックやカラオケボックスの出現もあって、昭和50年頃にはほとんどの歌声喫茶が店を閉めました。
 
そして、ソ連崩壊後は、ロシアから流行歌が入ってくることもなくなり、ロシア民謡はいま、すっかり懐かしい歌曲となりつつあるようです。ロシア民謡にはエピソードのある曲がたくさんあります。例えば、『トロイカ』や『長い道』のエピソードはつぎのようです。
 
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『雪の白樺並木、夕日が映える、走れトロイカ、ほがらかに、鈴の音高く 〜 』で知られる『トロイカ』は、ハバロフスク地区の日本人捕虜による楽団『カチューシャ』によって日本に持ち込まれました。
 
 ・『トロイカ』をMIDIで聴く
→ http://washimo-web.jp/Information/Trojka.htm
 
短調ですが、アップテンポで歯切れが良く、歌詞の内容と相まって、戦後暗く落ち込んでいた日本人に明るさを与えてくれた曲の一つに違いありません。クリスマスの日、夕映えの雪の白樺並木を、高らかに鈴の音を鳴らして、若者が恋人を迎えにいきます。なんてロマンチックな光景なんでしょう。しかし、原曲の内容はそうではありません。
 
トロイカとは、三頭立ての馬車もしくはソリのことです。この歌の原題名は『ほら、郵便トロイカが走っていく』というもので、馬を操りながらトロイカで郵便配達をする若い御者が、金がなかったため、恋人を金持ちの村長に横取りされ、嘆きの歌を歌う内容の歌詞です。
 
それを、楽団『カチューシャ』が、ブラーホフ作曲のトロイカと間違って訳したのもがそのまま日本に持ち込まれ(ウィキペディアより)、また楽団『カチューシャ』は、リズムもアップテンポのものにしました。
 
当時、馬車は最も主要な輸送手段でしたが、御者の仕事は過酷な労働だったようです。同じくロシア民謡に『郵便馬車の馭者だった頃』という歌がありますが、御者の仕事に追われて恋人のことを省みる暇もなかった若者が、恋人を吹雪で失ってしまうという内容の悲しい歌です。
 
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一方、『長い道』(あるいは『遠い道を』)というロシア民謡は、この名前ではあまり知られていませんが、『花の季節』という名のジプシー曲として、中学校の音楽の教科書に使用されているようです。先ずは、MIDIで聴いてみましょう。
 
 ・『花の季節』をMIDIで聴く
→ http://washimo-web.jp/Information/HananoKisetsu.htm  
 
どこかで聴いた覚えがありますね。そうです、1968年に、イギリスの歌手、メリー・ホプキンが大ヒットさせた『Those were the days 』(あの頃は良かった)の原曲なのです。日本では『悲しき天使』というタイトルでカバーされてヒットしました。
 
この歌の作曲者、ボリース・フォミーンは、ペテルスブルクの名家の出身で、1917年のロシア革命直後のモスクワで人気作曲家になりましたが、スターリンから気に入られず、1940年代に演奏活動が禁止。薬を買う金さえもないという極貧のうちに48歳の生涯を閉じました。
 
しかし、歌は旧ソ連の亡命者たちによって国外に持ち出され、口伝えに歌われ続けていました。それを聞きつけたポール・マッカートニーが手を加え、メリー・ホプキンのデビュー曲となりました。過ぎ去った楽しい日々への思いが切々と歌われます。
 
   昔、居酒屋があった
   そこで乾杯し、笑い過ごした日々
   そうした日々に終わりが来るとは思っていなかった
   一日中、そしてずっと歌い、踊れると思っていた
   自分が選んだように生きられ、
   戦って負けることはないと思っていた
   私たちは若かった
   自分たちの道を確信していた
   そして、そのような月日はあっという間に過ぎ去った
   今夜、またその居酒屋の前に立っている
   なにもかもがあの日のようではない
   グラスに虚ろな影が映る
   その寂しげな影は、本当に自分なのだろうか?
 
では、メリー・ホプキンと、岩崎宏美の歌で聴いてみましょう。
 
 ・メリー・ホプキン
   → http://www.youtube.com/watch?v=6e_5SaFui4M
 ・岩崎宏美
   → http://www.youtube.com/watch?v=OBeABHq-BRE
 
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いろいろなロシア民謡のメロディをMIDIで聴くことができるサイトがあります。下記アドレスで、『うたごえ喫茶のび』というサイトを開き、左フレームにあるメニューで『ロシアのうたごえ』をクリックして下さい。良く知られている定番曲に加えて、例えば、『初恋時代』『百万本のばら』『郵便馬車の馭者だった頃』などがお薦めです。
 
 ・うたごえ喫茶のび
    → http://www.utagoekissa.com/
 
最後に、ロシア民謡の定番中の定番の一つ、『山のロザリア』を日本のポップス歌手・八反安未果(はったんあみか)さんの歌で聴いてみましょう。
 
 ・山のロザリア 八反安未果
    → http://www.youtube.com/watch?v=YkI06Ytx-9Q
 
【参考にしたサイト】
[1]ロシア民謡:フリー百科事典『ウィキペディア』
[2]声合唱団チャイカ -「悲しき天使」の原曲
  → http://sea.ap.teacup.com/chaika/215.html
[3]トロイカ:フリー百科事典『ウィキペディア』 
 

2008.04.09
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