レポート | ・ハイヤ節と越中おわら節 |
− ハイヤ節と越中おわら節 − |
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津軽アイヤ節(青森)、佐渡おけさ(新潟)、北海道ソーラン節(北海道)、そして阿波踊り(徳島)を初めとして、塩釜甚句(宮城)、浜田節(島根)、宮津アイヤエ踊り(京都)、庄内ハエヤ節(山形)、加賀ハイヤ節(石川)、鹿児島ハイヤ節など、全国には、ハイヤ節系の民謡が多く現存しています。 これらハイヤ節系の民謡は、熊本県牛深(うしぶか)の『牛深ハイヤ節』がその始まりであるといわれます。牛深は、天草下島の最南端にある港町で、江戸時代、薩摩と上方を往復する船の寄港地として栄えました。 ・牛深の位置を地図で見る → http://washimo.web.infoseek.co.jp/Information/Ushibuka.htm 当時の船は、帆船だったので、上がり船は南の風を、下り船は北の風を使って次の港へ航海していました。牛深は、風待ち、シケ待ちの港でした。九州では南風のことを「ハエの風」と呼びます。「ハエ」が「ハエヤ」になり、さらに「ハイヤ」になって歌詞が生まれました。 ハイヤエーハイヤ ハイヤで今朝出した船はエー どこの港に サーマ 入れたやらエー 「南風に乗って今朝船出した船は、今頃どこの港に入っていることだろう」と、船乗り相手の一夜妻ともいうべき『新銀取り(しんぎんとり)』の女たちが、酒席で歌うのです。 風待ち、シケ待ちのために牛深に立ち寄った船乗りのほとんどは、賑やかなハイヤ節と酒に酔い、牛深乙女の情にほだされたのです。歌は、さらに続きます。 エーサ 牛深三度行きゃ三度裸 鍋釜売っても酒盛りゃしてこい 戻りゃ本土瀬戸徒歩(かち)わたり 酒盛り唄として歌い出された『牛深ハイヤ節』は、九州西海岸を航行し、関門海峡経由で大阪入りする帆船によって、瀬戸内海へ持ち込まれ、さらに北前船によって大阪から日本海側の港へと広まっていきました。 ずっーと訪れたいと思い続けてきた越中八尾の『風の盆』を、今回見に行きました。『風の盆』は、編笠を目深くかぶり、そろいの法被(はっぴ)や浴衣を着た男女が、哀調を帯びた胡弓(こきゅう)や三味線の音色に合わせ、民謡『越中おわら節』に乗せて、町中を優雅にゆったりと踊り流します。 加賀藩三代藩主・前田利常公から拝領した「町建て」の御墨付を、八尾町の開祖・米屋少兵衛の子孫より取り戻したことを喜んで、町中の人々が昼夜、総出で、俗曲、浄瑠璃、にわかなど、思い思いに嗜好を凝らして、町内を賑やかに練り廻りましたのが、そもそもの起こりだといわれます。 その後、この祭日三日が孟蘭盆(うらぼん)三日になり、やがて二百十日の厄日に、風よけと豊饒(ほうじょう)を祈る『風の盆』に変わっていきました。 八尾よいとこ おわらの本場 二百十日を オワラ 出て踊る 唄で知られた 八尾の町は 盆が二度来る オワラ 風の盆 『越中おわら節』は、三味線、太鼓、そして胡弓の音に合わせて、大変高い調子で朗々と歌われますが、高音から唄いだされる民謡は、日本海側には出雲地方の安来節以外に例がなく、『越中おわら節』の甲高い調子とその唄い方は、『ハイヤ節系』の流れを汲んでいるといわれます。 当時富山湾を航行した北前船が、商人をともなって、神通川、井田川を八尾までさかのぼり、物資の交易事業に従事するかたわら、土地の人たちとの交流を深めるなかで八尾の地の唄とハイヤ節系の唄が融和定着して『越中おわら節』の発生へ至ったのではないかと推測されています。 そうだとすると、鹿児島県の著者の自宅から直線距離にして50〜60kmの距離にあり、隣県の町とは言え、比較的馴染みのある牛深と、はるか富山の八尾が結びつくのです。大変興味深いことです。牛深市では、毎年4月中旬に『牛深ハイヤ祭り』が行なわれます。来春訪れてみたいと楽しみにしています。 【備考】 『おはら風の盆』については、旅行記があります。 → http://washimo-web.jp/Trip/KazenoBon/kazenobon.htm 『牛深ハイヤ祭り』の旅行記があります。 → http://washimo-web.jp/Trip/UshibukaHaiya/uhaiya.htm 【参考にしたサイト】 [1]おわら風の盆 → http://homepage3.nifty.com/kazegumi/history.html [2]全国盆踊り:おわら風の盆の歴史 → http://www.bonodori.net/zenkoku/owara_kazenobon/owara_rekishi.html [3]越中おわら節 → http://senshohamada.hp.infoseek.co.jp/minyou/minnyou-ettyuuowara.htm [4]生業と民謡 → http://www1.tkc.pref.toyama.jp/contents/furusato/tvkouza/00minyo/ t00-2.html [5]ハイヤ節 → http://www1.ocn.ne.jp/~sho1948y/haiya.htm [6]牛深市「市政10月号(平成11年)」 → http://www.mayors.or.jp/shisei/shisei99.10/ushibuka.htm |
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2005.09.07 | ||||
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