西米良村を訪ねて－宮崎県児湯郡／旅行記

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旅行記　・西米良村を訪ねて－宮崎県児湯郡　2016.07.04

にしめらそん
西米良村

おがわ作小屋村全景

おがわ作小屋村　西米良村の東端の小川地区はかつて菊池の殿様・米良領主が城を構えられた歴史ある場所ですが、現在人口約 100人で高齢化率約65％の集落。地区民総出で平成21年（2009年）10月に立ち上げたのが『おがわ作小屋村』。『平成の桃源郷』を目指して、西米良独特の文化『作小屋』を再現したものです。

おがわ作小屋村（本家）

『作小屋』はかつて、母屋から離れた場所での山仕事や農作業のため寝泊りできる作業小屋としてつくられたものでした。『おがわ作小屋村』は、『作小屋』（本家／食事処、休憩所）、旧米良領主の居城であった小川城址に建てられた『小川民俗資料館』『民話館』、６棟12部屋からなるコテージ『桃源郷』からなります。

おがわ作小屋村村（休憩所）

かやぶき屋根の古民家が立ち並ぶ『作小屋』のうち、本家と呼ばれる西側の建物は、小川でとれた食材をふんだんに使った料理を提供する食事処で、小川の『おばちゃん』たちが山菜など地元で採れた食材をふんだんに使った郷土料理を真心込めて作っています。農産加工品なども販売。休憩所は、体験、交流など多目的に利用できます。

おがわ四季御膳

おがわ四季御膳　看板メニューは、16種類のおかずを小皿に分けて提供する『おがわ四季御膳』。四季折々の食材を使うため、小皿メニューは月替わりです。値段は1,200円（税別）。地元産の農産物をふんだんに使い、煮しめやつくだ煮を提供したところ大ヒット。限定５食で始まり、今は最高 100食ほどを出すまでになったそうです。

おがわ作小屋村

小川城址公園　小川城址公園は米良山中の石工らが築いたといわれる石垣が周囲を囲みます。西米良は古くから焼畑農耕の地でした。『小川民俗資料館』（写真下）には、農法の歴史や、山での仕事、人々の暮らしを伝える民俗資料等、菊池一族の遺品や書簡など、村の歴史を伝える歴史資料が収蔵、展示されています。

フ小川民俗資料館（中央）と民話館（左手）

カリコボーズの伝承をはじめ、テレビ番組『まんが日本昔ばなし』にも登場する『龍の渕（うるし兄弟）』や『よだきごろ』など、西米良村は民話の宝庫で、100話もの民話があるそうです。『民話館』では、公園内に立ち並ぶ宿泊施設の母屋として食事の提供をしたり、語り部による民話語りなどが行われています。(カリコボーズと民話絵本)

小川城址公園（小川民俗資料館・民話館）

おがわ作小屋村の取組み　地区住民の有志27人で構成された、小川作小屋村運営協議会が運営を担っています。オープンのきっかけは、深刻化する過疎化・高齢化への危機感からだったそうです。小川地区は事業開始前、65歳以上の高齢化率が71％に達していて集落存亡の岐路に立たされていました。

小川集落入口にある民宿を兼ねた商店

こうした中で、西米良村側が地区に作小屋村づくり事業の話を持ちかけました。おがわ作小屋村全体の集客数は初年度の2009年度だけで約１万9000人、2011年度には２万人を突破しました。2013年度は約２万7000人が訪れ、売り上げも約2700万円を記録したそうです。

小川集落の消防車庫

西米良村には、交通信号機は村役場のある村所の商店街に一ヶ所あるのみ。もんちろんスーパーやコンビニはありませんので。小川集落の入口にある民宿を兼ねた商店は、昔のままの形態で営業をしています。道が狭く、村役場からは相当離れているので、消防車は走って来れないので自衛消防です。上の写真に消防車庫と消防ホースが見えます。

小川地区の集落入口からも見た全景

一刻も早い築城が望まれた彦根城の建築には、佐和山城をはじめ、小谷城、長浜城、大津城などといった近隣の旧城郭の石垣や建造物が使われました。彦根城の天守は、関ヶ原の戦いで西軍の攻撃に耐えた大津城の天守を解体し、その材木や瓦などを移して造られたといわれています。

湖の駅

湖の駅　西米良村に南端に近い位置にある『湖の駅』。国道 219号沿いにあり、一ツ瀬川に面した施設からは、ダム湖が眺望できます。店内では、ユズ、シイタケ、コンニャク、無農薬野菜など、地元の特産品が売られています。また、季節の山菜や山野で捕獲されたイノシシを使ったうどんやどんぶりなど、季節の味を楽しむことができます。

噂のコロッケ看板（湖の駅）

『噂のコロッケここにあり！』。こんな看板を目にしたら、入ってみない訳にはいきません。一個70円。二個買いました。そばの団子がコロッケの皮を羽織っている食感。看板がいいですねとお店の人に言うと、ここの兄ちゃん、絵がうまいのよと。全く看板次第です！西米良村の湖の駅で。店内には、地元の物産が売られています。

日本一の木造車道橋『カリコボーズ大橋』

カリコボーズ大橋　一之瀬川にかかるこの橋は、宮崎県産スギ材の需要拡大等を目的として、ふるさと林道緊急整備事業により、平成12年度（2000年度）から14年度（2002年度）にかけて架けられた木造車道橋です。幅７m（２車線）、橋長140m(日本一）　最大支間長48.2ｍ(世界一）の世界的にも最大級の木造車道橋です。

日本一の木造車道橋『カリコボーズ大橋』

樹齢約50年生の県産スギを集成材に加工し橋の構造用材として活用されています。橋の形は、地元の名峰・米良三山（市房山、石堂山、天包山）をイメージしたデザインで、山形のキングポストトラスが３連に並んでいます。橋には、古くから西米良地方に語り継がれている精霊（妖怪）『カリコボーズ（かりこぼうず）』の名前が使われています。

川の駅『百菜屋』

川の駅『百菜屋』　カリコボーズ橋の袂（たもと）に2005年（平成17年）夏開店した川の駅。地元のとれたての野菜や手づくりの加工品など、地産のさまざまな食材を『作って・売って・食べる店』であり、また『百歳まで元気に活躍する村民が切り盛りする店』であるというの二つの意味を込めて名前が付けられました。

川の駅『百菜屋』

お食事処のメニューは、うどん・そば、しいたけ南蛮定食、だご汁定食あるいは山菜カレーなど。営業時間は、午前９時～午後６時（売店）、お食事処（午前11時～午後３時）12月30日から１月３日までが休業。一番人気は、肉厚のシイタケと鶏肉を揚げ、手作りタルタルソースをかけた『しいたけ南蛮定食』（定食700円、単品450円）だそうです。

西米良村の商店街（向うに見える交通信号機が村唯一の信号機）

西米良村の位置とアクセス南北に細長い宮崎県の南北にはほほ中央、東西ヘ西端で、熊本県と県境を接しています。西米良村から国道を30数km北上すれば椎葉村という位置にあります。宮崎市街地から国道219号を車で走って２時間弱。国道 219号は、西米良村を通って、熊本県湯前町から人吉市街までつながっています。

村役場（商店街）近くの一之瀬川沿いの家並み

鹿児島県さつま町の著者の自宅からは、人吉まで丁度１時間15分。人吉から西米良村の役場まで１時間。計２時間15分かかりました。『おがわ作小屋村』まではさらに40分かかりましたから、自宅から片道３時間のドライブでした。道は、ずっと舗装された国道を走りましたから問題なかったですが、国道219号を分かれて小川地区までの約６kmの道（民話街道）は細いでした。

一之瀬川沿いの民家（竹原地区）

注目される西米良村　千葉市と同じ広さだけれど森林が96％を占める土地にわずか1,200人が暮らす宮崎県西米良村。落人の秘境を彷彿とさせるようなところですが、過疎克服の村として注目を集めています。①『西米良型ワーキングホリデー制度』（農家の農作業を手伝うことによって小額の報酬をもらい滞在費をほとんどかけずに村に滞在して観光ができるしくみ）を導入。

国道219に沿って流れる一之瀬川の風景（横野付近）

運営主体は第3セクター『株式会社　米良の庄』。受け入れ農家の状況を確認しながら、参加希望者に人手を必要とする農家を紹介します。『西米良型ワーキングホリデー制度』の取り組みは、交流人口拡大、人手不足解消。②地元住民協議会が運営する『おがわ作小屋村』の年間来客数は約２万人③全国平均（１．４）を上回る出生率２．２を実現。

春の平棚田（竹原地区、日本の棚田百選）

春の平棚田（はるのひらたなだ、日本の棚田百選）　一ツ瀬川沿いにあり、1920年（大正９年）、竹原地区の有志４名によって結成された共同開田工事組合が1924年（大正13年）までに5.5haの水田を拓きました。石積みは美しい風景を呈しており、秋の収穫時には、『はさ掛け』の景観も楽しめます。

春の平棚田を見下ろす『半鐘の丘』

たこらさるく　半鐘の丘　この「たこらさるくモニュメント」は３人の作家（大野匠氏、小河孝浩氏、杉原木三氏）が共同で制作しました。モニュメントに乗っている３個の石は、左より杉原氏が竹原地区の中心地から、大野氏が井戸内地区、小河氏が元米良地区から頂いたものです。モニュメントと一緒に、ここから見える竹原地区の美しい風景をお楽しみ下さい。～上写真の看板より

半鐘とモニュメント

　『たこら』は、たけわらの略語（西米良村竹原地区の方言）、「さるく」は、ぶらぶらと歩き回るの意味（九州地方の方言）です。このモニュメントは、春の平の水田が拓かれた当時の、基準となるレベル（水平出し）の技術の話を聞き、そこからヒントを得て出来た作品だそうです。

半鐘の丘のモニュメント

また、『半鐘』は釣鐘の小さいものだからそう呼ばれ、本来は寺院・陣中などの合図に用いていましたが、江戸時代から火の見櫓につるし、火災・洪水・盗賊などの非常時に鳴らすようになりました。それが、今も引き継がれてきたわけです。この竹原地区はそう広くない集落ですから、この半鐘を叩けば全戸に響きわたるでしょうから、きっと今でも使用できるのでしょう。

火の見と半鐘

『わがまち」いきいきアートプロジェクト』（期間：平成27年９月９日～11月30日）は、作家の独自の視点や発想を生かして、地場資源に着目した創作などの現地展開型の活動を実施することにより、作家や美術館と地域の方々との交流を促進し、県民が文化に親しむ機会の一層の充実と、中山間地域を中心とした地域を盛り上げようというプロジェクトだったそうです。

半鐘の丘のモニュメントと春の平棚田

桃栗３年柿８年、ユズの大馬鹿18年　『桃栗３年柿８年』は知っていましたが、『ユズの大馬鹿18年』は初めて知りました。ユズ（柚子）は成長が遅いことからそう言われるそうです。種子から育てる実生栽培では結実まで10数年、カラタチへの接ぎ木で数年かかるそうです。しかし、耐寒性が強く、柑橘類に多い病気への耐久性があるためほとんど消毒の必要がなく手がかかりません。

土産に買って帰ったユズ加工品と物産館のある『村所驛』

無農薬栽培が比較的簡単にできるという特徴から、山間部の特産として栽培されています。ユズ栽培で村おこしの村として『高知県馬路村（うまじむら）』が知られていますが、西米良村でも古くから栽培されていて、特産品としユズ加工品が売られています。柚子チョコスティック、ゆずドレッシング、ゆずみそだれをお土産に買って帰りました。

ユズ加工品を手がける（有）米良食品（右手の白い建物）がある板谷集落

西米良村の歴史　米良氏は、南北朝時代（1336～1392年）に南朝方につき、敗れた後、九州山地の肥後国米良郡米良山（めらやま、現在の宮崎県西米良村地方）に逃れた名族菊池氏の末裔です。江戸中期以降は、肥後国米良の中心地小川に館を構え、明治維新後に菊池氏に改姓しました。

菊池記念館・歴史民俗資料館

明治５年（1871年）の廃藩置県により人吉県（後に八代県の扱い）となりますが、翌年に美々津県（宮崎県の前身）に移管されました。明治22年（1889年）の町村合併により、西米良村と東米良村にまとめられ、その後、東米良村は昭和37年（1962年）に西都市へ吸収合併されました。一方、西米良村は平成の大合併の中でも１村自立をめざし、今日に至っています。

菊池記念館・歴史民俗資料館

【参考にしたサイト】
（1）平成の桃源郷『おがわ作小屋村』（公式サイト）
（2）ここが“平成の桃源郷”おがわ作小屋村の挑戦　宮崎・西米良村
（3）出生率2.2の小さな村　過疎克服の秘訣は「村民が楽しむこと」
（4）村民が楽しみ、誇りを取り戻すことで過疎を克服！出生率2.2を実現した村宮崎県　西米良村
（5）自然や伝統芸能を活かした村おこしおこし

⇒　」カリコボーズと民話絵本

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