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旅行記 ・霧島神宮御田植祭 − 鹿児島県霧島市 2016.03.12
きりしまじんぐうおたうえさい
霧島神宮御田植祭
御田植祭のラストを飾る『田の神舞
2016年3月11日のその朝の
薩摩地方は強霜でとても冷え込みました。この時期、南九州はその年の五穀豊穣を祈願する
農耕の春祭り、いわゆる予祝の田遊び神事がたけなわです。
社務所から本殿に向かう神官の行業(ぎょうごう)
旧歴2月4日の
その日は、霧島神宮の御田植祭(鹿児島県指定無形民俗文化財)でした。天孫降臨の
神話にちなんだユーモアあふれる農耕祭りです。
本殿に着きます
神官が本殿に到着し鎮座すると、
午前10時、威勢のいい第1声の太鼓とともに、牛の面を被った御神牛が『モー、モー』と
鳴いて境内を暴れまわり、それを合図に祭事が始まります。
まず奉納されるのが『剣舞』と『薙刀』
約1時間後、本殿での祭事が終わると、
境内の雰囲気が一変して、いよいよ御田植神事が始まります。本殿前の広場に、四方に忌竹を立て
注連縄を張り巡らして、田んぼに見立てた斎場がつくられています。
いわゆる浄めの舞です
そこででまず
舞われるのが、剣(つるぎ)舞と薙刀(なぎなた)舞です。
いわゆる、斎場を浄める『浄めの舞』です。
囃子方(笛と太鼓)
神舞の奉納は、
神宮の社人である児玉・橋元両家の人たちがするしきたりと決まっていて、両家において
300年以上前から先祖代々引き継がれてきているわけです。
こちらは『薙刀舞』
かぎ引き
『ワッショイ、ワッショイ』
浄めの舞が終わると、
斎場の両側から氏子の若者がワッショイ、ワッショイの声をかけながら、二本の
椎(しい)の大枝が斎場の中へ運び込まれます。
二本の椎(しい)の大枝が運び込まれます
一つは、『男木』と呼ばれる
かぎ状になった大枝で、もう一方は『女木』と呼ばれる二股になった大枝で、ワッショイ、
ワッショイの声勇ましく、反時計回りに引き回されます。
一本は『男木』でもう一本は『女木』です
程なくして、
男木と女木の二本の大枝は斎場中央に運ばれ、股とかぎを絡(から)ませて威勢の
いい掛け声とともに枝が引き裂かれます。
大江大枝が引き裂かれると拍手が沸き上ります
翁(おきな)と媼(おうな)の農耕劇に
先立って行われるこの神事は、『かぎ引き』と呼ばれる耕地の儀式です。細かく裂かれた枝は肥料に見た立てて
境内にまかれ、祭りが終わると縁起物として観客が戴いて帰ります。
椎は肥料に見立てて境内にまかれます
農耕劇
『ばあさん、牛を見なかったか? 牛がいない!』
南九州に多く
分布する農耕の春祭り、いわゆる予祝の田遊び神事で
共通するのが牛が登場することです。
『いや〜、見なかったよ! じいさん』
その牛が
いずれの田遊び神事でも、いうことを聞こうとしない暴れ牛なのです。
農耕をしようとしたら牛がいません。
『じいさん、やっとのことでつかまえたよ!』
『ばあさん、牛がいない!』。
やっとのことで、ばあさんが牛をつかまえました。馬鍬
(まぐわ)
引かせますが、仕事に集中しない牛。
『ばあさん、ほれほれ、馬鍬だ!』
面から顔を出して、
観客に愛想をふりまく始末。『こら、こら! 何をしちょっと!』と
ばあさん。これはこれは難儀なことです。
『こら! 何しちょっと!』
それでも何とかなだめて、
代掻きをする翁(おきな)と媼(おうな)でした。牛、翁、媼の面や
装束は300年以上前から使われてきたものです。
『さぁ、さぁ! 馬鍬ひいた、ひいた!』
散籾・御田植
まず天津祝詞の奏上
翁と媼が牛を
何とか御して代掻きが終わると、二人の神職によって
天津祝詞(あまつのりと)が奏上されます。
種籾(たねもみ)が運ばれます
『高天(たかま)の原(はら)に
神留(かむづま)ります・・・』、天津祝詞は神道の祭祀に用いられる祝詞の一つで、犯した罪
あるいは穢れを祓うために唱えられる祝詞だそうです。
種籾が勢いよく蒔(ま)かれます
天津祝詞の奏上が終わると、
二人の神職が籾種(もみだね)を持って登場。勢いよく蒔いたり、
垂らすように蒔いたり、種籾を境内に蒔きます。
こちらは散らすように
つぎに、榊(さかき)の枝を
持った神職が現れます。榊を早苗に見立て、それを植えれるお田植えの真似をして境内にまきます。
それが終わると、最後を締めくくる『田の神舞』となります。
フリ榊(さかき)を早苗に見立てて植える真似をします
田の神舞
特大のめしげを持って登場する田の神
この田の神様は
霧島神宮のおん田の神さあでございます。御田植祭のラストを飾るのは、特大の
めじげ(しゃもじ)を手にした田の神の舞う『田の神舞』。
方言丸出しの口上
『きょう、旧歴2月4日、
霧島さあの田植に、田の神もようようまかり出もした』などと、鹿児島弁で
面白く可笑しく口上を述べます。
仕草は大きくゆっくりと・・・
この田の神さあの
持ちたるめじげで、上の粟飯んとこよ(上の粟飯のところを)、
はれのけはれのけ(払い除き払い除き)、
田の神もいずれ劣らね役者です
底ん米飯んとこよ
(底の米飯のところを)、つっおこしつっおこし(突き起こし突き起こし)
ななめつけはん・・・・などと、
面もユーモラス!
方言丸出しの
軽妙でひょうきんな口上や狂言回しが、終始
会場の笑いを誘います。
滑稽な狂言回しが笑いを誘います
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