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田中一村を訪ねて − 鹿児島県奄美大島
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日本のゴーギャンと称される画家・田中一村(たなかいっそん)。ゴーギャンがパリを捨てて南海の島・タヒチ島で強烈に生き切ったように、一村もまた東京に決別して、奄美大島の、誰にも知られぬ孤独と貧窮の中で新しい画境を切り開いた画家でした。50歳で奄美に移住した一村は、大島紬の染色工として生計を立てます。紬工場で何年間か働き、蓄えができたら絵に打ち込むという生活を繰り返しながら描いた約30点の作品は、まったく未発表のまま残されましたが、一村没後、NHK教育テレビの『日曜美術館』で紹介され、その独特の画風が注目を集めました。一村終焉の家や田中一村記念美術館などを訪ねました。 レポート 『画家・田中一村』 も併せてご覧下さい。     (旅した日 2006年08月)
   
   
一村終焉の家
長年住んだ廃屋のような借家からこの終焉の家(写真上・下)に移った一村は、ここを御殿のようだといってとても喜び、新たな創作意欲を燃やしたそうです。
   
       田中一村の生涯
  
本名、田中孝。明治41年7月23日、栃木県下都賀郡に生まれる。幼い頃から画才を現し、7歳のとき児童画展で文部大臣賞を受賞する。大正15年東京美術学校(現東京芸大)に入学し、日本画科を専攻、同期に日本画壇の主流を歩んだ東山科魁夷らがいたが、入学後間もなく諸々の事情が重なり、わずか3ヶ月で中退した。
  
昭和13年、東京から千葉へ移住、その間、襖絵や天井画の作品を描く。昭和22年、第19回青龍展に『白い花』を初出品し入選したが、以後
画壇との接触を断ち、絵筆一本の放浪の旅に出る。
  
昭和33年の暮れ、奄美を訪ねた一村は、ここを終生の地と定め、
大島紬の染色工として働きながら、亜熱帯の野性的な植物、原色長野魚類、動物等を20年にわたる創作活動のモチーフとして約30点の作品を残し、昭和52年9月11日、69歳で孤高の生涯を閉じた。
  
昭和59年12月9日、
NHK教育テレビ『日曜美術館』で『黒潮の画譜−異端の作家田中一村』と題して、一村の画業が全国に紹介され大きな反響を呼び、翌年1月、同番組としては異例の再放送となった。      
  
    
 〜現地の記念碑の文から抜粋〜
昭和52年(1977年)9月11日、この家で一人で夕食を支度中、心不全で倒れ、69歳の生涯を閉じました。当時は、現在の場所より少し離れた所にありましたが、没後、都市計画の都合で現在の名瀬市有屋の市有地に移転されました。
  
大島紬
50歳で奄美に来た一村は、大島紬の『摺(す)り込み染色工』として生計を立てます。紬工場で何年間か働き、蓄えができたら絵に打ち込むという生活を繰り返しました。上の写真は、『泥染め』の様子(龍郷町の大島紬村で)。
  
  
一村も描いたビロウや芭蕉などの亜熱帯植物
(龍郷町の大島紬村で)
  
  
摺り込み染色
        摺り込み染色
 
板締め注入染色法では、一色にしか染まらないので、デザインによって局部的に別色を必要とする場合に用いられるのが『摺(す)り込み染色』の技法です。
 
染め上がった絣(かすり)糸を束のまま長く延べ、ところどころを紐(ひも)でしばって絣のくずれるのを防いで置いてから板図案をあてがい、竹べらで摺り込んでゆきます(写真左)。
 
その後、染色した絣糸を蒸し箱に入れて蒸気熱で加熱して染料を糸の内部に定着させてます。
一村は、この『摺り込み染色工』で、生計を立てました。上下の写真は、いずれも龍郷町の大島紬村で。
  
  
  
手織り
大島紬は高機(たかばた)を用いて、すべて『手織り』(写真上)で作られます。織りは根気のいる女の仕事と言われ、一反(幅37.5cm、長さ12.4cm)を織りあげるのに、柄の難易度にもよりますが、1ヶ月から数ヶ月を要します。およそ7cmぼど織ったところで、経糸をゆるめ、一本一本たんねんに針で絣を合わせていく『絣調整』を行ないます。写真は、龍郷町の大島紬村で。  
  
  
田中一村記念美術館
パンフレット
  
  
              アダン(阿壇)
タコノキ科の常緑高木で、パイナップルのような実を付けます。一村も絵に描き、一村を描いた映画『アダン』のタイトルにもなっています(奄美パーク内で撮影)。
  
  
美術館
平成13年(2001年)に、笠利町の鹿児島県奄美パーク内にオープン。館長は、宮崎緑氏。
休館日第1・第3週曜日、12月30日〜1月1日
開館時間 午前9時〜午後6時。ただし、7月1日〜8月31日の間は、午後7時まで
常設展示室観覧料 一般200円、高・大生140円、小・中学生100円
  
                高倉
奄美らしい建物、高倉。田中一村記念美術館は、この高倉をモチーフにしてデザインされています(写真は、大浜海浜公園で)。
  
鹿児島県奄美パーク内の風景
  
  ・レポート 画家・田中一村 ⇒ 奄美の海と原生林
【参考】下記のサイトで一村の作品を見ることができます。

■tanaka02
      http://www.ne.jp/asahi/yoshida/gaia/tanaka/frm.htm
■田中一村展 オンラインギャラリー
     → http://www.cc.toin.ac.jp/MA/orgn/tanaka/index.html

  
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