♪花の歌(ランゲ)
ぴあんの部屋
若山牧水生誕の地を訪ねて − 宮崎県日向市
                        (
明治、大正から昭和にかけて、全国を旅し、旅に明け暮れ歌を詠んだ若山牧水は、今なお広く支持を得て、国民的歌人として親しまれています。『幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく』。かの地へあくがれて、かの地へ行けば、またかの地へあくがれ行く。いくつもの旅を重ねながら43歳の短い生涯を走り抜けた牧水は、『あくがれの歌人』と称されます。生涯に約8,700首の短歌を詠み、全国に259基の歌碑が建てられているといわれます。その牧水の原点である生れ故郷、宮崎県日向市東郷町坪谷を訪ねました。   (旅した日 2007年07月)


尾鈴の山々
坪谷から望む尾鈴の山々 大正元年(1912年)、27歳の秋、牧水は、父立蔵が病気のため帰省中であったが、近親者たちから故郷にとどまって就職するよう強く求められ、進退に迷って苦闘苦悩の日々を送った。こうした苦悩の中に詠んだ歌が、『ふるさとの尾鈴の山のかなしさよ秋もかすみのたなびきてをり』(歌集『みなかみ』に所載)である。


牧水生家
           牧水生家

牧水生家は弘化2年(1844年)頃に祖父健海が建て、医を開業した。健海は埼玉県所沢在の農家に生れ、長崎で医術を学び、26才の時、坪谷の友を訪ねたが坪谷の山水の美に心うたれそのまま永住したのだろうといわれている。階下の道路に面した四畳の部屋が当時の診療室で、その他の部屋は家族の居間である。

東側の板縁は牧水が生れたところである。二階東側の明るい部屋は牧水が学生時代のころ夏休みなどで帰省中の居室で、西側のうす暗い部屋は、明治45年7月、父病気のため帰省して約十ヶ月苦悩の日々を送った際の居室である。この苦悩の間に詠んだ歌五百余首を第六歌集『みなかみ』に収めている。この時代を『みなかみ』時代と呼ぶ。階下の西側の納戸は、

 ・飲むなと叱り叱りながらに
    母がつぐうす暗き部屋の夜の酒の色

 ・納戸の隅に折から一挺の大鎌あり
    汝が意思をまぐるなといふが如くに

と詠んだ納戸である。
(現地、牧水顕彰会の説明文より)
     牧水と妻・喜志子

昭和2年(1927年)7月、妻・喜志子を伴って帰郷したときの写真。写真に写る縁板が今も当時のまま保存されています(現地に展示の写真を撮影)。昭和2年といえば、牧水42歳。これより一年後の9月、43歳で死去。

牧水は、情熱的な恋をしたことでも知られている。二人の子持ちで、同行者さえいた園田小枝子と苦悩の末別れた頃知り合ったのが、自らも歌人であった太田喜志子(1888〜1968)である。喜志子夫人は、酒と旅に生きた牧水の43歳までの生涯を支え続けた。

     生家付近の風景

上の写真で前に白い車が止まっている、屋根が白っぽく光っている建物が牧水生家。道路を西(写真の上方)へ600m進むと、牧水が通っていた坪谷小学校がある。左側に水が見えているのが坪谷川。坪谷川と尾鈴連峰の風景(写真下)は、牧水の原点である。
     牧水記念歌碑

牧水生家のすぐ後の小丘に記念歌碑(写真右)がある。自然石に牧水の筆跡で『ふるさとの尾鈴の・・・』の歌が刻まれている。昭和22年(1947年)11月除幕。


坪谷小学校
         牧水略歴
明治18年(1885年)
  立蔵とマキの間に長男として
  誕生。繁と命名。
明治29年(1896年)(11歳)
  坪谷尋常小学校を卒業し、
  延岡高等小学校に入学。
明治32年(1899年)(14歳)
  延岡中学校に入学。 16歳のとき
  初めて短歌をつくる。
明治37年(1904年)(19歳)
  延岡中学校を卒業、早稲田大学
  高等予科に入学。
明治41年(1908年)(23歳)
  早稲田大学英文科を卒業。
大正9年(1920年)(35歳)
  沼津千本松に移り住む。
昭和3年(1928年)(43歳)
  沼津の自宅で没。
延岡中学時代から創作活動を始めて44歳までの生涯に約8,700首の短歌を詠み、歌碑も全国に259基建てられているといわれます。旅と酒を愛した国民的歌人として、今なお広く支持を得ています。
坪谷小学校
若山牧水の母校である坪谷小学校を訪ねてみると、校庭に『牧水ヶ丘』という一角がありました。同校では、週に一度短歌を作る『牧水タイム』という活動などを通して、日頃から短歌に親しんでいるそうです。


『あくがれ』の歌人
歌人で若山牧水研究家の伊藤一彦氏(牧水記念館長)は、牧水を『あくがれ』の歌人といいます。『あくがれ』の語源は『在所』を『離る』。つまり、魂が今在るところを何かに誘われ離れ去って行くという意味で、そこから『思いこがれる』という今日の意味が生れまたと言われます。坪谷川をはさんで牧水生家の向かい側に『牧水公園』があって、その公園内に『牧水記念館』があります。写真は、牧水公園に建てられている牧水像。
 レポート  ・若山牧水 〜 あくがれと二面性


あなたは累計
人目の訪問者です。
 
Copyright(C) WaShimo All Rights Reserved.