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♪秋の歌(チャイコフスキー) | ||
Piano1001 | ||
安心院の鏝絵(こてえ) − 大分県宇佐市安心院 |
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安心院(あじむ)ワイナリー |
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折敷田地区の鏝絵 |
鏝絵(こてえ) 鏝絵とは、土蔵や家の戸袋や壁などに描かれたレリーフ(浮き彫り)のことです。平に塗られた漆喰(しっくい)の壁面に鏝(こて)を使って薄肉状に盛り上げた浮き彫りを施し、彩色したものです。 安心院では、明治初頭から盛んに描かれるようになり、今でも70余ヵ所に鏝絵が現存し、全国でも一番の密集度を誇っています。 安心院の鏝絵には、戸袋一枚を使ったものや大壁一面を使ったものなど、ダイナミックな技法・手法が使われています。 図柄は、七福神、龍虎、鶴亀、獅子や風景などが描かれ、邪を遠ざけ、幸福を招く招福辟邪の祈り、五穀豊穣、子孫繁栄の願いが込められています。 賀来信子氏宅(折敷田) 図柄 『唐獅子・七五桐』 母屋妻壁、高吉・作、明治 (写真上) 獅子舞で身近なライオンは、神聖かつ獰猛な百獣の王とされ、文殊菩薩の騎乗獣でもあります。文殊菩薩は知恵の菩薩であり、獅子の力強さは、魔除けとなります。 |
保存鏝絵 図柄 『一富士、二鷹、三茄子』 蔵戸袋、長野鐵蔵、明治23年 (写真上) 安心院を代表する左官の大棟梁・長野鐵蔵(1848〜1927年、安心院町龍王出身、門人14名)が明治23年(1890年)に製作したもので、安心院町大仏の上鶴精さん宅の蔵の二階の戸袋にあったもの。平成16年(2004年)、保存のために取り外し、安心院町楢本の鏝絵師永田知徳さん(68才)が、7ヶ月かけて修復。現在の所有者は本通促進会で、安心院本町通り『よこいよ公園』に、展示されています。 新作鏝絵(料亭・やまさ旅館) 図柄 『滝登りの鯉とすっぽん』 (写真左) 安心院すっぽん料理の老舗としても有名な料亭・やまさ旅館に飾られた新作の鏝絵。東椎屋の滝登りをする鯉の水音に、スッポンがびっくりしている絵だそうです。 |
佐藤正彦氏宅(下毛) 図柄 『恵比寿大黒・鯉の三番叟』 母屋戸袋、長野鐵蔵・作、明治28年 (写真上、右) 福の神の中でも最も人気があるのが、、大黒様と恵比寿様。鏝絵の画題の中でも、龍とともにもっとも数が多く、人気のほどが伺われます。 三番叟(さんばそう)とは、能の翁(おきな)の役名ですが、この鏝絵で面白いのは、猿回しが猿に演技をさせるように、烏帽子(えぼし)を被った鯛が恵比寿様に踊らされています。長野鐵蔵の作で、ユーモラス、ユニークな発想の持ち主でもあったことを伺わせる作品でです。 縣屋酒造の新作鏝絵 縣屋(あがたや)酒造(写真下)は、正徳2年(1712年)創業の老舗。妻壁に描かれた毘沙門天・弁才天・布袋の図柄は、平成16年(2004年)作の新作鏝絵です。 |
重松家の鏝絵 |
重松忠一氏宅(折敷田) 図柄 『虎』 母屋戸袋、長野鐵蔵・作、明治17年 (写真上、右) 松竹梅の一員である竹林から出現する虎。実際、東南アジアでは最強の猛獣であり、強い力は魔物を寄せ付けません。疱瘡(ほうそう)などの疫病除けの意味があります。 重松家の三階建てと鏝絵 大工を京都に派遣し宮づくりの勉強をさせた後に建築させたのが、明治17年築の三階建ての建物(写真下)です。三階部分は、天守閣を思わせる造りになっています。 この建物の三箇所の戸袋それぞれに『虎』『龍』および『松』の、大壁に『富士山』の鏝絵が描かれています。富士山とは、湯布院の由布岳、いわゆる豊後富士を描いたもので、いずれも長野鐵蔵の作です。 重松忠一氏宅(折敷田) 図柄 『富士山』 母屋大壁、長野鐵蔵・作、明治17年 (写真右) |
重松忠一氏宅(折敷田) 図柄 『龍』 母屋戸袋、長野鐵蔵・作、明治17年 (写真左) 中国では龍は、麒麟・鳳凰・亀とともに四霊と呼ばれて、神秘的な動物であると考えられていました。水や雨に関係深いとされ、五本指の龍は中国皇帝のシンボルでもあり、富と権力の象徴とされます。 渦巻く黒雲の中から現れた『雲龍』は、雨の象徴とされています。稲作にとって水は不可欠な要素でした。恐ろしげな鏝絵の龍の目にはガラス玉を入れ銀箔を張り、その光る眼で悪霊をよせつけません。 |
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龍王地区の鏝絵 |
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大江秋子氏宅(龍王) 図柄 『鷲』 母屋戸袋、長野鐵蔵・作、明治20年 (写真上) 鷲の図柄には、魔物から家を守る願いが込められています。鋭いくちばしや爪がリアルに描かれています。 龍王地区と鏝絵 安心院盆地の真ん中にあるのが、標高315mの龍王山。その南側のふもとを県道50号が通り、奇岩が連続した名勝『仙の岩』があります(写真下)。龍王地区(写真左)は龍王山の北側の台地にあります。長野鐵蔵が龍王地区出身の左官職人であったため、龍王地区に見られる『朝顔・雷』『虎』『鷹』は、彼の作品となっています。 今回は取材できませんでしたが、妙菴寺というお寺の本堂の壁には、蓮の華と家紋を描いた長野鐵蔵作の鏝絵が残されています。 安心院盆地の田んぼでは、稲刈りが始まっていました。空のブルーと山の緑と稲穂の黄色、そして刈り取った稲の色。コントラストが綺麗でした(写真下)。 |
大地区の鏝絵 |
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岩尾嘉一氏宅(大) 図柄 『雁に人』 母屋戸袋、佐藤本太郎・作、明治20年 (写真左) 漁果を背負って空を見上げると雁が飛んでいます。晩秋をイメージさせる図柄です。 『浦島太郎』、『雁に人』とも佐藤本太郎の作で、彼は大棟梁・長野鐵蔵の弟子でした。色の淡さに特徴があります。 訪れたのは9月の下旬でしたが、安心院は彼岸花が満開でした。夏の極暑を引きずって未だに残暑の厳しい日でしたが、緑陰には秋の気配がありました(写真下)。 |
矢畑・上河内野・水車の鏝絵 |
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稔りの秋を迎えた安心院の素朴な農村の風景です(写真上)。ここから南に下れば、20km足らずで湯布院。電柱の向こうに豊後富士(由布岳、1583m)が見えます。 矢野和馬氏宅(矢畑) 図柄 『小槌・鍵』 居蔵妻壁、山上重太郎・作、明治 (写真左) 打ち出の小槌は一寸法師の説話にもあるように、世を伸ばすだけでなく、宝を振り出す道具であり、蔵の鍵は手に入れた金銀財宝をしまっておく土蔵の象徴です。 赤野卓氏宅(上内河野) 図柄 『龍』 土蔵妻壁、佐藤姓・作、明治 (写真下) 土蔵妻壁は崩れかけていていて、建物の年期が伺いしれます。 |
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飯田・荘・矢崎の鏝絵 |
本田雅人氏宅(飯田) 図柄 『鷲』 母屋妻壁、作者調査中、明治 (写真上) 糸永昇氏宅(荘) 図柄 『波に兎』 母屋妻壁、作者調査中、明治 (写真右) 斉藤昭一氏宅(矢崎) 図柄 『松に渓谷の鷹』 母屋戸袋、久保田嘉来郎・作、大正2年 (写真下) 鷹は猛禽類の王者で、強い力は魔物を寄せ付けない。松とともに描かれることが多い。一富士、二鷹、三茄子といわれるように、鷹の夢を見るとお金が儲かるといわれます。 |
【備考】本ページの説明文は、当地の観光協会で頂いた『鏝絵資料集』(安心院町教育委員会編集、平成9年2月発行) を参考にして書きました。 |
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【編集後記】 | ||
安心院の鏝絵には一枚一枚にストーリーがあって、あふれる幸福への願いが感じられます。70余ヶ所あるといわれる鏝絵ですが、今回訪問できたのは20ヶ所だけでした。また機会を得て訪問・取材したいと思っています。 | ||
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