コラム  ・サルにひかれて善光寺参り   
− サルにひかれて善光寺参り −
正しくは、サルでなく『牛に引かれて善光寺参り』です。長野市にある善光寺にまつわる慣用語の一つで、『思いかけず他人に連れられて出かけた偶然によってよい方面へ導かれること、あるいは不純な動機からでも人は正しい道に導かれる場合があること』のたとえに使われる『ことわざ』になっています。
 
昔、善光寺から東へ10里(約40km)ほど離れた信濃の国の小県(ちいさがた)という里に、それはそれは強欲で信心の薄い老婆が住んでいました。ある日老婆が千曲川で布をさらしていると一頭の牛が現れ、その布を角にかけて走り出しました。
 
老婆は驚きましたが、布惜しさに牛を追いかけ出しました。牛は野を越え山を越え、気がついてみると、善光寺の境内まできていました。老婆がやっとのことで牛に追いついたと思ったのもつかの間、牛は金堂のあたりで姿を消してしまいました。
 
あっけにとられた老婆は、驚きと悲しみに疲れ果て、その場に佇(たたず)んでしまいました。そのとき、暮色の中に一条の光明が差し、老婆を照らしました。その霊光の尊さに思わずひざまずいて菩提心を起こし、一夜を金堂にこもり、善光寺如来の前で念仏を称えながら夜を明かしました。
 
老婆は、布を探そうとする心はもうなくなり、家に帰ってこの世の無常を嘆き悲しみながら暮らしていましたが、ある日、たまたま近くの観音堂にお参りしたところ、あの布が観音さんの足下にあるではないですか。
 
牛に見えたのは、実はこの観音菩薩さまの化身であったのだと気づいた老婆は、ますます仏さまを信じて、めでたくも極楽往生を遂げました。そして、この観音さまは、今は布引観音といわれ、長野県小諸市の千曲川のほとり近くにある岩山の崖に築かれた観音堂に鎮座されておられるそうです。
 
さて、著者は今回(2015年1月)、長年の念願であった地獄谷野猿公苑(長野県下高井郡山ノ内町)に行って温泉に浸かるサルの撮影を果たしました。地獄谷野猿公苑へ行く途中、今回初めて善光寺に詣でました。すなわち、牛ならぬサルにひかれての善光寺参りだったわけです。
 
下記の旅行記があります。
  旅行記 ・善光寺 − 長野市
 
【参考にしたサイト】
(1)第1回牛に引かれて善光寺参り(信州善光寺公式ホームページ)
(2)牛にひかれて善光寺まいり 〜 布引観音解説
   (信州そば処ふるさとの草笛)


2015.02.04
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