レポート  ・宇佐神宮と隼人の乱 〜「神仏習合」の成り立ち   
− 宇佐神宮と隼人の乱 〜「神仏習合」の成り立ち −

み仏の里・国東(くにさき)半島に憧れを抱いていた著者は、今年(2005年)6月中旬に、2日間かけて国東半島の主な寺を訪ね歩きました。
 
一方、著者が住む南九州は、大和朝廷が律令制を確立する8世紀後半までの間、隼人(はやと)と呼ばれる人々がいくつかのクニを形成していた地域でした。
 
何のかかわり合いもなさそうな国東半島と隼人。ところが、宇佐神宮の歴史を調べているうちに、国東半島の『神仏習合』の成り立ちに隼人が深くかかわっていたことを知って驚いたのです。
 
日本全国には十万余の神社があり、そのうちの四万余が八幡社だと言われますから、八幡さまは日本民族に大変親しまれている神様ということになります。その八幡社の総本宮が宇佐神宮です。
 
八幡神は、元々は宇佐地方一円にいた大神氏の氏神であり、農耕神あるいは海の神でしたが、欽明(きんめい)天皇の 32年(571年)に応神天皇の御神霊が御示顕になったといわれます。その後、比売大神(ひめおおかみ)と神功(じんぐう)皇后(応神天皇の母)が御祭神に加わります。
 
大和朝廷は中国の唐にならって律令国家の建設を進めますが、東北の蝦夷(えみし)と南九州の隼人(はやと)は、その中に組み込まれることに強く抵抗しました。
 
養老4年( 720年)隼人が反乱を起こすと、大和朝廷はそれを鎮定するため、一万人の兵隊を南九州に送ります。宇佐の人々も八幡神を神輿(みこし)に乗せ、鎮定に赴(おもむ)き、3ヵ年にわたって抵抗する隼人を平定して、同7年( 723年)に帰還したと言われます。
 
そのとき、100人もの隼人の首を宇佐へ持ち帰り、宇佐神宮より西約1kmの所に葬って凶首塚を建てました。その後、そのすぐ下に隼人の霊を祀る百太夫殿が造立され、それが現在の『百体神社』(宇佐八幡宮の末社の一つ)だと言われます。
 
さらに、「隼人の霊を慰めるため放生会(ほうじょうえ)をすべし」との八幡神のお告げが下り、天平16年( 744年)に、和間(わま)の浜で、蜷(にな)や貝を海に放つ『放生会』の祭典がとり行われました。これが、今でも毎年10月の体育の日、その前日および前々日の3日間にわたって行われている放生会(仲秋祭)の始まりです。
 
このように、隼人との戦いで殺生(せっしょう)の罪を悔いた八幡神は、仏教に救いを求めました。これを契機(けいき)に、宇佐での神と仏が習合した先進的な思想が成立したのです。
 
神亀2年( 725年)、聖武天皇の発願によって現在の地に御殿が造立され、八幡神が奉祀されました。これが宇佐神宮の創立と言われます。
 
大宰府の次官であった藤原広嗣が天平12年( 740年)に反乱を起こすと、朝廷は宇佐神宮に戦勝祈願を行い、聖武天皇が進める天平19年( 747年)の東大寺の大仏建立に際して、宇佐神宮は「全国の神を率いて協力する」というお告げを出します。
 
このように多くの神のお告げを出し、九州にありながら中央政界と密接な関係を持つとともに、九州一円に広大な荘園を持ち、権力と財力を手に入れ、全国4万社余りの八幡宮の総本宮としてめざましい隆盛をみせたのです。
 
そして、天台宗の波及と相まって国東半島では、宇佐八幡の庇護(ひご)と影響のもとに、神仏習合の独特の寺院集団と信仰が形成されていきました。往時には半島一帯に 185の寺院、洞窟、僧坊を含めて約800 の大小の堂、また、石仏・石塔が点在したと言われます。
 
鹿児島県隼人町には、隼人の乱に関係する史跡として『隼人塚』(国指定史跡)があります。高さ約3mの盛土の上に、多重石塔3基と、四天王石像4体が立っている塚です。
 
宇佐神宮の勢力がやがて鹿児島神宮(鹿児島県隼人町)にも及ぶようになると、宇佐神宮で始められた放生会が、鹿児島神宮でも行なわれるようになりました。放生会の神輿(みこし)が浜の市に下る途中、立ち寄って供養の儀式を行なったところが隼人塚だったと考えられています。
 
◆下記のアドレスに旅行記があります。
 ・旅行記 宇佐神宮 − 大分県宇佐市
  → http://washimo-web.jp/Trip/Usa/usa.htm
 ・旅行記 隼人塚 − 鹿児島県隼人町
  → http://washimo-web.jp/Trip/Hayato/hayato.htm
 
【参考にしたサイト】
 ・宇佐神宮ホームページ
  → http://www.usajinguu.com/Frame.html
 ・両子寺ホームページ
  → http://www.coara.or.jp/~futagoji/


2005.08.10  
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