レポート | ・義経と滝廉太郎 |
− 義経と滝廉太郎 − |
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NHK大河ドラマ『義経』も終わりが近づいていますが、義経と滝廉太郎の接点は何かお分かりでしょうか? 父の赴任に伴い4年間を大分県竹田市で過ごした滝廉太郎は、岡城跡をイメージして名曲『荒城の月』を作曲しました。そして、岡城は、義経を迎え入れるために、緒方惟栄(おがたのこれよし)が、文治元年(1185年)に築城したのがその始まりだといわれています。 *** 岡城跡のある竹田市街から国道 502号を東へ数km走るともう豊後大野市緒方町です。緒方町原尻には、日本の滝 100選に選ばれている名瀑『原尻の滝』があります。この地は、かつて緒方庄(おがたのしょう)と呼ばれた宇佐神宮の荘園で、平安末期から鎌倉初期にかけてこの地を中心に活躍した武将がいました。緒方惟栄です。 惟栄は、嫗岳(うばだけ、祖母山)大明神の化身である大蛇の末裔で、背中に蛇の尾とうろこの形のアザがあるというので、九州の武士たちから大層恐れられていたという伝説を持つ武将でした。 もとは平重盛の家人で、緒方庄の在地領主もつとめましたが、平氏の専横を憎み、源氏方に寝返り、大宰府に落ちてきた平氏を九州から追い出したり、宇佐神宮大宮司家が平氏方についていたためこれと対立し、宇佐神宮を焼き討ちするなどしました。 頼朝と対立することになった義経は、都を戦火に巻き込むことはできないと自ら都を去ることを決意し、緒方惟栄を頼ってひとまず九州に落ちのびることになりました。しかし、文治元年(1185年)軍勢5百余騎を引き連れて、摂津国大物(だいもつ)の浦(淀川の河口、兵庫県尼崎市)を船出しますが、にわかに起きた西風の突風にあおられて散り散りになり、九州行きは失敗に終り、義経が岡城に入ることはありませんでした(NHK大河ドラマでは、11月6日放送の第44回 「静よさらば」)。 文治2年(1186年)、緒方惟栄は、義経に荷担した罪で遠流に処せられ、上野国沼田荘に流されますが、4年後の建久元年(1190年)にゆるされて豊後国佐伯荘にかえり、子孫は佐伯氏をなします。原尻の滝では毎年晩秋の夜、緒方一族の霊を鎮魂する『緒方三社川越しまつり』が行われています。 ■『旅行記 ・原尻の滝− 大分県緒方町』を見る → http://washimo-web.jp/Trip/Harajiri/harajiri.htm 名曲『荒城の月』は、文人・土井晩翠(つちいばんすい、1871〜1952年)の詩に、滝廉太郎が曲をつけて出来上がったものです。 東京音楽学校が文部省の諮問に基づき、中等唱歌集の編集を企てることになりました。まず、当時の文士にそれぞれ詞が出題されました。晩翠にあてられた題が他の二篇とともに『荒城の月』でした。 晩翠は、仙台二高時代に深い印象を受けた会津若松の鶴ケ城と故郷・仙台の青葉城をイメージして作詞しました。この詩を音楽学校が採用して、当時音楽学校の授業補助の職にあった廉太郎に作曲を依頼し、廉太郎は21才のころ竹田に帰省の際、岡城跡でこの曲を完成させたといわれています。 『荒城の月』を作曲した後、廉太郎は、22才の10月ドイツ・ライプティヒのメンデルスゾーン音楽院に入学を果たしますが、12月には聖ヤコブ病院に入院を余儀なくされ、翌年7月に文部省の命により志半ばにして空しく帰国します。 同年8月、帰国の途上、ロンドン市テームズ河畔にて土井晩翠と滝廉太郎は最初で最後の、劇的対面を果たしたといわれます。滝廉太郎は、帰国の翌年、23才の短い生涯を閉じました。 ドイツでは、1997年にメンデルスゾーン没後 150年を記念して新種のバラ苗が育種され、「メンデスゾーン」と命名されました。23才で無念の一生を遂げた天才作曲家の慰霊のため、そのバラが日本にやってきました。 廉太郎が憧れたライプツィヒのメンデルスゾーンハウスの庭に咲いている『メンデルスゾーン』と同根のバラが、竹田市の滝廉太郎記念館の庭で淡いピンクの花を咲かせます。 ■『旅行記 ・岡城跡と街並み − 大分県竹田市』を見る → http://washimo-web.jp/Trip/Takeda/takeda.htm 岡城跡は、紅葉の名所でもあり、毎年11月には、2万本の竹灯篭が揺らめく『竹楽(ちくらく)』が催されます。もし、源義経が岡城入城を果たしていたら、岡城跡も竹田市も、趣の違った名所・史跡になっていたかも知れません。岡城跡にまつわる2つの話しでした。 【参考にしたサイト】 [1]瀧廉太郎、荒城の月:フリー百科事典『ウィキペディア』 [2]『荒城の月MIDI』 → http://www.ne.jp/asahi/minako/watanabe/Mond.htm [3]『平家物語と緒方三郎惟栄』 → http://www.coara.or.jp/~shuya/saburou/heikemonogatari/heike00.htm |
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2005.11.16 | ||||
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