レポート  ・食の安全を考える   
HACCP 衛生管理と生産管理 ブリの養殖
− HACCP − 食の安全を考える(1) −
ペコちゃんは、夢の国から来たという1950年(昭和25年)生まれの永遠の6歳の女の子。そのボーイフレンド、ポコちゃんは永遠の7歳です。ある日、お風呂に入っていたポコちゃんが転倒する音がしました。ペコちゃんが『だいじょうぶ〜?』と声をかけると、『不二や〜』(無事や〜)とポコちゃんの返事。子供の頃の駄洒落です。
 
その老舗・名門の不二家が、昨年(2006年)10月〜11月に、消費期限切れの原材料を使用した製品を製造・販売したり、基準に満たない製品を出荷していたことが発覚し、全国の不二家チェーン全店で、洋菓子販売を休止するという事態になったのは驚きでした。
 
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O-157 食中毒、乳製品食中毒、 BSE(狂牛病)などが発生し、食の安全に関心が集まっているなかで、今あらゆる食品業界で注目され、導入されているのがHACCP(ハサップ、あるいはハセップ)という食品衛生管理手法です。
 
今までの食品の衛生管理は、出来上がった最終製品の検査に重きが置かれていました。すなわち、製品全部について検査することはできないので、例えば、 1,000個につき数10個を無作為に抜き取って、微生物の培養検査などの検査を行い、問題がなければ全部を合格とする、いわゆる『抜き取り検査』によって、製造された食品の安全性の確認が行われてきました。
 
しかし、抜き取った数10個以外の製品に、もし危険な製品があったらどうでしょう。抜き取り検査だけでは、危険な製品が市場に出て食中毒を引き起こす可能性を排除することができません。
 
宇宙船に積み込む食材に一個でも危険な食材があると、取り返しのつかないことになると考えたNASA(アメリカ航空宇宙局)は、宇宙食の安全性を限りなく 100%に近づけるための食品衛生管理手法を開発しました。それが、HACCPです。
 
HACCPは、英語のHazard Analysis Critical Control  Point のそれぞれの頭文字をとった略称で、『危害分析重要管理点』と訳されています。HACCPでは先ず、原料の入荷から製造・出荷までの全ての工程において、危害(Hazard)となる要因をあらかじめ分析して予測し、その危害を防止するための重要管理点(CriticalControl Point)を特定しておきます。
 
そして、その重要管理点を継続的に監視することによって、不良製品が製造されたり出荷させるのを未然に防ぐとともに、異常が認められた場合には、すぐに対策を取って速やかに問題解決を図ります。
 
例えば、魚の頭を落とし、はらわたを抜き取り、それから三枚下ろしにして出荷する水産加工工場の場合について考えてみましょう。
 
海水や魚の血やはらわたには、大腸菌や腸炎ビブリオ菌などの細菌がたくさん含まれています。製品がそれらの細菌に汚染されて出荷されると食中毒の原因になるので、危害(Hazard)となる要因として、海水と、血と、はらわたの3つがあげられます。
 
そして、(1)魚の表面に付着した海水が真水でしっかり洗い流されているかどうか、(2)頭を落としたりはらわたを抜き取るときと、魚を三枚に下ろすときでは、別のまな板と包丁が使われているかどうか、(3)付着した細菌(どんなに注意しても無菌状態を維持するのは難しい)が増殖しないよう、外部から遮断された空調の利いた部屋で加工がなされているかどうか、などが重要管理点になります。
 
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食中毒の事件・事故を起きれば、一瞬でブランドイメージが地に落ち、企業崩壊の危機にさらされるのが、情報化時代の新しい現象です。HACCPなどの新しい手法を導入して食品衛生管理体制を改善し強化しようとする動きは、消費者に安全な商品を届けるということと同時に、企業の危機管理(リスク・マネジメント)に狙いがあることは言うまでもありません。グループ解体に追い込まれた雪印乳業の二の舞いになるようなことがあってはならないのです。
 
各企業が必死になって衛生管理体制の改善や強化に取り組んでいるご時世のなかにあって、不二家の不祥事は、会社幹部も承知のうえ組織ぐるみで行われていたということですから、唖然とするばかりです。
 
不二家の主力事業である洋菓子部門は、1日休止するごとに平日で6,000〜7,000万円、休日で1億円前後の減収となるそうです。そして、全国に 707あるフランチャイズ洋菓子店などに、資産を売却してでも休業補償する意向のようですが、大手スーパーやコンビニエンスストアでは、不二家商品の販売中止の動きが広まっています。
 
マスコットのペコちゃん人形は、今日でも店頭から盗まれるぐらいの人気者だったそうです。信頼を回復し、ペコちゃんの笑顔とともに、楽しい夢のようなお菓子を届ける不二家に戻って欲しいと思うのですが・・・。
 

2007.01.17 
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