コラム  ・牡丹と芍薬   
− 牡丹と芍薬 −
早いもので、新年度も一か月が過ぎで、明後日から5月です。七十二候を調べてみると、今年(2015年)の5月1日は、穀雨の末候『牡丹華』、いわゆる牡丹(ぼたん)の花が咲く頃です。
 
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』とことわざで知られているように、牡丹も芍薬(しゃくやく)も、美人の形容に使われてきましたが、中国では、芍薬の『花相』(花の宰相=王の政務の補佐)に対して、牡丹は『花王』と呼ばれているそうですから、牡丹の方が、豪華で風格があるということでしょう。
 
ご近所の庭に、牡丹の咲く一角があって、毎年数株が見事な大輪の花を咲かせるのに、今年は、芍薬が牡丹にとって代って花を咲かせているという話しがあります。
 
牡丹の流通苗のほとんどは、芍薬の台木に牡丹を接ぎ木したものだそうです。これは、牡丹は木本(もくほん)植物のため、種子を播いて生産すると開花までとても時間がかかってしまい、生産性が悪いのに対して、草本性である芍薬は、種子を播いて育ててもすぐに大きく育ち、生産性が良いからです。
 
すなわち、牡丹は台木が芍薬ですから、芍薬の新芽が株のあたりから出てくることがあるわけです。これを放置しておくと、芍薬の方が強いので、牡丹が芍薬にとって代わられる、すなわち、芍薬に乗っ取られるのです。
 
そこで、芍薬の新芽を引き抜いてやらねばなりません。この作業を『芽扱(こ)き』というそうですが、『春の芽扱き』に失敗すると、牡丹が芍薬にとって代わられるということですから、これもまた面白い牡丹と芍薬の関係であります。
 
【参考ページ】
 ・イラスト歳時記『芍薬(しゃくやく)』
 ・イラスト歳時記『冬牡丹』(冬牡丹しかイラストがありません)
 

2015.04.29
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