♪夜祭の宴
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旅行記 ・湯之尾神舞 − 鹿児島県伊佐市菱刈 2011.11.23
湯之尾神舞
(鹿児島県無形民俗文化財)
湯之尾神社境内に設けた舞庭で神舞は舞われます。
500年以上の歴史を持つ鹿児島県無形民俗文化財『湯之尾神舞』が11月23日、伊佐市菱刈川北の湯之尾神社でありました。鹿児島県では神楽(かぐら)のことを『神舞』(カンメ)といいます。神楽は、天岩戸(あまのいわと)にお隠れになった天照大御神(あまてらすおおみかみ)をお導き出ししようと舞ったものに起源するといわれます。神楽は、宮廷の御神楽(みかくら)と民間の里神楽(さとかぐら)に大別され、湯之尾神舞は里神楽に属します。
楽人の人たち。午前2時までの長丁場になります。
今年(2011年)は3年に一度の大祭の年にあたり、6歳から75歳の舞人、楽人総勢53人が午後4時から夜半2時まで延々9時間程かけて、今日まで伝承されている26番の演目すべてを披露しました。境内に大法幣柱(デホバシタ)を立て、上部に神座(かむくら)を設け、その基に祭壇と舞庭を作って神舞が上演されます。
午後4時過ぎ、『一番舞』から神舞が始まりました
神々を勧請する、すなわち大法幣柱の上部に設けた神座に神々をお迎えする神事である『降神の儀』が行われたあと、一番舞から上演が開始されました。舞賦の筆頭、舞庭を清める舞にふさわしい優雅な舞を、中学一年生と二年生が演じました。
『地割』
一番舞の後に踊られる『地割』は、二人の男性が弓矢を持ち、東西南北中央の舞庭の不浄を清める舞です。
『花舞』
花舞は、御幣を持った四人の子供たちが、東西南北中央を祓い清めた後に荒神が出て来て、その御幣を受け取って神前へ納め奉る舞です。四人の子供たちは地元小学校の一年生がつとめ、荒神を演じているのは教頭先生です。
『鉾舞』
鉾舞は、彦火火出見命(ひこほほでみのみこと、山幸彦)と豊玉毘売命(とよたまびめ)の長男・鵜茅草葺不合命(うがやふきあえず)の御誕生をめぐる様を、鉾を持って舞います。海幸彦・山幸彦にまつわる舞です。
『長刀舞』
長刀舞は、長刀を持って舞う舞で、湯之尾神舞の基本的な舞がほとんど含まれている舞だそうです。
『住吉大明神』&『住吉神楽』
住吉大明神とは、日向の橘の小戸の阿波岐原(現在の宮崎県宮崎市阿波岐原町)の九柱の神であり、住吉の三神は禊(みそぎ)をされた時に誕生した三柱の綿津見の神(わたつみのかみ、海の神)だそうです。この合体の舞は、大明神を大人の男性が、神楽を小学校5年生の男子二人がつとめています。
『御番舞』
天地万物の心皆是神心也。御番舞は、弓と矢を持って舞います。舞人は地元小学校の二人の先生です。
『四方荒神』&『四方神楽』
四方荒神と四方神楽の合体の舞は、東西南北中央の座にある神々と荒神が十干(じっかん)の方位を、問答を交えながら清浄祓いする舞です。四方神楽をつとめるのは、地元小学4年生〜5年生の男子4名です。
『四方荒神』&『四方神楽』
十干とは、甲乙(きのえきのと)、丙丁(ひのえにのと)、戊己(つちのえつちのと)、かのえかのと(庚辛)、壬癸(みずのえみずのと) 。
『半蔵主舞』
半蔵主舞は、四人の大人が弓を持ち、東西南北中央の地を清浄に納め奉る舞。舞人は地元高校生です。
『田の神舞』
五穀豊穣を祈念して、豊年に感謝する『田の神舞』(タノカンメ)です。独特な動きや語りに里神楽特有の雰囲気が感じられる舞です。
 『田の神舞』
里神楽の代表的な演目の一つであるこの舞は、神社のお田植祭や集落の『田の神講』(タノカンコ)のなかで、田の神舞(タノカンメ)として単独に舞われるようになりました。
 『御笠』
御笠は、天下泰平・国土安穏・庶民快楽のための清浄の大法会の舞です。大法幣柱(デホバシタ)より吊るされた日・月を操る優雅な舞です。地元中学2年生の男子二人が舞います。
 『金山』&『氏舞』(氏に求愛する金山)
金山舞と氏舞の合体の舞は、男神(金山)が女神(氏)に求愛し、ふられて荒れ狂う舞です。
『金山』&『氏舞』(氏にふられた金山)
『静』と『動』の織りなす演舞で、湯之尾神舞で唯一女性神が登場する舞です。
『金山』&『氏舞』(荒れ狂う金山)
金山と言えば、湯之尾神社のあるこの町には、金の産出量国内一を誇る住友金属鉱山があります。
 『陰陽』&『神武舞』
陰陽と神武舞の合体の舞は、『天地にありては神と言う。万物に有りては霊と言う。人倫にては心と言う』、陰陽と神武が問答を交えながら舞います。
『尊舞(踏剣)』
舞庭を清め祓う舞で、太刀を持った二名の大人(演じるのは地元小学校の先生)と中入りの子供(小学4年生の男子)が舞います。ゆっくりした動作から回転などのある激しい動きへと舞は変化していきます。
 『龍蔵舞』
第19番目の舞である龍蔵舞は、悠久三千年前の天岩戸と神舞を彷彿とさせる舞です。湯之尾神舞のなかでも特に優雅絢爛(けんらん)な舞で、榊の枝に五色の幣と八咫鏡(やたのかがみ、三種の神器の一つ)十宝の玉をつけたものを持っています。
かくして、伊佐地方の冬の夜は更けていきます。
例年より紅葉の色づきが遅かった鹿児島地方ですが、夜中に近づき、さすがに夜気は冷えてきます。境内でふるまわれたうどんや甘酒がありがたかったです。
大法幣柱の上部に設けられた神座(かむくら)
神座におわします神々が見守るなかで、神舞は、しめやかに厳かに華やかに、そしてユーモラスに進み、伊佐地方の冬の夜は更けていきます。
舞人の熱演に夜更けまで見入る観客
編集後記
第19番目の演目『龍蔵舞』が終わる頃には、時刻は22時半を過ぎていました。この後、延々40分に亘る長演技の『正道獨剣舞』、臣下大明神が岩戸の前で餅をつく『臣下舞』、『火の神』と『大王』の合体舞と演目は続き、いよいよクライマックスになるのですが、翌日大事な予定があり、そうそう夜更かしも出来なかったので、切り上げて帰路につきました。天岩戸にお隠れになった天照大御神は、かくして表座が騒がしいので、岩戸を細間に開けて表をご覧になります。そのとき、すかさず、手力男命(たぢからおのみこと)が大力で岩戸をこじ開け、天照大御神がこの世にお出ましになります。湯之尾神舞は、第24番から26番の演目である『手力』『戸隠』『大明神神楽』でこの岩戸開きの様子を舞って演舞は終わりとなります。最後に神々をお送りする神事『昇神の儀』が行われ、午前2時、約9時間に及ぶ神舞は終わります。このクライマックスの演目の鑑賞は来年以降の楽しみということになりました。貴重で楽しい神舞をみせて頂いた菱刈川北の皆さん、ありがとうございました。
 レポート ・神舞(カンメ)
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