旅行記　・ウフィツィ美術館～フィレンツェ

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旅行記　・ウフィツィ美術館～フィレンツェ　－イタリア（８）　2014.07

ウフィツィ美術館
(Galleria degli Uffizi)

ウフィツィ美術館　イタリアのフィレンツェにあるイタリア・ルネサンス期（14～16世紀）の絵画で有名な美術館。近代式の美術館としてヨーロッパ最古のものの１つであり、ルネサンス期のフィレンツェの実質的な支配者として君臨し、後にトスカーナ大公国の君主となったメディチ（Medici）家歴代の美術コレクションを収蔵する美術館。イタリア・ルネサンス絵画の宝庫で、展示物は2,500点にのぼる（なお、英語のmedicine（医学）は薬の卸売で財をなしたメディチ家の「Medici」が、office（オフィス）はウフィツィの「uffizi」が語源になっている）[1]。 2014年７月のイタリア旅行の際に鑑賞した絵画の中から代表的な７点の作品を紹介します。館内は写真撮影が許可されていて、写真を撮りましたが、『ミケランジェロの聖家族』以外は、より鮮明な画像をWikipedia（ウィキペディア）より借用して掲載しています。

『プリマヴェーラ』（春）
作者：サンドロ・ボッティチェッリ／制作年：1482年頃／素材：テンペラ／寸法：203cm × 314cm
画像は「プリマヴェーラ - Wikipedia」より　拡大画像

『プリマヴェーラ』（春）　メディチ家の保護を受け、宗教画、神話画などの傑作を残した、初期ルネサンス・フィレンツェ派の最大の画家『サンドロ･ボッティチェッリ』の《ヴィーナスの誕生》（写真下）と並ぶ代表作。遠近法を用いて幾何学的な理想的空間を作り上げる当時のルネサンスの風潮とは異なり、ギリシア神話の神々が平面的に配置されている。画面に向かって右より、西風ゼフェロス、妖精クロリス、彼女の化身である春の女神フローラ、愛の女神ヴィーナス、キューピッド、三美神、そして神の使者メルクリウスが描かれている。青白い肌をした西風の神ゼフェロスが妖精クロリスに恋をして強引に我が物にしようとする。しかし、そのことを悔いたゼフェロスは、彼女を花と春と豊穣を司る女神フローラに変える。中央で、右手を優雅にかざし、メランコリックな表情を浮かべる愛の女神・ヴィーナス。その頭上で彼女の息子のキューピッドが『貞節』に向かって『愛の矢』を放とうとしている。目隠しのキューピッドは、盲目的な愛を意味する図像。薄い半透明のヴェールを軽やかにまとった三美神が輪を描き踊っている。三美神は美・愛・貞淑の擬人像とされているが、諸説がある。この庭園の守護者として描かれているのが、左端のマーキュリー。真紅の布を身にまとい甲と剣で武装しており、神々の伝令役の象徴である羽のついた靴と杖を身につけている[2][3]。

『ヴィーナスの誕生』
作者：サンドロ・ボッティチェッリ／制作年：1483年頃／素材：キャンバスにテンペラ／寸法：172.5 cm × 278.5 cm
画像は「ヴィーナスの誕生 - Wikipedia」より　拡大画像

『ヴィーナスの誕生』　サンドロ･ボッティチェッリ』の《プリマヴェーラ（春）》と並ぶ代表作。生まれたばかりの美しく純粋無垢なヴィーナスが貝殻に乗って陸地に向かっている穏やかで優美な情景が描かれている。画面に向かって左端で、西風の神ゼピュロスが妻である花の女神フローラをしっかり抱きしめて飛来し、息を吹きかけ、フローラがヴィーナスの聖花である薔薇を辺り一面にまき散らすと、帆立貝に乗ったヴィーナスが陸地へと運ばれる。画面の右端で、時間の女神で季節の移り変わりを司る女神ホーラが、美しい深紅のマントを広げて、ヴィーナスを包もうとしている。ホーラが着るドレスと、ヴィーナスに差し出しているローブには、ヒナギク、桜草、ヤグルマギクなど、『誕生』の主題にふさわしい春の花が刺繍されている。この絵に描かれているヴィーナスは、首が現実にはあり得ないほど長く、肩が解剖学的にあり得ない角度で極端に落ちており、左腕も不自然である。しかし、全体としては全く不自然さを感じさせない美しい絵となっている。レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロの作品に見られる厳格な古典的リアリズムとは一線を画し、ボッティチェリが大切にしたかったのは、写実的な、科学的な正確さではなく、どこまでも優美で繊細な愛の女神であった[4][5][6]。

『ウルビーノのヴィーナス』
作者：ティツィアーノ／制作年：1538年頃／素材：油彩／寸法：119 cm × 165 cm
画像は「ウルビーノのヴィーナス - Wikipedia」より　拡大画像

『ウルビーノのヴィーナス』　豪奢なルネッサンス風宮殿を背景に、長椅子（あるいはベッド）に寄りかかる若い女性の絵画で、ローマ神話のヴィーナスを描いた作品とされる。ヴィーナスのポーズはジョルジョーネの『眠れるヴィーナス（Sleeping Venus、1510年頃、アルテ・マイスター絵画館）』を模倣したものと言われるが、ティツィアーノはさらに官能性を追求した作品に仕上げている。古典的、あるいは寓意的表現は見られず、異論の余地なく官能美にあふれた絵画である。このような率直な表現は、描かれている裸身に無関心である鑑賞者にさえ、ヴィーナスは挑発的な視線を投げかけていると言われることが多い。ヴィーナスの右手は愛を表す花束を持ち、左手は画面中央に陰部を隠しながらも挑発するかのように置かれ、寓意画では貞節を意味するイヌはすぐそばで眠って描かれており、その役割を放棄している[7]。

『キリストの洗礼』
作者：ヴェロッキオ、レオナルド・ダ・ヴィンチ他／制作年：1472年 - 1475年頃／素材：板に油彩／寸法：177cm × 151cm
画像は「キリストの洗礼 (ヴェロッキオの絵画) - Wikipedia」より

『キリストの洗礼』　レオナルド・ダ・ヴィンチ（1452～1519年）が14歳のときに、彼の師アンドレア・デル・ヴェロッキオとその他弟子との合作で制作が開始された絵画。ダ・ヴィンチの画家としてのキャリアが始まった作品として知られている。ヨハネは洗礼者として、荒野で禁欲的な隠遁生活を送りながら、彼のもとにやって来る人々すべてにヨルダン川の水で洗礼を施していた。彼は、天使の導きによって、その場でイエスを待っていたのである。キリストが洗礼を受けるために現れたとき、ヨハネは『私こそ、あなたから洗礼を受けるべきなのですが』とイエスの足元にひれ伏したという。聖書の中でも、とりわけて有名なこの場面は、多くの画家によって描かれてきたが、その中でも特に有名なのがこの作品である。1466年に、14歳だったレオナルドは、フィレンツェで工房を主宰していた芸術家ヴェロッキオに弟子入りした。彼の才能は、ドローイング、絵画、彫刻といった芸術分野だけでなく、設計分野、化学、冶金学、金属加工、石膏鋳型鋳造、皮細工、機械工学、木工など、様々な分野に及んでいたという。画面に向かって左端の天使を描いたレオナルドの技量があまりに優れていたために、師ヴェロッキオは筆を折り、その後二度と絵画を描くことはなかったと伝えられているが、正確には間違いであり、単に工房が受注した絵画の制作のほとんどを弟子たちに任せ、自身は専門の彫刻に専念していたということである[8][9]。.

『受胎告知』
作者：レオナルド・ダ・ヴィンチ／制作年：1480年頃／素材：テンペラ　板／寸法：98 cm × 217 cm
画像は「ウフィツィ美術館 - Wikipedia」より　拡大画像

『受胎告知』（じゅたいこくち）とは、新約聖書に書かれているエピソードの１つで、処女マリアに天使のガブリエルが降りてきて、聖霊によってマリアがイエスを身ごもることを告げ、またマリアがそれを受け入れることを告げる出来事のことである。受胎告知の場面は、絵画では、マリアが読書の最中であることが多く、また糸をつむいでいる場面もある。純潔の象徴とされる白百合がかたわらに置かれるか、あるいは天使が白百合を携えている。この絵は、レオナルド・ダ・ヴィンチが20歳を過ぎたばかりの最初期の頃の『キリストの洗礼』に継ぐデビュー作と考えられている。数か所に他の画家による筆が入っているといわれるが、ほぼ異論なくダヴィンチによる真筆とされている。絵に向かって左側が受胎告知に降臨した天使ガブリエル、右側が聖母マリア。天使ガブリエルは、右手の人差し指と中指を立ててピースサイン（Ｖサイン）のような形をつくり、聖母マリアへの祝福の意を表し、左手で白百合を捧げている[9][10][11]。

『聖家族』
作者：ミケランジェロ／制作年：1507年頃／素材：板（パネル）に油彩とテンペラ／寸法：91cm × 91cm
画像は2014年7月ウフィツィ美術館で撮影　拡大画像

『聖家族』　ルネサンス盛期のイタリア人芸術家ミケランジェロ・ブオナローティが1507年ごろに描いた絵画。油彩とテンペラで描かれたパネル絵で、現存しているわずか３枚のミケランジェロのパネル絵のなかの１枚であり、かつ唯一完成している作品。当時のままの額装がなされている。この作品は、トスカーナの有力な家庭の娘マッダレーナとの結婚を記念して、フィレンツェの商人アニョロ・ドーニの依頼で描かれた作品とされている。円形の絵画はルネサンス期によく見られたスタイルである。中央に大きく描かれた、幼児キリストを高くかかげるマリアがもっとも目立つ画面構成になっている。マリアは地面にじかに座り、彼女と大地の間には何も敷かれていない。これはマリアと大地との結びつきをよく伝えている。マリアの下に描かれている草は緑に塗られ、草が生えていないマリアの周りの地面とは好対照となっている。ヨセフは家長としてマリアに比べて高い位置で描かれている。マリアはヨセフの足と足の間に座っており、これはヨセフがマリアを守っているかのように見える。マリアのポーズについては、ヨセフからキリストを受け取ろうとしているのか、あるいは逆にヨセフに渡そうとしているのか議論がわかれている[13]。

『バッカス』
作者：ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ／制作年：1595年頃／素材：キャンパス油彩／寸法：95cm × 85cm
画像は「ウフィツィ美術館 - Wikipedia」より

『バッカス』　レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロを三大巨匠とする14世紀～16世紀のルネサンス期から、時代はバロック期（16世紀末～17世紀初頭）へ。しかし、絵画の世界は、ルネサンスの多大な影響力から抜け出せずにいた。そこに登場し、革命的にバロック時代の新しいスタイルを確立したのが、カラヴァッジョ（本名、ミケランジェロ・メリージ、1571～1610年）だった。バロック絵画を代表する画家のほとんどに影響を与え、イタリアの誇る天才画家あるいは西洋絵画の巨匠などと称されるカラヴァッジョであったが、その暮らしは、本来の激しい気性から殺人を犯し、逃亡生活を余儀なくされるというものだった。『バッカス』は、カラヴァッジョが24歳のときの作品。バッカスは古代ギリシアの神で、豊穣とブドウ酒の神とされる。ワインに酔ってほんのりと頬を染めたふっくらとした酒神バッカスが左手にグラスを持ちつつ、左手で帯を解こうとしている。観る人をエロチックな饗宴に誘いかける。バッカスといい、手前の果物といい、総てにおいて細部まで神経を行き届かせて描き上げられている。これはカラヴァッジョの革新的な写実主義のマニフェスト（声明文、宣言書）に他ならない[13][14]。

【参考サイトおよび参考図書】
[1]ウフィツィ美術館 - Wikipedia
[2]プリマヴェーラ - Wikipedia
[3]りらりの展示室の【絵画鑑賞】ボッティチェルリの<<春　（ラ・プリマヴェーラ）
[4]ヴィーナスの誕生 - Wikipedia
[5]ボッティチェリ　「ヴィーナスの誕生」　解説
[6]りらりの展示室の【絵画鑑賞】ボッティチェルリの＜ヴィーナスの誕生＞
[7]ウルビーノのヴィーナス - Wikipedia
[8]キリストの洗礼 (ヴェロッキオの絵画) - Wikipedia
[9]レオナルド・ダ・ヴィンチ - Wikipedia
[10]受胎告知 - Wikipedia
[11]ダヴィンチ　受胎告知　絵画の謎
[12]聖家族 (ミケランジェロ) - Wikipedia
[13]ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ - Wikipedia
[14]『カラヴァッジョ巡礼〈とんぼの本〉』宮下規久朗・著（新潮社、2010年）

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