旅行記　・蘆花恒春園－東京都世田谷区

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旅行記　・蘆花恒春園－東京都世田谷区　2015.01

蘆花恒春苑

蘆花恒春園入口

東京都立蘆花恒春園　小説『不如帰（ほととぎす）』の作者として有名な徳冨蘆花（1868～1927）が、明治40年から昭和２年（1907～27）までの約20年間暮らした家です。明治40年、不惑の年を迎えた蘆花は、ロシアの文豪トルストイの示唆を受け、農業生活を送ることを決意し、当時、東京郊外の農村であった粕谷に住居を定めました。

蘆花恒春園の入口を入ったところ

以降この地を拠点とし、病気療養のため群馬県伊香保温泉へ転地するまで、田園生活を送りながら執筆活動を続けました。当時の暮らしぶりについては、随筆『みみずのたはこと』に詳しく描かれています。昭和２年（1927）９月18日、蘆花は療養先で死去しましたが、その亡骸（なきがら）は粕谷に帰り、地元の人々の手で敷地の一角に埋葬されました。

蘆花恒春園内の竹林

昭和12年（1937年）に愛子夫人より遺邸のすべてが当時の東京市に公園として寄付されました。市は文豪の生活を偲ぶ記念の地として、『蘆花恒春園』と名付け一般に公開してきました。昭和61年（1986年）、邸地を当時の姿に復元・保存し永久に子孫に伝えていくために、『東京都指定史跡』に指定され、現在に至っています。蘆花は今でも夫人とともにこの地に眠っています。

蘆花恒春園内に密生する笹

徳冨蘆花（とくとみろか）　日本の小説家。『徳冨』の表記にこだわり、各種の文学事典、文学館、記念公園などは『冨』の字を採用している。本名は徳富健次郎（とくとみけんじろう）。号の由来は、自ら述べた『”蘆の花は見所とてもなく”と清少納言は書きぬ。然もその見所なきを余は却って愛するなり』からきている。(以下、徳冨蘆花 - Wikipedia　から転載)

笹の林と徳冨蘆花旧宅

横井小楠門下の俊英であった父・徳富一敬の次男として肥後国に生まれる。熊本バンドの1人として同志社英学校に学びキリスト教の影響を受け、トルストイに傾倒する。後年、夫人とともに外遊の際、トルストイの住む村を訪れ、トルストイと会見した。そのときの記録『順礼紀行』は、オスマン帝国治下のエルサレム訪問記も含めて、貴重な記録となっている。

徳冨蘆花旧宅（梅花書屋と母屋（右））

兄で思想家・ジャーナリストの徳富蘇峰の下での下積みの後、自然詩人として出発し、小説『不如帰』はベストセラーになった。また、随筆『自然と人生』はその文章が賞賛され、一気に人気作家となった。しかし、国家主義的傾向を強める兄とは次第に不仲となり、1903年（明治36年）に蘇峰への「告別の辞」を発表し、絶縁状態となる。

徳冨蘆花旧宅（母屋）

1906年（明治39年）12月10日、旧制・第一高等学校の弁論部大会にて最初の講演を行なう。『勝の哀（かちのかなしみ）』の演題で、ナポレオンや児玉将軍を例に引き、勝者の胸に去来する悲哀を説き、一時の栄を求めず永遠の生命を求める事こそ一日の猶予もできない厳粛な問題であると説いた。

徳冨蘆花旧宅（母屋）

この演説に感動した一高生の何人かは荷物をまとめて一高を去ったという。1907年（明治40年）、北多摩郡千歳村字粕谷（現・東京都世田谷区粕谷）に転居、死去するまでの20年間をこの地で過ごした。1910年（明治43年）の大逆事件の際、幸徳秋水らの死刑を阻止するため、蘇峰を通じて首相の桂太郎へ嘆願しようとするが間に合わず処刑されてしまう。

徳冨蘆花旧宅（梅花書屋と母屋（右））

直後に再び一高の弁論部大会での講演を依頼されると1911年（明治44年）2月1日、『謀叛論』の題で論じ、学生に深い感銘を与えた。この講演を依頼した学生が、ともに戦後に社会党委員長となる河上丈太郎や文部大臣となる森戸辰男だった。1927年（昭和2年）、病に倒れる。伊香保温泉で蘇峰と再会して和解、「後のことは頼む」と遺言して死去したという。58歳だった。

徳冨蘆花旧宅（梅花書屋）

蘆花の死後、旧邸宅は夫人より東京市に寄贈され、現在は蘆花恒春園（面積約7万平方メートル）として開放されている。夫妻の墓のほか、徳冨蘆花旧宅も保存されている。蘆花の名前は､公園から徒歩5分の位置にある世田谷区立芦花小学校・世田谷区立芦花中学校、徒歩15分の位置にある京王電鉄京王線芦花公園駅にも残っている。熊本県水俣市には、『徳富蘇峰・蘆花生家』、熊本市には『徳冨記念園』、群馬県渋川市に『徳冨蘆花記念文学館』がある。

みみずのたわこと碑

土なる哉。農なるかな。
農は神の直参である。
自然の懐ふところに、自然の支配の下に、
自然を賛(たすけ)て働く農も
神の直轄の下に住む
天領の民である
　　　　蘆花著　みみずのたはことより
　　　　　　　　　　　　　徳富愛子

みみずのたわこと碑と梅花書屋

『蘆花恒春園』　DATA
●所在地／東京都世田谷区粕谷1－20－1　蘆花恒春園
●交通／京王線『芦花公園』、『八幡山』駅下車徒歩15分／京王線『千歳烏山』駅からバス『芦花恒春園』下車徒歩７分

蘆花夫妻の墓

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