♪アルバム・リーヴス(メリカント)
Classic MIDI album
パリのクルマ事情 − フランス
パリ

パリのクルマ事情


パリ市内を走っている車は、汚れた車、ぶつけて変形したままの車、バックミラーが取れた車、何十年も経ったようなボロボロの車などが結構多いです。世界に芸術やブランド、流行の情報を発信しているファッションの街パリにしては意外なことでした。


パリの縦列駐車は有名だと聞いてはいましたが、それは予想を遥かに超えるものでした。道路の両端に信じられないほど間隔をつめてずらりと路上駐車されています。広い道路だろうが、狭い路地だろうがおかまいなしです(写真下)。


どうやって出入りするのだろうと不思議に思いますが、パリの人は老若男女を問わず、みな縦列駐車の鉄人です。自分の車のバンパーを前の車に軽くあて、車が壊れない程度の力でじわじわと押しのけ、ハンドルを切り返してはバックして今度は後ろの車を押しのける。これを何回か繰り返して必要なスペースを確保して出入りします(路上で縦列駐車するときは、サイドブレーキやパーキングブレーキは掛けません)。バンパーとは、本来衝撃をやわらげるためのパーツですから、正しい使い方をしているわけですが、小さな傷でも気にする日本人には考えられないことです。

パリでは、バンパーがちゃちな車は生きていけません。面白い車に出会いました。前後にガードバーとタッチロールを取り付けたROVER MINI(ローバーミニ)です(写真下)。この車は、車高が低くて普通の車とバンパーの高さが合わないので、わざわざガードを取り付けているのです。運転していたのは高齢の女性の方でした。

フランスは、面積は日本の約1.5倍ありますが、人口は半分の約6,100万人です。主要な都市は、首都パリ(人口220万人)、マルセイユ(同80万人)、リヨン(同45万人)、ツールーズ(同40万人)、ニース(同35万人)などですから、大きい都市がそんなに多い国ではありません。

パリ市の面積は105平方kmしかありません。ちょうど、山手線の内側ほどの広さです。そこに220万人が住んでいるわけで、交通渋滞と駐車場不足は慢性的な状態にあります。


中世の建物が多く残っていて、しかも建築基準の厳しいパリでは、日本のように店の隣を潰して駐車場にするというわけにはいきません。そこで、駐車場は地下に作られています。つまり、パリには「地下駐車場」と、道路の脇に点線で描かれている「路上駐車場」の2種類の駐車場があります。どちらも有料です。

ところが、目的地のすぐ近くに停められる、料金が15分刻みなので短時間の駐車だとお金を節約できる、19時から翌日9時までは無料だという理由で路上駐車場の方が重宝がられ、路上駐車場は慢性的不足の状態にあります。

そこで、パリの人たちは、ぎりぎり詰めて駐車して路上を効率良く使おうというわけです。そのためにバンパーを本来の目的通りに使って、少々傷を付けたからと言って、どうということは無いわけです。

もちろん、パリ市内を走っている車が汚れていたり、変形したままだったり、ボロボロだったりするのは、縦列駐車のせいだけではなさそうです。実(じつ)を重んじるフランスの人たちにとって、最も重要なのは、車が移動の道具として役立つかどうかということであって、高級な車に乗っていてもバンパーを前後の車に押し当て路上駐車場に出入りするのはあいも変わらずパリの習慣です。

ドイツと同様、フランスでも小型車が多いです。経済的な理由、駐車場の問題、旧市街地の路地の狭さなどに加え、移動・運搬のための道具として小型車で事足りるということでしょう。フランスでは、オートマチック車は身体が不自由な人のための車で、ほとんどがマニアル車のようですし、車の盗難や車上荒らしも多いので、貴重品は車に置かないし、カーステレオなんかもほとんど付いてないようです

そのような事情ですから、フランスでは高級車に乗っていても誰かうらやましがらないし、車に自己のアイデンティティや社会的ステータスを求めようとする人は日本より少ないようです。


パリの横断歩道は、完全に歩行者優先のようです。歩行者は、信号が赤でも車が来ないと平気で横断します。だから、車を運転する方は、信号が青でも、よく確認して横断歩道に入らないと大変なことになります。


横断歩道でもう一つ興味があるのは歩行者用の信号機です。中世の建物が残っている区域では、建物に似合うシックな色の街路灯の柱に信号機が埋め込んであるのです。小さな信号で、青信号が人が歩いている形、赤信号が人が立っている形をしています。このような信号だと街の景観を崩さずにすみます。


パリは見所のいっぱいある町です。とても1〜2ページではカバーできません。そこで、『パリのクルマ事情』という話題に的を絞ってこのページを作成しました。  (旅した日 2004年05月)



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