中世の建物が多く残っていて、しかも建築基準の厳しいパリでは、日本のように店の隣を潰して駐車場にするというわけにはいきません。そこで、駐車場は地下に作られています。つまり、パリには「地下駐車場」と、道路の脇に点線で描かれている「路上駐車場」の2種類の駐車場があります。どちらも有料です。
ところが、目的地のすぐ近くに停められる、料金が15分刻みなので短時間の駐車だとお金を節約できる、19時から翌日9時までは無料だという理由で路上駐車場の方が重宝がられ、路上駐車場は慢性的不足の状態にあります。
そこで、パリの人たちは、ぎりぎり詰めて駐車して路上を効率良く使おうというわけです。そのためにバンパーを本来の目的通りに使って、少々傷を付けたからと言って、どうということは無いわけです。
もちろん、パリ市内を走っている車が汚れていたり、変形したままだったり、ボロボロだったりするのは、縦列駐車のせいだけではなさそうです。実(じつ)を重んじるフランスの人たちにとって、最も重要なのは、車が移動の道具として役立つかどうかということであって、高級な車に乗っていてもバンパーを前後の車に押し当て路上駐車場に出入りするのはあいも変わらずパリの習慣です。
ドイツと同様、フランスでも小型車が多いです。経済的な理由、駐車場の問題、旧市街地の路地の狭さなどに加え、移動・運搬のための道具として小型車で事足りるということでしょう。フランスでは、オートマチック車は身体が不自由な人のための車で、ほとんどがマニアル車のようですし、車の盗難や車上荒らしも多いので、貴重品は車に置かないし、カーステレオなんかもほとんど付いてないようです
そのような事情ですから、フランスでは高級車に乗っていても誰かうらやましがらないし、車に自己のアイデンティティや社会的ステータスを求めようとする人は日本より少ないようです。
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