加世田麓武家屋敷群－鹿児島県南さつま市／旅行記

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旅行記　・加世田麓武家屋敷群－鹿児島県南さつま市　2021.01

加世田麓武家屋敷群
（重要伝統的建造物群保存地区）

旧街道と益山用水路

外城と麓　薩摩藩は鶴丸城（鹿児島市）を本城とし、領地を外城（とじょう）と呼ばれる 113の行政区域に分け、武士団を分散してそれらの領地内に住まわせ統治に当たらせました。その中心となった集落が『麓（ふもと）』で、地頭の居館である地頭仮屋が置かれて外城の行政が行われました。現在でも県内各地に麓の面影を見ることができます。

旧街道と武家屋敷門

加世田麓　加世田麓ものその一つで、令和元年12月に鹿児島県としては、知覧、出水麓、入来麓に次ぐ４つめの国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。加世田麓は、別府城跡と新城跡の二つの山城に挟まれた曲線的な旧街道沿いの細長い平地を中心に広がっており、防衛上有利な地形にある麓です。

街路、用水路、石橋、石垣、生垣がつくる景観

切石の石垣、イヌマキを中心とする生垣、石垣の前に走る幅２ｍの用水路、街路と武家門をつなぐ用水路の上にかけられた石橋などから構成される景観が、加世田麓の最大の特徴です。すなわち、『用水路に架かる石橋を渡って武家門をくぐる』景観は、ここ加世田麓でしか見ることができません。

旧鯵坂家住宅門と石塀（国登録有形文化財）

旧鯵坂正一郎邸加世田小学校の校長だった鯵坂正一郎氏が、1903年（明治36年）頃、旧川崎邸の敷地に建てた和風建築、現在、住宅門、住宅主屋、住宅蔵、住宅石塀が登録有形文化財になっています。平成２４年度(2012年)に市が取得、町並み保存団体『かせだ歴史まちなみ懇話会』が発足しました。

旧鯵坂正一郎邸

旧鯵坂家住宅門　敷地西面南端の市道沿いに構える。一間腕木門、切妻造桟瓦葺で、本柱後方に石製の控柱を立てて腕木を支持する独特な形式。門の左右に落棟の袖塀を設け、その両端から前方にのばす塀をさらに落棟とし、基礎を凝灰岩切石積とするなど、変化のある外観をもつ。（出典：国指定文化財等データベース）

別府城跡入口

別府城跡　別府城はかつては、福寿丸（一の丸）、尼ヶ城（二の丸）、中之城（三の丸）からなる、川や湿地に囲まれた難攻不落の要塞でした。明治36年に加世田小学校がここへ移転した際、三城をならして校地にしたので、昔の姿はなくなりました。現在は市街地となり、石碑が建てられているのみで遺構は残っていません。

仁王像のある武家屋敷

日新寺と仁王像　日新寺（じっしんじ）はかつて現在の竹田神社の位置にあった曹洞宗の寺です。衰微していたのを永禄７年（1564年）に島津忠良が再興。忠良の死去、７世住持が寺号を日新寺と改めました。しかし、明治２年（1869年）の廃仏毀釈により廃寺となり、明治６年（1873年）に竹田神社が造営されました。

仁王像のある武家屋敷

日新寺の大門の前にあった仁王像は、日新寺（じっしんじ）の大火の翌年の寛政11年（1799年）２月に再建されました。高さが　260cmある巨大なたもので、口を開いた『阿』の像は、廃仏毀釈の際に個人の屋敷に移されたので残っていますが、『吽（うん）』の像は所在不明とになっています。

日新寺の仁王像（阿）

加世田の歴史　平安時代末の1100年頃、薩摩平氏の流れを汲む川辺一族の別府五郎忠明が荘園の役人として加世田に入り、治承年間（1177～79年）に別府城を築城し、その後 240余年間にわたって別府氏の治世が続きました。別府氏は室町時代の1420年（応永27年）第８代島津久豊（島津宗家８代当主）に降ります。

上鴻巣地区の武家門と石橋

それから約 120年間、出水の島津氏（薩州島津氏）が城主となりますが、島津一族内の勢力争いが起き、天文８年（1539年）に島津忠良が別府城を攻め落としました。鹿児島では日新公（じっしんこう）と呼んで親しまれている忠良は、文武兼備の名将で島津中興の祖といわれます。

上鴻巣地区の武家門と石橋

48歳から55歳の間につくった『日新公いろは歌』は、忠孝仁義を説き、この実践を奨励するもので、薩摩における師弟教育の教典と、なりました。薩摩藩『郷中（ごちゅう）教育』の基本書となったといわれ、今の時代にも通じる多くの教えを含んでいます。竹田神社の敷地内にある『いにしへの道』の両側に、47首の歌の歌碑が並べられています。

上鴻巣自治公民館（鰺坂家屋敷跡）

江戸時代になると、旧加世田市から大浦町・笠沙町・坊津町・川辺町までの地域が、薩摩藩の一つの行政単位である『外城』となり、その後江戸時代の中頃になると、外城は郷と改められ、坊津・川辺を除く地域が加世田郷となりました。この郷の中心になったのが加世田麓でした。

街路、用水路、石橋、石垣、生垣がつくる景観

益山用水路　旧街道には『益山（ますやま）用水』と呼ばれる用水路が並行しており、町並みを特徴づけています。　明和５年（1768年）、25代島津重豪の時代に、藩の事業として完成。幅2ｍ、高さ1.7ｍの水路を竹田神社から益山まで約５㎞導いて、200haの水田を潤しました。

益山用水路と石橋

益山用水路といえば、毎年７年23日に竹田神社の六月灯（鹿児島の夏祭り）の日に公開される水車カラクリを思い出します。竹田神社前の益山用水路に設置した水車の回転力を利用してほぼ等身大の人形を回転させるのです。人形は毎年題材を変えて行われますが、概して、源義経や加藤清正、那須与一のような武者人形が多いです。

六地蔵塔

六地蔵塔（ろくじぞうとう）　形状は石造三重塔で蓮型の台座の上に載っている仏教遺跡。高さは約4.5m。島津忠良（日新公）が天文８年（1539年）正月の別府城攻略した際に亡くなった敵味方兵士供養のために、天文９年（1540年）につくらせたもの。ただし、この時につくったものは後に加世田川の氾濫で流失したため、慶長２年（1597年）に日新寺の住持・泰円守見が再建したのが、今残っているものです。

下ん仮屋の武家屋敷門

下ん仮屋の武家屋敷　南さつま市本町の市役所前交差点から国道 270号を南へ約400m進と、信号機のある交差点があります。重要伝統的建造物群保存地区のほぼ中心部にあたるこの交差点脇に『下ん仮屋の武家屋敷』と呼ばれる立派な武家屋敷門構えの屋敷があります。目隠しの生け垣が薩摩藩時代の武家屋敷の名残を今に残しています。　

下ん仮屋の武家屋敷

鮫島博家住宅門　登録有形文化財(建造物)、2012年登録。敷地北西の通りから後退して建つ。間口一・八メートルの腕木門、切妻造桟瓦葺で、左右に袖塀を折曲がりに延ばす。門はまぐさの上に格子を組み、垂木には反りをもたせる。風格あるつくりで武家住宅の風情を伝える。（出典：国指定文化財等データベース）

鮫島博家住宅門（国登録有形文化財）

⇒ 島津日新公いろは歌

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