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旅行記 ・兵六踊り(農業文化祭編)− 鹿児島県さつま町 2015.11
庭狂言 兵六踊り
(農業文化祭編)
役者が勢揃い。まず、小僧と狐が登場
鹿児島の吉野ヶ原
(現在の鹿児島市吉野町)の白銀坂(しらがねざか)は、
古狐の巣窟で有名な所。
『ケガなどせぬよう、ようだましてやれよ!』と触れ回ります。
”そこに行って
坊主にならずに帰って来た者は一人もない”と、
かねてから噂されていました。
こちらは、『附(つ)け打ち』(右)と『鉦』(左)
その吉野ヶ原に、
鹿児島の旭通りの『二才衆』(にさいしゅう=鹿児島の方言で、若者たちを
意味する)が、狐狩りに行くという。
つぎに、市助登場
そのうわさを聞きつけた
小僧(狐の化け物)と二匹の狐がまず登場して、『ケガなどせぬように、
ようだましてやれよ!』と触(ふ)れ回ります。
琵琶など復習(さら)える市助
つぎに登場するのが、
二才衆のうちで最年配格の一人、市助。”ほほう、ここが吉野ヶ原という珍しいところか!”
白銀坂の近くまできて、琵琶など復習(さら)えて過ごします。
彦三坊と二才衆
そして、彦三坊と
二才衆が登場。”何か面白いことでもござらぬか”と
市助のところへたずねに行きます。
”坊主にならずに立ち返った者は一人もなし”
”何か面白いことが
無いでもなし。あの白銀坂に立ち入って坊主にならずに帰って来た者は一人もなし。
これなどが面白い話し〜い、話し〜い”
狐狩りに名乗りを上げる兵六
そこで、彦三坊は、
二才衆の中から狐狩りに行く者は無いかと募ります。それに応えて、
『大石兵六』(おいせ ひょうろく)が進み出ます。
”出でるものは出でれ、出でれ〜!”
この大石兵六(架空の人物)が、
あの忠臣蔵の大石内蔵助の子孫だというのも面白いです。ちなみに、
二才衆の人数は四十八人という設定になっています。
大見得(みえ)切る兵六
白銀坂の真ん中ほどに来た兵六は、
『この兵六が刀は谷山前平つくりのうー段平のあばおろし(要するに名刀ということ)』
『出でるものは出でれ〜、出でれ〜』と見得を切ります。
早速現れる化け物『キジン(奇人)』
そして、最初に現れる狐の
妖怪が『キジン(奇人)』、兵六の周りを飛び回り、
背後から兵六に襲い掛かります。
キジンを振り払う兵六
何とかキジンを
追い払うと、今度は”相撲を取ろ、相撲を取ろ”といいながら
『ヌッペッポウ』が現れます。
つぎに、”相撲をとろう”と現れたヌッペッポウ
『ヌッペッポウ』は、
江戸時代の妖怪絵巻には、顔と体の皺の区別のつかない、
一頭身の肉の塊のような姿で描かれています。
ヌッペッポウも押し返えします。
”これも化け物か〜”。
ヌッペッポウも追い返すと、化け物は元の狐の姿に戻り、
2匹の狐は兵六から逃げ回ります。
妖怪の化けの皮がはげて逃げ回る狐
2匹の狐は、
左手前が雄狐で、先を行く右手が雌狐。いずれも小学校一年の
女子児童が役をつとめています。
次に現れたオンジョ(爺さん)、これも狐の化け物。
やっとのことで、吉野ヶ原の
2匹の狐を生け捕りにしたところで現れたのがオンジョ(爺さん)。
これもお尻に尻尾があって、狐の化け物。
オンジョに説得されて狐を逃がす兵六
『狐は稲荷大明神、神の使いじゃ』
『嫁も取らす、家督も譲る、その狐は許しゃ!、その狐は許しゃ!』などと、あれこれの言い含められ、
せっかく生け捕りにした狐を逃がす兵六でした。『またもオンジョ狐に騙された〜』
吉海女(よしがめ)登場
二匹の狐とオンジョが
退場すると、庭狂言『兵六踊り』はいよいよクライマックスへ。吉野ヶ原の
吉海女(よしがめ)という化け物が登場します。
『ひとつだましてやろう!』
”この村の庄屋が娘で、
この前疱瘡(ほうそう)が流行り、米山薬師にお守り札をおこしに行っての帰りがけ、
道にまぎれて遅くなりました”といって登場します。
”捕った捕った吉野ヶ原の吉海女という化け物を”
『捕った捕った。吉野ヶ原の
吉海女(よしがめ)という化け物は、これに相違ない』『この兵六が手にかかりし上は、許すことまかりならん!』 
『どうぞお許しくださんせ、お兵児(へこ)さん!』
”エッヘン、わしはこの村の庄屋!”
そこへ、二匹の狐を従えて
庄屋が現れます。お尻に尻尾があるからもちろん吉野ヶ原の狐。
”ひとの娘に手をかけるとは、どこの道楽者か!”
フリ”家来ども縄をかけ!”
 ”家来ども縄を掛け!”
”縄にかかることまかりならん!”と叫びながらも、庄屋の
家来(二匹の狐)の縄にかかる兵六でした。
観念して狐の縄にかかる兵六
狐を演じている二人のうち
右手後ろの雌狐の”鈴彩ちゃん”は、兵六を演じているのがお父さん、左手の雄狐の”さくらちゃん”は
庄屋を演じていうのがお父さんで、いずれも父娘共演です。
和尚と小僧の登場
”ほほー、ここは何事じゃ〜、
何事じゃ〜、”といって、和尚と小僧が登場。もちろん、和尚も小僧も狐の化け物。
”ここは折衝、咎人(とがにん)の場”

”この咎人(とがにん)は出家に下されよ!”
”この咎人(とがにん)は
出家に下されよ〜、下されよ〜” ”出家というものは、人を助けるための出家でござる!”
”えい〜、わかった! この咎人は出家にくれてやる!” 
”もろたもろた、もらい出したもろた!”
”もろたもろた、もらい出したもろた!”
”なせよ、なせよ! よか坊主になせよ!” ”はい、はい” ”兵六どん、よか坊主ないゃいお”
といいながら、踊り回る和尚と小僧。兵六を坊主にします。
兵六を坊主にする(かつらを取りかえる)小僧
”つるっと居眠りしたか
と思えば、びんた(頭)は冷や冷や。坊主になされた〜”。坊主になされた兵六は切腹を覚悟します。
”ここで切腹とは往来の人の妨げになる。家に帰って切腹じゃ!”
地蔵に化けた狐に気づく兵六
とそのとき、
狐がお地蔵さんに化けて立っているのに気づく兵六。一計を案じます。
”ほほ〜、ここに立派なお地蔵さんが立っている。”
一計を案じる兵六
”ほんまな地蔵さんなら、
この花をあぐればにっこと笑う。化け物なら決して笑わぬ!”
”一つ地蔵参りでもして帰ろうか〜”
にっこと笑ってしまった化け物地蔵
”あはっは〜”
”やはり化け物か〜”。機転をきかした兵六の一計にまんまと引っかかり、
笑ってしまった吉野ヶ原の狐たち。
逃げ出す化け物たち
”やはり化け物か〜”
化けていることが露見した吉野ヶ原の狐たちは逃げ回ります。
追いかけて生け捕りにしようとする兵六。
逃げ回る狐
”捕った〜!、捕った〜!”
”吉野ヶ原の王山狐を生け捕りにした。坊主になされた兵六ではあったが、
おの王山狐を、四十八人の二才衆の土産にしよう〜”
”捕った捕った吉野ヶ原の王山狐を生け捕りにした!”
兵六を出迎える二才衆たち。
坊主になされた兵六に、”生首を渡せ”と迫りますが、生け捕りにした狐を
手土産代わりに、何とか面目を保った兵六でした。
兵六を出迎える二才衆
編集後記
本ホームページの運営・管理をしているワシモ(WaShimo)が在住している集落(鹿児島県薩摩郡さつま町船木下公民会)の伝統芸能の『庭狂言 兵六踊り』。 2015年11月29日(日)に開催の船木区農業文化祭で踊って欲しいとの要請を受けて、保存会である壮年団の臨時総会を開き、今後も是非『兵六踊り』を伝承していきたいという旨の保存会の総意を確認し、15年振りに踊ることになりました。配役も若い世代に引き継いでもらい、10月19日から農業文化祭の前日の11月28日までの約40日間、土・日曜日を除く連夜稽古に励みました。兵六踊りは、天明4年(1784年)に毛利正直が著し、鹿児島の人々に広く親しまれて来た『大石兵六夢物語』を原作とする庭狂言です。 200年余りを経た今なお、鹿児島の独特の味を持った物語が語り踊り継がれているわけです。 鹿児島の吉野ヶ原(現在の鹿児島市吉野町)の白銀坂は古狐の巣窟で有名な所でした。そこに行って坊主にならずに帰って来た者は一人もないと、かねてから噂されていました。ここに大石兵六という若者が、二才衆の代表として狐退治に出かけます。ところが、古狐が、若い女に化けて兵六をうまうまと、たぶらかして坊主にしてしまいます。面目丸つぶれの兵六は、切腹まで覚悟しますが、最後には狐を捕らえて何とか凱旋を果たすという節で、その間、狐が、キジンやヌッペッポウ、小坊主などに化けて現れ、踊りを踊ったりして、面白くおかしく劇が進行します。
   」兵六踊り(南方神社奉納編)
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