レポート | ・雇用問題に関する内外2つの新聞記事 |
− 雇用問題に関する内外2つの新聞記事 −
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2003年5月30日の新聞で、雇用問題に関する内外の2つの記事を目にしました。 ・フリーター問題(国内) ・マイスター制度の実質廃止(ドイツ) フリーター問題 5月30日の閣議に「デフレと生活−若年フリーターの現在」と題した2003年度の国民生活白書が提出されました。その中で、若年層の「フリーター」の増加による若者の職業能力の低下が、日本経済全体に悪影響を及ぼすという危機感が示されました。 〔フリーター数の現状〕 白書によると、15〜34歳のフリーターは、年々増加し2001年には417万人(派遣を含むパート・アルバイトに、働く意欲のある無職の人を加えた人数)に達し、同世代の学生・主婦を除いた人口の 5人に1人がフリーターという計算になります。 〔フリーター増加の要因〕 (1)長期化するデフレの下で景気が低迷し、企業が採用の抑制を続けている。 (2)展望・計画が立たたず、経営環境の変化が激しい中で、企業は、人件費の抑制と雇用調整のしやすいパート・アルバイトの雇用を増やしている。 (3)若者の就業意欲や職業能力が低下している。 〔日本経済に及ぼす影響〕 (1)若者の職業能力が高まらず、経済全体の生産性が低下し、成長の制約になる。 (2)経済的な自立が難しく、親と同居を続けるケースが増え、結婚しない理由の一つとなっている。未婚者、晩婚者が増え、少子化の助長につながる。 マイスター制度の実質的廃止 ドイツでは、自動車工や精密金属工、電気技術者、食品加工者などほぼすべての手工業職種で、マイスター資格がなければ開業できず、「見習」を雇っての指導もできないという、中世からの徒弟制度に基づく、マイスター制度が法制度化されています。資格を取得するには、見習工として、三年間働きながら有料の職業学校にも通い、さらに最低で三〜五年の技術研修を積んで試験に合格する必要があります。 マイスター制度による「ものつくり」への徹底したこだわりが製造業国家の基礎になっていましたが、近年つぎのような問題が浮上してきました。 (1)失業者の増大が深刻な問題となっている中で、厳しい資格制度が起業や就業への制限となっている。 (2)大企業を中心に、北米やアジアへの工場進出が加速する中で、マイスターの「職人芸」に頼るやり方を続けていては、グローバル戦略上の制約になる。 (3)高度に教育された人材ならマイスターでなくても問題なく製造できる技術的環境が整いつつある。 こうした状況を背景に、ドイツ政府は、対象職種の約三分の二について、マイスター制度を事実上廃止する法案を閣議で決定しました。これに対して、人材の質的低下を招き、起業も増えず、むしろ雇用不安を増すと、下請け企業や中小企業からの反発が多いようです。 日本でも、中国などへの工場移転が進む中で、「ものつくり」の技術継承が問題になっています。 【参考】 (1)2003年5月30日付 読売新聞(朝刊) (2)2003年5月30日付 日本経済新聞(朝刊) |
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2003.05.30 | ||||
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