レポート  ・ゆるブラック   
− ゆるブラック −

「大卒新入社員の3割は、3年以内に離職する」というのがいまや世間の常識といわれていますが、もっと精査していくと、「大卒新入社員の1割は、入社1年目で離職している」そうです(1)
 
2022年10月に厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(対象:2019年3月卒業者)」によると、大卒の新規就職者の就職後1年目での離職率は、11.8%になっているそうです(1)
 
この調査でも中小企業の方が早期の離職率が高い傾向にあるのですが、従業員1000人以上の大企業においても、1年目での離職率は 7.9%に達しているそうです。そのあまりにも性急な離職の理由は何なのでしょうか。最近特に若手世代で聞かれる『ゆるブラック』について調べてみました。
 
かつて、日本企業では、過剰な長時間労働が常態化し、ときにはハラスメントと相まって過労死やメンタル不調につながる、いわゆる「ブラック企業」の存在が問題視されました。
 
そこで、その解消を目指して「働き方改革」が行われ、企業の方では、労働環境が整っていて、待遇が良いなどの、いわゆる「ホワイト企業」であろうと努めているわけです。
 
そのような中で、新入社員が『お客様扱い』され、成長につながる負荷の高い仕事に恵まれない、いわゆる『ゆるブラック』にさらされているのではないかという指摘があります。
 
『ゆるブラック』な企業・職場は、「過度な残業などの長時間労働はないが、成長実感が得られない」、「職場の雰囲気は悪くないが、将来性は感じられない」、「離職率は低いが、その理由は楽だから」といったことが、その特徴として挙げられます。
 
明確な定義があるわけではありませんが、『仕事はきつくないし、居心地も悪くないが、スキルアップができずに成長できない』、と感じられる会社や職場のことを『ゆるブラック』な会社・職場というわけです。
 
産業構造の変化が激しく、将来が見通しにくい昨今の状況に加え、定年まで同じ企業で働く終身雇用が現実的でなくなった中で、社会人として早く一人前になりたい、早く市場価値を上げたいという気持ちが高まっているといわれます。すなわち、若者の意識が安定志向から成長志向へ変わっているわけです。
 
入社後の成長スピードに関して調べたある調査では、就職活動をしている学生に「社会人として活躍するまでに想定している期間」を聞いたところ、最も「3年目」が多く、次いで「1年目」が多く、3年以内という回答が8割にも及んだそうです(2)
 
一方、企業側のほうはもっと長い目で人材育成をしょうと捉えているそうです。この新入社員の意識と企業側の人材育成スケジュールのギャップが、新入社員に『ゆるブラック』を感じさせる要因になっているのではないかと思われるというのです。
 
では、長時間労働をするような時代に戻れば良いのかと言うと、もちろんそうではありません。仕事を覚えるための職場環境、研修制度や学習支援制度、能力評価の仕組みと昇進制度のあり方、自分の意見やアイデアを活かせる環境といった、自己成長を促す機会や手段、そして、働きがいを感じられる環境の提供が入社の早い段階から必要であると思われます(2)
 
【参考サイト】
(1)伊藤博之(フリーライター)「こんな仕事のために・・・」新入社員が
  1年で退社、ホワイト企業が“ゆるいブラック”と化す理由。
   YaHoo!×DOL共同企画(2023.6.27 10:00配信)
(2)若手社員の「ゆるブラック」という感覚の裏側にあるもの
   (「HUMAN CAPITAL サポネット」マイナビ)2023.04.28
 

2023.07.05
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