雑感 | ・山本周五郎の短編小説 |
− 山本周五郎の短編小説 − |
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ご承知の通り、時代小説の巨匠・山本周五郎(明治36年(1903)〜昭和42年(1967))は数多くの短編小説を書き、多くの作品が、今なお愛読されています。 山本周五郎の作品には、ドラマチックで感動的なものが多く(筋書きが出来すぎていたり、教訓的すぎる作品もないわけではありませんが)、多くの作品が演劇や映画、TVドラマの原作として使われてきました。 山本周五郎作品を原作とした映画一覧 → http://homepage3.nifty.com/yamashu-kan/sub5.html 山本周五郎作品を原作としたTVドラマ一覧 → http://homepage3.nifty.com/yamashu-kan/sub6.html 山本周五郎作品を原作とした演劇一覧 → http://homepage3.nifty.com/yamashu-kan/sub10.html 周五郎の作品は、30歳代の頃によく読みました。平成に入って、「たそがれ清兵衛」「蝉しぐれ」「橋ものがたり」などの、山本周五郎作品とは一味違った藤沢周平の時代小説に出会ってからは、もっぱら藤沢周平で、藤沢周平亡き後は、乙川優三郎の作品を楽しみにしていて、最近は山本周五郎の作品からは遠ざかっていました。 初蕾(はつつぼみ) そんな中、昨年(2003年) の12月8日(月)に、TBSテレビ・山本周五郎生誕100年記念番組『初蕾』(21時〜23時9分)が放映されました。久し振りの山本周五郎原作のTVドラマでした。ご覧になった方も多いことと思います。主演が宮沢りえ、東山紀之、宇津井健、若尾文子、池内淳子ほかと、キャストも素晴らしく、好感のもてる良い作品でした。公式サイトの掲示板には、再放映を希望する視聴者からのメッセージがたくさん寄せられています。 TBSテレビ・山本周五郎生誕100年記念番組「初蕾」公式サイト → http://www.tbs.co.jp/h-tsubomi/ 視聴者からのメッセージ → http://www.tbs.co.jp/h-tsubomi/bbs/bbs_read_01_001.html この短編は、まだ読んでいなかったので、原作を読みたくて探したところ、新潮文庫『月の松山』(平成15年11月、21刷改版、¥590)に収められていました。文庫本で38ページの短編です。 「ごらんなさい、この梅にはまた蕾(つぼみ)がふくらみかけていますよ、去年の花の散ったことは忘れたように、どの枝も初めて花を咲かせるような新しさで、活き活きと蕾をふくらませています、帰って来る半之助にとって自分が初蕾であるように、あなたの考えることはそれだけです、女にとってはどんな義理よりも夫婦の愛というものが大切なのですよ」「顔をおあげなさい、民さん、・・よく辛抱なすったことね」 (山本周五郎・著『初蕾』より) あなたはどう読むでしょうか? 『小説 日本婦道記』 『小説 日本婦道記』という、1942年(昭和17年)から1946年(昭和21年)の戦中・戦後にかけて発表した11編の短編を収めた短編集があります。1943年(昭和18年)上期の直木賞に推されましたが、受賞を固辞した作品でもあります。 小説日本婦道記のページ → http://homepage3.nifty.com/yamashu-kan/sub4s08.html 手元にある文庫本は、新潮文庫『小説 日本婦道記』平成4年7月30日64版ですので、10年前に読んだ本です。その本のカバーの紹介文を引用すると、「厳しい武家の定めの中で、夫のために、子のために生き抜いた日本の妻や母の、清々(すがすが)しいまでの強靭さと、凛然(りんぜん)たる美しさ、哀しさがあふれる感動的な作品である。」とあります。確かに、どの短編も感涙なくしては読めない作品で、現代の若い人たちにも結構感動をもって読まれている作品のようです。 例えば、Amazon.co.jp: 本: 小説日本婦道記 『カスタマーレビュー』 → http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101134081/250-8133095-9049035 しかし、この短編集は、すんなり紹介するには、いささか引っかりのある本です。というのは、この本は、読み方によっては、「女はかくあるべしと、日本女性の道を示す教訓であり、女だけが不当な犠牲を払っている、男尊女卑ではないか」と受け取られたり、『お薦めの一冊』として紹介したら「私にも、このようになれと言うのね」とお叱りを受けかねない本だからです。 一方で、しっかりわきまえた現代人なら、この小説を「日本女性かくあるべし」などと、読めるはずもない。くれぐれも女性の理想像としてつまらない読み方はして欲しくない。周五郎の持つ現代性というか、女性への尊敬の念を強く感じさせる作品と思う。時代を超えて訴えかけてくる普遍的な理(ことわり)がある。聡明な女は信頼に足る男にしか付き従わないということが書かれていて、本書の女たちは、その信頼関係に命をかけたといっても過言ではない。などと言った感想もあります。 さて、あなたはこの短編集をどうお読みになるでしょうか? (文中、敬称略) |
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2004.02.19 | ||||
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