コラム  ・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)   
− 蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり) −

今年(2023年)の七十二候を調べてみると、10月19日(木)〜10月23日(月)が二十四節・寒露の末候『蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)』で、その後に、霜降の初候『霜始降(しもはじめてふる)』(10月24日(火)〜10月28日(土))が続きます。

さて、『蟋蟀在戸』の蟋蟀(こおろぎ)は今でいうコオロギはなく、古くは今でいうキリギリスのことをいっていたので、ここでは、蟋蟀は、キリギリスやコオロギなど、鳴く虫たちの総称と考えます。

すなわち、『鳴く虫が家の戸口にいる』という意味になりますが、家の戸口にいるというのは、どういうことなのでしようか? 

『蟋蟀在戸』という七十二候の言葉は、中国最古の詩集である『詩経』(紀元前12〜6世紀)に出てくる、農民の暮らしを描いた漢詩の一節から引用されていています。『蟋蟀在戸』という七十二侯は、紀元前から変わっていない七十二侯のひとつなのです。

  七月在野
  八月在宇
  九月在戸
  十月蟋蟀
  入我牀下

この漢詩は、『七月は野に在り、八月は軒下に在り、九月は戸口に在り、十月になると蟋蟀たちは我が床の中に入り込む』という意味で、冷え込みが増すにつれて、あたたかい場所を探して家の中に入り込んでくる虫たちの習性を描いています。

この漢詩は日本に伝わり、日本の和歌に影響を及ぼしました。中世の歌人たちは、弱りゆく虫たちへの思いをさまざまに詠んでいます。たとえば、

  秋ふかくなりにけらしなきりぎりす 床のあたりに声聞こゆなり 花山院
  きりぎりす夜寒になるを告げがほに 枕の元にきつつ鳴くなり  西行

自然に対する、生々流転のいのちに対する人々の想いが、紀元前から中世を経て今日まで連綿と受け継がれているわけです。

【参考にしたサイト】
(1)暦生活
   → https://www.543life.com/seasons24/post20201018.html
(2)季節のコラム
   → https://www.lunaworks.jp/column/1218
(3)tenki.jp
   → https://tenki.jp/suppl/kous4/2017/10/18/26631.html
 

2023.10.25
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