コラム  ・高隈山   
− コラム 高隈山 −

鹿屋(かのや)に急用ができて、宮之城(みやのじょう)から車を飛ばしました。宮之城から鹿児島空港まで約40分、空港から隼人に降り国分市内を抜けて牧之原まで約40分、さらに鹿屋まで約50分。片道2時間を越える道のりです。


国道504号を輝北から高隈に入ると、高隈山(たかくまやま)が、突如目前に大とばりのように峻立します。高隈山は、大篦柄(おおのがら)岳や御岳など、1000m級の山々が連なる連峰です。連峰に抱かれた田園では、7〜8割方、稲刈りがすんでいました。


      『 高隈や稲架を連ねて大とばり 』 ワシモ


稲架(はざ)は、刈った稲を掛け渡して乾燥させるための木組みのことで、鹿児島では掛け干しと言います。孟宗竹を何本も連ねて長く、足は二本の木組でたくさんあって、二本の角を出し、まるで竜のようです。


      『 稲架掛けて飛竜のあまたおりにけり 』 ワシモ


秋の陽は釣瓶(つるべ)落とし。日は暮れて冷えてくるのに、稲架掛けの農作業はまだ終わりそうにありません。子供心に心細くなります。農家に生まれ育った団塊の世代の子供時代は、おおかたそんなでした。


      『 稲架掛けを凝視する子や影長し 』 ワシモ


鹿屋で用をすませて引き返す頃には、雨になりました。来る時と違って高隈山には靄(もや)がかかり、峰々の重なりが靄にくっきりと浮かび上がっていました。


高隈山は、学生時代に女子短大生のクループと合ハイ(合同ハイキング)で、猿ヶ城渓谷に遊びに行ったことを思い出させるだけで、国道504号側から高隈山系を見るのは今回が初めてでした。高隈山は、大隅に暮らす人たちや大隅出身の人たちのふるさとの風景に違いないと思ったものです。

2004.10.20  
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