雑感  ・あいつぐ小児科の休診に思う   
− あいつぐ小児科の休診に思う −


あいつぐ小児科の休診



『郡医師会病院の小児科が、退職する小児科医の後任を確保できないため休診する。再開のめどは立っていない。最近では、他の郡医師会立病院や市医師会立市民病院でも小児科が休診になっている。やはり、医師確保ができないなどの理由だ。』
 ある地方紙で目にした記事です。小児科を持つ病院の減少や小児科の休診が続いています。小児科医師不足におちいる事態をむかえているようです。


感謝に絶えなかった日


今から20数年前、初めての子供が誕生してまもなく、風邪気味のところにミルクをのどに詰まらせ、夜中に小児科にかつぎ込んだことがありました。チューブで吸い出してもらい事無きを得ました。その時の不安な気持ち、ありがたかった気持、今でもよみがえります。 赤ちゃんは、ものを言いません。小児科医としての腕とともに、小児科医の人徳を感じたものです。


2003年6月8日(日)のNHKスペシャル「こども・輝けいのち・第4集/小さな勇士たち 〜小児病棟・ふれあい日記〜」を感動を持って見ました。全てが、経済的効率で取捨選択されて行く。それで良いのでしょうか。


というような内容の書き込みをあるML(メーリングリスト)にしたところ、娘さんが小児科研修医をされている方から、つぎのような内容の返事がありました。

 『それは、ラッキーでしたね。今は、そうはいかないでしょう。病院をたらい回しにされます。今の小児病院の医師は、当日の仕事を終えてそのまま当直に入り、次の日も通常勤務のあと残業をして、連続40時間の勤務というのもざらです。』


 『娘は小児科研修医ですが、研修医ですら戦力としてあてにされています。土・日曜日なし、残業月200時間余、いつ倒れてもおかしくない状態です。そして、病院の小児科は赤字です。経営会議では針のむしろです。これで、次世代をになう子供の命が守れますか? 』


小児科医療の実情


@割に合わない

 子供の身体に負担を与えるような検査や投薬をなるべく行わないため、収入が少ない。注射や検査や処置のとき暴れる子どもをおさえるのに人手を必要としたり、子どもの体重に合わせて個別に薬の量を処方するなど、他の科に比べて手間がかかる。その割りに、診療報酬が少ない。つまり、経営効率が悪い。


A過酷な勤
 子供は時間を選ばず病気を起こします。発病したら緊急を要するので、365日、小児科医が常駐して、24時間体制で診療することが望まれます。そのような体制の病院が少ないと、患者が大病院に一極集中することになってしまいます。多い日では1日100人を超す患者が訪れて、夜中の0時頃まで患者が絶えないこともあるようです。


B医学生が小児科を避ける
 子供は、ちょっとしたミスが医療事故や死につながりやすいです。仕事がきつく、割に合わない、しかも医療事故も怖いとくれば、小児科医になり手が少なくなるということになります。


C公(こう)の役割

医療機器や医療技術は発達し、わが国は世界一の寿命国になりました。医療が高度化すればするほど、病院の経営効率が重要視されるようになります。その結果、小児科や産婦人科などの不採算部門が切り捨てられる。それで真の進歩と言えるのでしょうか? 


効率が悪くても基本的に必要なものは、国や地方公共団体の施策としてやっていく。そのことこそ、公(こう)の役割だと思いますが、小児科の廃止や休診は、地方の公立病院で多く見られるのが実情のようです。


 あいつぐ小児科の休診の問題は、国民全員で真剣に考えるべき問題だと思います。 

【備考】
NHKスペシャル放送記録
「こども・輝けいのち・第4集/小さな勇士たち 〜小児病棟・ふれあい日記〜」 
 → http://www.nhk.or.jp/special/libraly/03/l0006/l0608.html



  2003.09.17 
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