レポート  ・シエスタ、スペインの昼寝   
− シエスタ、スペインの昼寝 −
シエスタ(siesta)とは、スペイン語で昼食後に取る昼寝のことです。スペインでは、下記のように一日に5回食事をとり、食事の時間帯も日本とは異なっているので、一日の生活パターンは、日本とは違ったものになっています。
 
(1)デサユノ(朝食)
(2)メリエンダ・メディア・マニャーナ(朝の軽食)午前11時頃
(3)アルムエルソ(昼食)(一日のメインの食事)午後2時頃から
(4)メリエンダ(夕方の軽食)午後6時頃
(5)セナ(夕食)午後9時以降
 
スペインにツアー旅行に出かけたのは、今年(2011年)の7月のことでした。1時間のサマータイムが実施されていましたが、日没は午後9時半頃でした。スペインではその頃から夕食をとり始めますから、子供たちを含め就寝時刻が真夜中を過ぎてしまいます。
   
朝は日本と同様の時刻に起床しますから、昼眠たくなるわけです。というので、スペインには昼食のあと昼寝を取る生活習慣が根付きました。この昼寝のことをシエスタといいます。
 
人々は午後2時頃になると、一日のメインの食事である昼食を取りに一旦帰宅し、自分の家でじっくり時間をかけて食事をします。そして、食事のあと午後4時頃まで昼寝をして、夕方また仕事に出かけます。したがって、午後2時頃から4時頃にかけてのシエスタの時間帯は、官公庁はもとより大企業も中小企業も商店街のお店なども一時休業状態となるわけです。
 
シエスタがヨーロッパの他の国には見られず、スペインだけに見られるのは、8世紀から15世紀末までイベリア半島で続いたイスラム社会の影響だといわれます。
 
イスラム教徒の故郷・アラブの遊牧民たちは、もっとも暑くなる真昼の時間帯に、ヒツジやヤギなどの家畜が草を食むのをやめて木陰で休むと、自分たちも昼休みを取りました。そして、家畜が活動をはじめる夕方になると人間もまた働き出しました。こうしたイスラム教徒の一日の生活パターンから、昼食後に昼寝をとるというスペインのシエスタの習慣が生まれたと考えられています。
 
スペインの首都マドリードの市内観光やプラド美術館、古都トレドの案内をしてくれた現地のガイドさんは、カルロスさんというイケメン青年でした。日本で6年間暮らしたことのある人で、2005年の愛知万博でスペイン館のスタッフを務め、その後三重県志摩市にあるスペイン村で働いたそうです。このカルロスさんが『最近、スペイン人とりわけサラリーマンはストレスが溜まっている』としきりに説明します。
 
というのは、シエスタの習慣が1960年代からの経済発展にともない、しだいにカゲをひそめ始め、1986年にスペインがEC(欧州共同体)に加盟すると、グローバル化の中でシエスタの習慣も大きく様変わりすることを余儀なくされたのです。昼食とシエスタのために帰宅することが難しくなり、団地内の食堂などで昼食と休憩をとるようになりました。官公庁や大手企業では、ビジネスアワーのヨーロッパ化を余儀なくされました。
 
つまり、最近は実際に昼寝をしている人はそんなにいないようです。ですから、スペインのサラリーマンは寝不足でストレスが溜まっていると、カルロスさんはいうのです。一方、昼食を重く食べる習慣は残っているので、昼休みは2時間程度必要なようですが、これも、企業によっては、 他の国と同じように、 勤務時間は9時から午後5時までとし、昼休みは1時間にするというスタイルをとるところもあるようです。
 
スペインのフランスに近い都市バルセロナから西へバレンシアを経てスペイン南部に至る地中海沿岸はリゾート地で、どこも海水浴を楽しむ人たちで賑わっていました。カルロスさんいわく、『スペイン伝統のシエスタという習慣をエンジョイできるのは、今や地中海沿岸に別荘を持っているヨーロッパ各国の富裕層だけである』と。
 
昨年(2010年)年10月、初めての『シエスタ選手権大会』なるものがマドリードで開会されたそうです。平穏で良き人生の象徴だったシエスタ文化が廃れていくことを阻止しよういう趣旨の大会で、シエスタ愛好者たちが集まってバスの座席を準備し、その中で規定時間の20分間でいかに長く良く眠れるかなどを競うイベントが行われたそうです。
 
スペインは今財政赤字に苦しみ、失業率は過去最高の 21.29%(2011年1〜3月)という高水準に達し、政府は対策を迫られています。シエスタの時間帯に店を閉じる慣例を守る店舗は減り、シエスタ選手権大会の会場となったショッピングセンターも中断なく営業を続けていたそうです。
 

2011.09.14  
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