雑感  ・潜在意識に透徹する願望   
− 潜在意識に透徹する願望 −

団塊の世代生まれの著者が職に就いたのは、ちょうどオイルショックを契機にして高度成長時代が終わり、安定成長期に入った1975年(昭和50年)でした。質が求められる時代になり、エレクトロニクス化とディジタル革命の波は、技術競争をますます激化させます。


そのような中で、機械設計の仕事に従事していた著者の毎日は、朝7時に家を出て、帰宅は常に夜10時を過ぎる生活でした。土曜日、日曜日もほとんど出勤です。


設計や開発の仕事は、問題をクリアしたかと思うと次の問題が浮上してくることの連続です。ですから、家に帰って食事しているときも、風呂に入っているときも、頭の中には製図板があって図面を描いては思考錯誤し、またコンピュータの端末(当時のコンピュータは大型の汎用コンピュータでした)があって、プログラムを打ち込んでは、デバッグしています。


据付現場から、「配管が当たるぞ! どうすればいいんだ!」という電話がかかってくる夢で目を覚ましたり、海外出張の前になると英語で夢をみたりします。頭の中では、24時間仕事のことがくるくる回っているのです。高度成長時代の、いわゆる「モーレツ社員」の生活を引きずりながら、仕事に集中し没頭した毎日でした。


そのような中で、よく経験することがありました。社内の会議や客先での仕様説明会のなかで、無意識にふと手を挙(あ)げて、思い付きをしゃべっているのです。自分は何をしゃべっているのだろう? そんな感じです。その思い付きがなかなか的を得た、技術的にも理にかなったアイデアなのです。そのアイデアに助けられて、局面を打開したことが何度かありました。


それから何年かして、『潜在意識に透徹する願望』という言葉を知りました。京セラ(株)の創始者である稲盛和夫さんの『潜在意識にまで透徹する強い持続した願望を持って』という言葉です。『潜在意識に透徹する願望』とは、潜在意識にまで染(し)みわたる、潜在意識にまで浸透する願望、あるいは潜在意識を揺り動かす願望ということでしょう。


ああ、そうなんだ! 無意識にふと手を挙げさせ、思い付きをしゃべらせるのは潜在意識なんだ。そう納得したものです。


今の時代は、当時と違って、仕事だけしていればよいと言う時代ではないでしょう。価値観は多様化し、家事は男女でシェアリングする(仕事を分かち合う)時代です。


しかし、だからと言って、朝職場に出勤して机に座ってから、さあ〜設計を考えましょう、開発を考えましょう、夕方定時になったら仕事のことは忘れましょう、ということでは、機械技術の仕事に限らす、どんな仕事でも、企画や設計、開発などの何かを創造する仕事はなかなかこなして行けるものではないこともまた事実です。


ではどうすればよいのか? 技術者を目指す若い人たちに、著者がよく言いますのは、「現代は昔と違って、いろんなことをやらなければならない。だからと言って技術の仕事って一筋縄ではいかない。まず、集中力とメリハリのある生活を心がけることだ」ということです。


家庭のことや趣味や余暇のこともしっかり眼中におきながら、どうやって潜在意識に透徹する願望を持って仕事に没頭するか、創造的な仕事に携わる人々にまず課せらた課題のように思います。

2004.11.17  
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