レポート | ・ポブジカの谷 |
− ポブジカの谷 −
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ブータン在住のNさんから送ってもらった写真や五木寛之さんの著書『21世紀仏教への旅・ブータン編』(2007年、講談社発行)などを通じで、南アジアの小国・ブータン王国の重視する
GNH(国民総幸福量)について、その理念の背景にある、ブータンの自然や文化、仏教思想などの一端を知ることができたのは有意義なことでした。 GNHの理念の象徴の一つとして、とても新鮮に感じられたのが、『ポブジカの谷』のことでした。 送ってもらった写真のなかに、三方を山裾(すそ)に囲まれた村の風景写真がありました。”ヒマラヤ越えの鶴の里、ポブジカ(Phobjika)の谷。電線のない村として知られています。”とコメントが添えられています。 そうか、ブータンには、まだ電気の来ていない村があるんだ、ブータンの電気の普及率はどれぐらいなんだろうか、と思わず、Nさんに問い合わせをするところでした。ブータンは、国土がヒマラヤの斜面にあることをいかして、豊富な水力による発電を行い、インドに電力を売却しているぐらいなのに。 ”ポブジカの谷”(または、”ポプジカの谷”)でネット検索してみると、ヒマラヤを越えて中国から飛来してくるツルと共生をはかるため、ポブジカの村の人たちは、あえて電気のない暮らしを選んでいる、とあって、電線のない訳を知ったのでした。 ブータンの西寄りにある首都ティンプーから東部へ続く基幹道路を5時間余り走ったところで、道路から右にはずれて南下すると、標高 3,000メートル近い高地に、氷河に侵食されてできたという谷がU字に広がっているそうです。 このポブジカの谷に降りると、尾瀬ヶ原や阿蘇あるいは釧路湿原を思わせる湿原になっていて、毎年11月初旬になると、世界に 5,000羽ぐらしかいないといわれる絶滅危惧種の”オグロヅル”というツル約 200羽〜 500 羽が、中国からヒマラヤ山脈を越えて飛来してきます。時には酸欠状態になって息絶え絶えに飛来してくるそうです。 尾羽と首が黒くそのほかのところが白色のオグロヅルは、3月半ば頃まで、この谷で越冬し、またヒマラヤ山脈を越えてチベットへ帰っていきますが、ポブジカの村の人たちは、ツルが電線にひっかかったり、夜が明るくなってツルの生息の邪魔になってはいけないと考えて、村の人たちの総意で、あえて電気のない暮らしを選んでいるのだそうです。 日が暮れると、昔はローソクしかない生活でしたが、今はブータン政府が各家庭の屋根に一枚小さなソーラーパネルを取り付けてくれたおかげで、家の中には小さな裸電球がついて、夕刻の2〜3時間を電灯の下で過ごせるそうです。また、現在、ドイツの援助で、電線の地下埋設工事が進められているそうです。 ポブジカのもう一つの魅力は、小高い丘に建つ寺院『ガンテ・ゴンパ』の存在だそうです。ガンテ・ゴンパ( Gangteng Goenpa、現地発音では、ギャンティ・ゴェンパ)は、チベット仏教の宗派の一つニンマ派の西ブータン最大の寺院で、ガンテは山頂、コンパは寺を意味します。 丘の上に立つ本堂の前に、中庭が広がり、周りをぐるりと僧坊が取り囲み、参道は、在家僧やゴムチェン(兼業僧侶)とその家族の住まいになっており、さながら日本の門前町を思わせる雰囲気があるそうです。 世界中に高級リゾートホテルを展開するアマンリゾートの創始者の一人、エイドリアン・ゼッカ氏は、ブータンに長いこと通い、国の信頼と許可を得て、8年近く前の2004年に、ブータン国内で一ヵ所目となるアマンリゾート『アマンコラ』をオープンしました。そして、今はブータン国内の5ヵ所にアマンコラがあり、うち一ヶ所が、ポブジカにある『アマンコラ・ガンテ』です。 『アマンコラ・ガンテ』にも、最高級リゾートホテルながら、送電線は来ておらず、必要な電気は、自家発電でまかなっているそうです。その他のホテルでは、電気がないため、基本的に夜はロウソクにたよっているそうです。 ”広々としたポブジカの谷と、丘の上にたつガンテ・ゴンパの眺めは雄大そのもの。電線のない谷、ポブジカを望みながらとる朝食、そして、霧の中のガンテ・ゴンパ。まさに命の洗濯です。日常生活を忘れ、リフレッシュするのにお勧めです。連泊して近くをトレッキングするのもよさそう。”と旅行会社のサイトにあります。まだ見ぬブータンの秘境の地を想像してみるのです。 つぎのページでポブジカなどの風景写真が見れます。 ■ブータンの風景(2)− ブータン王国(写真寄稿) 【参考にしたサイト】 (1) BS朝日 - ZOOM ASIA (2) gaia*cafe : 電気のない暮らし (3) GNH的成長を目指すブータン(2009年秋)/YCASTER 2.0 : 伊藤洋一公式サイト (4) 3000mの高地にひっそりと佇む美しいロッヂ 「Amankora Gangtey Lodge」 |
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