レポート  ・夏目雅子さんの俳句   
夏目雅子さんの俳句 −

夏目雅子さん(1957〜1985年)が亡くなってもう26年が経ちました。白血病のため、27歳の若さで惜しまれつつ逝った女優・夏目雅子さんは、高校時代からはじめた俳句を趣味とし、女優になってからは、伊集院静さんに連れられて、写真家の浅井慎平さんが主催する『東京俳句倶楽部』に参加。俳号を海童といい、素敵な俳句を残しています。
 
    結婚は夢の続きやひな祭り
    あの人を鳥引く群れが連れて行く
    恋猫やなおやかに泣く間夫の宿
 
蛇足ですが、間夫(まぶ)とは、情夫(夫以外の愛人である男)のことですから、大胆な句ではあります。雅子さんには破調(俳句などの定型詩で、音数に多少が生じる、いわゆる字余りや字足らずなど)の句が多く、自由律俳句の尾崎放哉(1885〜1926年)や種田山頭火(1882〜1940年)に私淑(ししゅく)していたといわれます。
 
    水中花何想う水の中
    通り雨そっと握った蝉の抜け殻
    傾けば冬の夜に温
   
つぎの句なども、山頭火の自由律を思い起こさせます。
 
    ぬぐってもぬぐっても汗みどろ 
    風鈴よ自分で揺れて踊ってみたまえ
    寒空に赤い火は有り難い
 
つぎの一句は、死の40日前に詠まれた辞世の句で、一時病状が回復した入院中の8月2日に、慶應病院の病室の窓から、伊集院静さんに抱きかかえられながら眺めた、神宮の花火の輝きを見て作ったといわれます。
 
    間断の音なき空に星花火
 
病院の締め切られた窓越しに音もなく花開く花火。開いては、星屑のように消えてゆきます。
 
【用語】(デジタル大辞泉より)
・私淑(ししゅく)=直接に教えは受けないが、ひそかにその人を師と考えて尊敬し模範として学ぶこと。
 
【参考サイト】
・夏目雅子 - Wikipedia
・『増殖する俳句歳時記』検索: 20110727   
夏目雅子の俳句 - 光る砂漠〜私的遍歴〜 - 楽天ブログ(Blog)
      


2011.11.02  
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