レポート  ・第4回まごころ青春短歌大会   
− 第4回まごころ青春短歌大会 −
2011年11月19日(土)、第4回まごころ青春短歌大会発表会が薩摩川内市の入来文化ホールで開催されました。この短歌大会は、短歌の普及と短歌に親しむ青少年の育成を目的として、鹿児島県歌人協会青春短歌委員会(森山良太委員長)の起案と支援により、薩摩川内市で結成された実行委員会(入来院重朝委員長)が2008年より開催しているもので、第4回の今年は、県内の中学校(65校)と高校(22校)から17,920首(中学生 8,578首、高校生9,342首)の応募がありました。
   
4名の選考委員によって、中学生の部と高校生の部の特別賞、特選、入選、佳作がそれぞれ選考されました。19日の発表会には受賞者や関係者らが参加、賞状や歌を書いた短冊などの贈呈がありました。特別賞の各8首を以下に紹介します。
   
【中学生】
   
○まごころ青春短歌大賞
 
  桜島はぼくらの街のゴールキーパー真正面に夕日をあびて
               
                鹿児島修学館中学校・一年 坂上 淳之介
  
  《選者講評より》
   桜島をうたった名歌はいろいろあるが、坂上君のこの歌は新しい
   名歌の誕生と言っていい。街の人びとの喜怒哀楽をすべて受けとめ、
   そして激励し、前進させてくれる桜島。単に自分一人のゴールキー
   パーではなく、『ぼくらの街の』と言っているところがいい。
  
○鹿児島県知事賞
  
  夜色の布を一枚用意して夏の夜空を刺しゅうする
 
              川島学園れいめい中学校・二年 白石 加奈子
 
○薩摩川内市長賞
 
  「どこがスキ」友に聞かれて「分からない」言ったらみんながスキになるから
  
                 出水市米ノ津中学校・二年 松永 樹理
 
○鹿児島県歌人協会賞
 
  青空をゆっくり泳ぐ白い雲それをせきたて追い抜く時間
 
                 錦江町立田代中学校・二年 鶴田 彩乃
 
○南日本新聞社賞
 
  大裁ちの晴れ着にぬわれた内揚げに祖母の優しい手を思い出す
 
                鹿児島純心女子中学校・一年 大川 慧子
 
○岩屋莫哀賞
 
  てぶくろがどこかに消えてる片手だけきっと一人で旅に出たんだ
 
                 鹿屋市立高隈中学校・一年 江並 琴和
  
○森園天涙賞
 
  靴ひもを結んで見上げた青空に明日の自分を描いてみる
 
                伊仙町立犬田布中学校・三年 屋 和佳子
 
○萬造寺齊賞
 
  浮かびくる汗水ながす母の顔働く母は最優秀賞
 
                薩摩川内市入来中学校・三年 上堀 竣健
 
【高校生】
 
○まごころ青春短歌大賞
 
  未来過去知らないだらけの君のことそれでも「今」を共有したい
  
               津曲学園鹿児島高等学校・二年 船間あさひ
 
  《選者講評》
   じつに若々しい。「君」は同性の友人と考えてもいいし、異性の友人
   あるいは恋人でもいい。大切なのは「今」であり、その今を共有したい
   という下の句が力強い。「今」をしっかり「共有」すれば、「未来」を
   かならず「共有」することになるはずである。
 
○鹿児島県知事賞
  
  一面は紫色の絨毯だ背中を合わせてすみれと会話
  
               鹿児島純心女子高等学校・二年 松元 慶依
 
○薩摩川内市長賞
 
  あの頃は付き合うなんて夢みたいいつもと違う夏の夕焼け
  
             鹿児島県立市来農芸高等学校・一年 吉 佑平
 
○鹿児島県歌人協会賞
 
  初めての贈り物が宝物両親からのひらがな三つ
  
              学校法人神村学園高等部・三年 若松 ありす
 
○南日本新聞社賞
 
  アルバムを家族で囲み笑い声昔みたいに近くなる距離
  
               鹿児島県立川内高等学校・二年 山平 智子
 
○岩屋莫哀賞
 
  青空へふわり優しく舞い上がる土のにおいに気持ちが高ぶる
  
               鹿児島県立喜界高等学校・二年 前島 智美
 
○森園天涙賞
 
  人生で分かれている道迷わずに進んでいくのはいいことなのか
  
             鹿児島県立加治木高等学校・二年 八ヶ代 孝康
  
○萬造寺齊賞
 
  母と寝るといつも話しかけてくる「おやすみ」連呼実はうれしい
  
               津曲学園鹿児島高等学校・一年 入船 春菜
 
第4回まごころ青春短歌大会は、薩摩川内市提案公募型補助金の交付を受けて実施されました。選考委員は、伊藤一彦氏(歌人、第42回迢空賞受賞)、福満薫氏(鹿児島県歌人協会会長)、川野ちづゑ氏(歌人、『かごしま短歌時評』執筆者)、森山良太氏(歌人、第51回角川短歌賞受賞、『華』短歌会代表)の四氏が務めました。
  
 
〔編集後記〕
 
今年(2011年)の世相を表す『今年の漢字』に『絆』が選ばれました。今年は過去最多だった昨年より21万票以上多い49万6997票が集まり、『絆』が6万1453票を得たそうです。東日本大震災や台風12号など相次いだ災害で再認識された家族や仲間、地域とのつながりの大切さなどを理由に挙げた人が多かったそうです。
 
『ぼくらの街のゴールキーパー』『みんながスキになるから』『内揚げに祖母の優しい手』『働く母は最優秀賞』『「今」を共有したい』『いつもと違う夏の夕焼け』『両親からのひらがな三つ』『昔みたいに近くなる距離』『「おやすみ」連呼実はうれしい』など、第4回まごころ青春短歌大会の特別賞受賞作品にも『絆』をテーマにしたものが多かったです。また、特選の中にも絆を詠んだいい作品がたくさんありました。
 
  座っててよ今日は私たちが作るんだ今夜のメニューはほかほかカレー
                  指宿市立開聞中学校・三年 濱上由希架
 
  こんなにもあなたのことを想うのにあなたの中にわたしはいますか
            いちき串木野市立市来中学校・三年 鏑流馬 佑希
 
  学校でずっと気持ちがくもってる母に謝る勇気がなくて
               薩摩川内市立平成中学校・二年 池崎 未来
 
  夏祭り太鼓の音をひびかせる遠き職場の父の元まで
               鹿児島県立川内高等学校・二年 柴田 大地
 
  十六年父母の背中を見てたから優しい嘘もあるのだと知る
              鹿児島県立種子島高等学校・一年 古田 果鈴
 
  午後六時練習終わって食堂へみんな並んで卵割る音
              鹿児島県立伊集院高等学校・二年 清藤 公仁
  

2011.12.14  
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.−