エッセイ  ・黒石よされ   
− 黒石よされ −
『望郷よされ節』という歌謡曲を、女性演歌歌手・水森かおりさんの歌謡ショーの前座で歌わせてもらったのは、今年(2016年)4月のことだった。『よされ節』は東北地方に伝わる民謡である。
 
『よされ』という囃(はや)し言葉を含み、津軽三味線や太鼓などで演奏される賑やかな楽曲で、『津軽よされ節』、『黒石よされ節』、『南部よしゃれ節』などの種類がある。つまり、前座で歌った歌は『よされ節』のふるさと東北地方の故郷に思いを馳せる内容の歌謡曲であった。
 
さて『よされ』の意味であるが、今回、阿波踊り(徳島県徳島市)、郡上踊り(岐阜県八幡町)とともに、日本三大流し踊りに数えられている『黒石よされ』の青森県黒石市を訪ねて、その理解を深めた。
 
黒石市の中町『こみせ通り』は、藩政時代から今に残る木造のアーケードで、現在まとまった形で残されているのは、全国的にも類例がないといわれ、日本の道百選とともに、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
 
その『こみせ通り』から横道にそれたところに広場があって、『黒石よされ』にちなんだ『恋よされ』というモニュメントが建ててある。踊り姿の二人の女の子がハート形の穴の開いた林檎を持つ銅像である。その林檎の穴にお賽銭を入れ、無事に下の器に入って、『チャリーン』という音がしたら、恋が叶うのだそうだ。モニュメントの説明につぎのようにある。
 
              恋よされ
 
   黒石よされは、藩政時代から盛んになったといわれ、豊作で楽しい
   ときは『仕事をよして楽しみなされ』、凶作のときは『このような
   世の中は去れ』という意味から呼ばれるようになったといわれてい
   ます。また、盆踊りの男女の恋の掛け合い歌であったともいわれて
   いることから、二人の男女がここを訪れると、恋がかなうように願
   いを込めて建立したものです。
              
訪ねた7月の中旬、岩木山を遠望する津軽平野は限りない青田で、豊穣の秋を想像させる。津軽平野は、太平洋側の平野や盆地などに比べ『やませ』の影響が少ないといわれるが、それでも幾度となく凶作に見舞われた経験を持つ。稲穂が生長する盆踊りの頃から、五穀豊穣を祈らずにはいられない。
 
『黒石よされ』の踊りの振りは、稲穂が揺れる様子を表現しており、また雀を追い払う所作を表しているといわれる。その証に、浴衣には、大柄の稲穂と雀の絵が描かれている。『黒石よされ』は、山岳宗教が盛んだった 600年もの昔、盆踊りのときの男女の恋の掛け合い唄であったといわれるが、五穀豊穣を祈る踊りでもあるのだ。
 
青森や弘前、五所川原の『ねぶた』もそうであるが、東北の短い夏をめいっぱい楽しもうと、『黒石よされ』もまた賑やかであるという。観てみたい、踊りの中に入って踊ってみたいものだが、遠い南の果ての鹿児島に住んでいる身にはままならない。   
 

『黒石よされ』にちなんだモニュメント『恋よされ』
(黒川市中町かくじ広場)
 
 
 祭りSP:黒石よされ(青森県広報広聴課)
   
  【参考になるサイト】
   旅行記 ・中町こみせ通り − 青森県黒石市
 

2016.07.26
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