レポート | ・こなから |
− こなから −
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俳句では、季節を規定する言葉として季語を入れることになっています。多くは私たちが日常使っている言葉が季語とされていますが、なかには俳句独特の言葉の季語があります。俳句雑誌を読んでいて『こなから』という言葉に出合いました。 こなからや静かな雪の夜は温き 栗林 浩 この句の季語は明らかに冬の季語である『雪』です。一句に季語は一つしか使いませんから、『こなから』は季語ではないことになります。国語辞典で調べてみると次のようにあります。 【こなから】 = 半分の半分。四分の一。四半分。特に、一升の半分を更に半分にした量。すなわち二合五勺(二合半)。転じて、少量。おもに酒・米に使われる。 つまり、『こなから』という言葉は、俳句に特有に使われる言葉ではなく、一般的に使われる言葉だということです。江戸時代の昔から、酒を飲むときに『こなから(二合五勺)ちょうだい』などと言って使っていたそうです。 三代目・桂米朝師匠(1925年〜2015年)の落語に、『あの人こなからやで』『あぁそぉかいな』という会話が登場します。二合半のことを『こなから』と言うから、あの人は『2号はん』(お妾はん)だという意味のダジャレです。 さて、ではどうして『こなから』が二合五勺という意味になったのでしょうか。先ず『なから(半ら)』という古語があります。(1)まんなかのあたり、(2)半分ほどの量や大きさ。(3)中ほどの地点・時点。途中。と言った意味の古語です。 次に、『小半刻』(こはんとき)という言葉があります。時刻の単位の一つで、一刻(約2時間)の四分の一を表す語です。江戸時代に広く用いられていましたた。半刻の二分の一。現在の約30分にあたります。 すなわち、小半刻の『小』は半分であることを表わしますから、『小半ら』(こなから)も半分の半分、すなわち四分の一という意味になり、酒や米に使って、一升の四分の一、すなわち二合五勺ということになります。 上戸(酒好き)には、二合五勺のお酒(日本酒)が適量ということなのでしょうか、転じて適量のお酒という意味で『こなから』という言葉が使われるようになったそうです。 冒頭に挙げた俳句は、『ほろよい気分になれる適量のお酒があれば、静かな雪の夜は温かである』という意味になります。 |
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2023.02.08 | ||||
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