雑感  ・情報開示と危機管理   
− 情報開示と危機管理 −

去る2004年2月28日、京都府丹波町の養鶏場で鳥インフルエンザウィルスが確認されました。その養鶏場で鶏の大量死が続いている事実が明るみになったのは、最初に大量死が始まって一週間たってからでした。それも、匿名電話の通報によってでした。


情報開示が遅れたこと、飼育した鶏を大量死が始まってから食鳥加工会社へ売りさばいていたことが問題視され、養鶏場を経営する会社会長夫妻が自殺するという痛ましい結果に至りました。


大手乳業メーカ関連の食品会社が2002年4月に解散したことは記憶に新しいです。狂牛病禍によって、売れなくなった国産牛肉を国が買い上げる制度を悪用し、輸入牛肉を国産と偽って国に買い取ってもらったという事件が発覚し、それが発端となって食肉産地の偽表示が次々と明るみになり、売り上げが激減し、会社を存続できなくなったためです。


これらの2つの例は、情報開示の遅れや事実隠蔽(いんぺい)工作の破綻によって、企業が存亡の危機に瀕した例です。会社の存続を揺るがす重大な危機につながるとわかっていれば、しかるべき対応が取られ、重大な危機は回避されたはずです。高(たか)を括(くく)って間違った判断がなされたということでしょう。


世の中が清潔になって免疫性が低下したのでしょうか、エイズ、狂牛病、O−157、新型肺炎、鳥インフルエンザなどの新種のウィルスや病原菌の発生が相次いでいます。また、地球環境の変化によって温暖化や集中豪雨などの異常気象が頻発しています。


このように、かつて経験したことのない出来事が突発的に多発するなかで、社会を取り巻く環境、とりわけ物流や情報通信技術、そして人々の意識が以前と比べものにならないほど変化しています。つまり、


(1) 人の行き来や物流がスピードアップするとともにグローバル化した結果、ある国の一地方で発生した出来事がすぐ世界中に飛び火して波及する世の中になった。


(2) マスコミニケーションや情報通信が進み、発生した出来事が瞬時に世界に知れ渡る時代になった。


(3) 人々の、環境問題、人権問題、企業倫理、情報公開などに関する関心が高くなっている。


情報開示には、どうしても当面の利益を守ることとの葛藤(かっとう)が付きまといます。しかし、今日、情報の開示が遅れたときや、事実隠蔽の工作が破綻したときのリスクは、以前と比べものにならないほど大きく、当面の利益の比ではありません。企業を存亡の危機に追い込むほどなのです。したがって、旧態然とした、高を括った判断でなく、企業トップの会社マネージメントとしての危機管理がますます重要になってくるものと思われます。企業の利益と社会の利益が両立しないとやっていけない、そんな時代になっています。

2004.03.17  
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