レポート | ・邯鄲(かんたん) |
− 邯鄲(かんたん) −
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『あれまつむしが ないているチンチロチンチロ チンチロリン〜♪ ・・・ あきのよながを なきとおす〜♪ ・・・』と文部省唱歌『虫のこえ』にあるように、秋は虫の鳴き声のシーズンです。 コオロギ科の昆虫に『邯鄲(かんたん)』という虫がいます。その美しい鳴き声から『鳴く虫の女王』と言われているそうです。合本俳句歳時記第三版(角川書店)には以下のように解説があります。 〜 体が長細く、淡い黄緑色をしている。長さは 1.5センチ前後だが、その3倍に達する線状の触角を持っている。8月ごろから草の間で多く鳴いている。その鳴き声はルルルと夢みるような美しさで、情のこもった感じがする。〜 その姿と鳴き声を視聴できる動画(YouTube)がありますので、見てみましょう。 ・カンタン(邯鄲)秋の鳴く虫 → https://www.youtube.com/watch?v=gHLHrE3vhDg さて、この邯鄲という虫の名前は、『邯鄲の夢』(あるいは『邯鄲の枕』)という中国の故事に由来します。 ― 邯鄲の夢 ― 趙の時代に『盧生』という若者が人生の目標も定まらぬまま故郷を離れ、趙の都の邯鄲に赴く。盧生はそこで呂翁という道士(日本でいう仙人)に出会い、延々と僅かな田畑を持つだけの自らの身の不平を語った。 するとその道士は夢が叶うという枕を盧生に授ける。そして盧生はその枕を使ってみると、みるみる出世し嫁も貰い、時には冤罪で投獄され、名声を求めたことを後悔して自殺しようとしたり、運よく処罰を免れたり、冤罪が晴らされ信義を取り戻ししたりしながら栄旺栄華を極め、国王にも就き賢臣の誉れを恣にするに至る。 子や孫にも恵まれ、幸福な生活を送った。しかし年齢には勝てず、多くの人々に惜しまれながら眠るように死んだ。ふと目覚めると、実は最初に呂翁という道士に出会った当日であり、寝る前に火に掛けた粟粥がまだ煮上がってさえいなかった。 全ては夢であり束の間の出来事であったのである。盧生は枕元に居た呂翁に『人生の栄枯盛衰全てを見ました。先生は私の欲を払ってくださった』と丁寧に礼を言い、故郷へ帰っていった。(以上、Wikipedia より転載) すなわち、『邯鄲の夢』は人の栄枯盛衰は所詮夢に過ぎないという、その儚さを表す言葉なわけです。そして、私たちの先人たちは、ルルルと夢みるような美しさゆえに、その鳴き声にもはかなさ、哀れを感じて虫の名を『邯鄲』と命名したのでした。 邯鄲に美しき客あれば足る 京極杞陽 邯鄲の冷たき脚を思ふべし 長谷川櫂 邯鄲や貧しさ語り継がれて来し 稲畑汀子 |
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2019.10..09 | ||||
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