1888年、パリからアルルに移り住んだゴッホは、小高い丘の上に立つモンマジュール修道院とその周囲の風景が大変気に入り何十回も訪れたそうです。タラスコン街道を通って、モンマジュール修道院へスケッチに出かける途中の自画像を描きました。
ゴッホ唯一の全身自画像ですが、『タラスコンへの道を行く画家』と題されているこの絵は1945年に消失とされています。第一次大戦勃発の2年前、1912年にドイツ北部の都市マグデブルクのカイザー・フリードリヒ美術館(現マグデブルク文化歴史博物館)所蔵となりました。
1939年に第二次大戦が勃発すると、重要な美術品は安全な場所に疎開の措置が取られ、この作品も近郊の塩坑に移されました。しかし、大戦末期、戦闘が激しさを増し、終戦直前の1945年4月、戦火の犠牲となったと考えられています。
焼失したという確たる証拠がなく、どこかに存在している可能性も捨てきれないそうですが、確かなのは、戦後70年以上を経た現在、この名画が依然として消えたままであるということだそうです。大塚国際美術館(徳島県鳴門市)がこの絵を原寸大の陶板画で再現し、2018年11月から一般公開、常設展示しています。
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再現された陶板画『タラスコンへの道を行く画家』(大塚国際美術館) |
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