コラム  ・風呂敷   
− 風呂敷 −

Sake(酒)やKaraoke(カラオケ)、Sushi(寿司)など、世界共通語として使われている日本語はたくさんあります。
 
布団は、使わない時、たたんでしまっておけるので一つの部屋を居間にも寝室にも使えますね。日本の狭い家には合理的な寝具です。海外でもこの合理性が受け入れられたのでしょうか。欧米でも Futon(フートンと発音される)は、大人気のインテリア家具のひとつになっているようです。
 
2004年ノーベル平和賞受賞者で、ケニア共和国環境副大臣のワンガリ・マータイさん(1940.4〜)は、京都議定書関連行事に出席のため来日した際、「もったいない」という言葉に感銘を受けます。そして、地球環境を守る世界共通語として「MOTTAINAI」を世界各地で訴え続けています。
 
「もったいない」と言えば、私たちのレジ袋の使用量はすごいですね。連れ合いと二人だけになった我が家でも、あれよあれよという間にレジ袋がたまってしまいます。わが国の年間のレジ袋の使用量は、 300億枚を越えるそうです。乳幼児を除いた国民1人当たりに換算すると、約 300枚/年間の使用量になります。
 
このレジ袋の消費量を原油に換算すると5億6千万リットルになるそうです。わが国の年間原油輸入量は、約2億4千万キロ・リットルですから、レジ袋という一品目だけで、総輸入量の0.23%に相当することになります。
 
思い出してみれば、日本の暮らしの文化には、何でも包めて何回でも使えるラッピングツールとして、『風呂敷』(ふろしき)がありますね。使うときには大きく使え、使用後は小さくたためます。風呂敷も、日本人の知恵が生んだ合理的グッズの一つですね。お洒落なファッションアイテムでもあり、緊急のとき、スカーフや膝掛け、テーブルクロスなどにもなります。
 
風呂敷は、室町時代に大名たちが風呂に入るときに、家紋の付いた布で自分の衣類を包んで他人のものと間違えないようにしたり、風呂から上がった時、敷いたその布の上で見繕いをしていたのがはじまりだそうです。その後、江戸時代になり銭湯の普及とともに庶民にも普及し、『風呂敷』と呼ばれるようになりました。
 
若い駆け出しの頃、学会の講演会に行くと大御所の先生は、登壇して紫色の風呂敷包みからおもむろに資料を取り出して講演を始めます。それを真似たわけではないですが、以前は書籍や資料を持ち運びするのに風呂敷を使ったときがあったものです。
 
最近はめっきり使わなくなったし、使っている人を目にすることも少なくなりました。ただ、著者の地方では、四十九日や三年忌などの法事には、重箱に米を詰めて持参し、仏前に供えるしきたりが残っているため、風呂敷は今でも必需品で、家に何枚かあります。
 
現代の生活の中で風呂敷を活かすことを研究テーマに活動を続けている『ふろしき研究会』という非営利の市民団体があることをご存知でしょうか。独自の視点から課題を見いだし、『ふろしきトーク』と名づけたミニイベントや、新たな包みの文化・結びの文化の方向性を切り開く活動をなどを行なっていて、会員は国内だけでなく、韓国や香港、アメリカ、カナダ、フランスなどにも広がっているそうです。
 
その会の代表である森田知都子さんは、『GIFT WRAPPING WITH TEXTILES −Stylish Ideas from Japan − 』(日本語タイトル「ふろしきラッピング」)という英語の本(講談社インターナショナル出版、2006年3月発売)を出しました。
 
海外出張するとき日本のお土産として、浮世絵を描いた扇子などをよく持参したものですが、『風呂敷』は海外へのお土産に最適ですね。日本の暮らしの文化の紹介にもなるし、自ら手を動かして物を包むという輪の広がりにもなります。
 
エコバックの理念とともに、国内でも『風呂敷』が見直され、そして『 Furoshiki』が世界共通語として広まれば良いですね。
 
【参考にしたサイト】
[1]『ふろしき研究会』の公式サイトのアドレスは以下の通りです。
  → http://homepage3.nifty.com/furoshiki/
[2]下記サイトで本の紹介がされています。
  → http://homepage3.nifty.com/furoshiki/furoshiki%20book
[3]『旅するふろしき』という(食風土探訪家・浅野秀美さんの)ブログもあります。
  → http://tennpyou.exblog.jp/i4
 

2006.04.26  
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