雑感 | ・’04 年頭雑感 − 押し寄せる国際化の波の中で − |
− 押し寄せる国際化の波の中で − |
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昨年12月23日に、米国ワシントン州で一頭のBSE感染牛が確認されました。そのニュースは、その日のうちに世界を駆け巡り、農水省は翌日、米国産牛肉輸入を一時停止しました。米国産牛肉の輸入禁止は、牛肉の値上がりとなってたちまち私たちの台所に直接影響を及ぼすでしょう。吉野家は牛丼の提供を中止せざるを得なくなると言います。好むと好まざるとによらず、今私たちは、まさしく、各国の経済が密接につながって連動するグローバル化(国際化)の中にいます。 押し寄せる国際化の波 私たちは、インターネットや電子メールで世界各地の情報を居ながらにして瞬時に入手でき、豊富な工業製品や食品、農産物などの輸入品を安価で入手できています。 そのように、私たちは今、グローバル化の恩恵を受けて、豊かで便利な生活を享受していますが、押し寄せている国際化の波は、『市場経済至上主義(効率至上主義)』、そして『グローバルスタンダード(世界基準)』という波です。その波は、市場開放、自由競争を原則とする波です。 これからどうやって行くのか? 『市場経済至上主義(効率至上主義)』が席巻(せっけん)し過ぎると、自由競争について行けない人や領域が出てきます。 これまで、税という形で高収益の産業部門から利益を吸い上げ、それを成長に後れをとった地域や産業部門へ再分配する政策が取られてきました。高度成長の時代には、それがうまく行っていたのです。 しかし、経済は成熟期に入り、高度成長期のような経済成長が望めない時代になりました。そして、中国の台頭などで国内産業は空洞化し、競争力を失いつつあります。そんな中で、少子高齢化が進み、社会保障費だけがどんどん増えるばかりです。加えて、政府は膨大な累積赤字を背負っています。再分配するにも財源がありません。わが国は、これからどうやって行ったら良いのでしょうか。 先ず、この状況を国民一人一人が認識して問題意識を持ち、これからどのような暮らし振りを志向するのか、どのような政策を選択するのかを自分の問題として真剣に考えることが必要ではないでしょうか。 自助努力と自活、そして政治の役割 『市場経済至上主義(効率至上主義)』の流れの中で、苦しい立場に置かれる人や領域を考える場合、次の3つに分けて考える必要があると思います。 (1)市場経済の中にありながら、自由競争について行けないで衰退していく産業。 (2)農林水産業や地方など、市場経済に無関係ではないが、どうしても経済効率が悪い産業や地域。 (3)福祉、教育、環境など市場競争がなじまない領域、社会的に弱い立場にある人。 成熟した高齢国が活力を復活させるためには、経済の若返りを図り、新しいアイデアや技術を考え、新しい産業を興し、そして新しい産業が経済をぐいぐい引っ張って行って欲しいのです。それが、民営化や規制緩和の狙いです。自由競争について行けない産業や企業は転換を図り、経済効率の悪い産業や地域には、自助努力を求めようとしています。 市場競争がなじまない領域や社会的弱者に対しては、ある程度の受益者負担を求めながらも、できるだけ手を差しのべるのが政治の役割です。そのためにも、経済を立て直して活力を取り戻し、財源を確保する必要があります。 教育の必要性 米国は、さすがにアメリカン・グローバルスタンダードの本家本元だけあって、初等教育の段階化から、株式取引ゲームなどを取り入れて、経済観念の教育を行っているようです。 日本の教育では、経済観念どころか、高校を卒業するまでお金や契約のことすら教えていません。凄(すさ)まじい消費者社会の中に、いきなり放り出され、本能のまま流れに流されて、若者の自己破産の件数が増加しているのはご承知の通りです。 教育のもっと早い段階から、「消費者教育」と共に、経済の仕組みなどを学び、経済観念を身に付ける教育が必要ではないでしょうか。そのことは、また、これからの社会を担う若者の就業や起業の動機付けのためにもプラスになります。 日本人のアイデンティティ 島国であるという地理的な条件や長く続いた鎖国のため、私たちは、日本人であることをあまり意識することがなかったのではないでしょうか。経済だけでなく文化の面でも急速にグローバル化、ボーダレス化(境目がなくなること)が進む中で、最近無性に、『日本人のアイデンティティ』について考えてみたくなっている自分に気づきます。 時間があればあちこちに出かけて、地域の文化や歴史、町おこしや村おこしの様子などに触れる。単なる回顧主義ではないように思います。『日本ってどんな国なんだろう』。勝ち組・負け組み、1(イチ)か0(ゼロ)、Yes(エス)かNo(ノー)、デジタル主義・二極主義だけでは片付けられない、多様な感覚や価値観を持っている日本文化。そんなかけがえのない日本文化を大切にしたいという思いです。 |
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2004.01.07 | ||||
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