俳句  ・ワシモ(WaShimo)の気ままに俳句   


(11月)

茶柱の嬉しき朝冬に入る

貸し借りの血圧計や冬の朝

薩摩富士大根日和の風が吹く

鍋蓋の小躍りしてる薬喰

こなからや締めは女将の薩摩汁

(10月)

雲梯に鈴なりの児ら天高し

菜園は妻の差配よ零余子なる

からすうり藪の中なる日の名残り

ふるさとは父の支度の下り簗

窓越しに仰ぐ流星旅まくら

(9月)

棟梁の弾く墨糸涼新た

田の神に享保の銘稲の花

糸瓜に頭ぶつけし勝手口

終日を自重に耐へて太糸瓜

糸瓜の大器晩成たはし哉

(8月)

蛸壺の円き青空終戦日

間断のなきかなかなや田原坂

下駄買ふや郡上踊りの人となる

底紅や村に小さき美容院

鳩十の犬の遠吠え星月夜

(7月)

駅ごとに冷気吐き出す夏客車

餡蜜を掬ふスプーン銀座雨

花氷向かひの店はルイ・ヴィトン

地下街の箱庭広場待ちぼうけ

アイガーの北壁となりかき氷

(6月)

釣上げし鰹天まで薩摩富士

海風は朱欒の花の風となる

故郷の遠のく車窓麦の秋

放水に虹の生まるる水路橋

皆をりし菜殻焼く日の奥薩摩

ニッキ水に三原色露店の灯

噴水の幾何を解きをり工学部

変数は未知数のまま蝉しぐれ

姿見にをんな仕上がる釣忍

白日傘閉ぢて入る大寺院の間

(5月)

若楓宿に借りたる夫婦下駄

菜殻火の匂ひ纏ひて帰り来る

終日の機上暮らしや代田搔き

さなぶりや見つからぬ靴の片方

夜釣り火の点く頃となり二番星

(4月)

芹洗ふシラス台地のもうらひ水

着信に躍る鞄や地虫出づ

動くとも見えれて赤べこ目借時

子をあやす風のくる道風車

植木算ならまかせてよ葱坊主

(3月)

春泥を押し潰しゆくキャタピラー

弾の降る瓦礫の陰に地虫出づ

絵馬掛けに願ひのあまた紅椿

手づくりの雛のかえっこ親子会

乳呑児の握り拳や蕗の薹

(2月)

薄氷を壊して去りぬ選挙カー

ひとり居を置き去りにして小鳥引く

城跡や礎石を囲むつくしんぼ

バリコンの拾ふ雑音黄砂降る

剽げたる鬼の民画や水温む

(1月)

飽食のニッポン猫の寝正月

呑兵衛はスルメ持参の浜どんど

大空に鳶の悠々出初式

眠る児の餅花一つ握りしめ

朝市やトロ箱で売る福寿草
             


 
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