俳句(選評) ワシモ(WaShimo)の気ままに俳句


Slownet(スローネット)俳句講座
  
Slownet俳句講座は2011年2月を持って終了しました。
再開を待ち望んでいます。

  
選句、選評  小島 健 先生 (NHK学園俳句専任講師)
 
【特選】
 
  泳ぎきり親子河童となりにけり     201007
 
大らかな、そして、とても愉快なワシモさんの作品です。句意は明快。親子で泳ぎきったら、その親子が何と河童になったというのです。豊かな詩情と想像力に、心より拍手! かような発想と表現は、日頃から詩心の涵養を心掛けていないと、なかなか出来ません。「親子」が卓抜、最高です! 温かい親子の意志の疎通と、相互の信頼関係も伝わってまいります。この人間性(河童性?)に満ちた情愛が何ともたまりません。いいですね。
 
  猪食ふや億光年の星の下       200711
 
とてもダイナミックな構図の作品です。「猪」と「億光年の星」の二物の取り合わせが優れています。遠い星の下での猪食い。何か宇宙のあるいは人類の深遠なものを感じるではありませんか。大きな宇宙から見れば、人間なんて本当にちっぽけなものですね。ですから、今を大切にして、おいしい猪肉を食べましょう(?)。上五は猪でなくてもよさそうですが、荒々しい動物・猪がふさわしく。句の姿も内容に照応した上五の切字「や」と、下五名詞止めの格調の高い完璧な形で良好です。
 
  田の神も踊り出しそな彼岸花     20049
 
<西国の畦曼珠沙華曼珠沙華>という森澄雄の句を、思い出します。が、それとはまた別の趣があります。田の神様が陽気に踊り出しそうな真っ赤に燃えた彼岸花です。神と彼岸の仏教用語の字面も面白いですね。当然、この田には豊かな稲穂が黄金色に輝いているはずです。神仏混淆で豊年を祝いましょうか。中7の発想に拍手!
 
 
【秀作】
 
  人形の目の冴えてゐる夜長かな     201010
 
     本当は作者のワシモさんの目が冴えているのですが、人形にスライド。技あり!。 
  
  マニキュアの色より出でし桜餅      201004
 
     類句のない発想の豊かさに脱帽。現代風俗と古の取り合わせも興趣が増します。 
  
  東風吹けば駿河に魚の干しあがる  201003
 
     ・雅な東風と駿河に、下句の俗で楽しく逆転。この至妙な詩の裏切りに、乾杯!。 
 
  水仙に星の連なる日本海       201002
 
     ・ロマンのある抒情的な大きな作品。大景と可憐な水仙の結び付きが至妙です。
   
  露天湯に星を落として柚子湯かな  200912
 
     ・抒情味溢れる作品です。中七の巧みさ。心身を解放したゆとりがいいですね。
 
  同郷を気づかす妻の菜飯かな    200904
 
     ・最愛の妻の茶目っ気ある心遣いが、心憎いではありませんか。さぞかし同郷の郷里の
      話も弾んだことでしょう。諧味の利いた菜飯でした。

 
  菜の花や見えて隠れてランドセル  200803
 
     ・かわいい情景ですね。中七のフレーズに作者の優しさがうかがえます。
 
  泥化粧なれど嬉しき雪達磨       200801
 
     ・何と泥も混じった雪達磨の顔になっちゃった。温かい笑いが◎です。
 
  合鍵を贈物とすクリスマス        200712
 
   ・深読みは禁物。日常の中にも、想像力の伴う豊かな詩情は宿ります。
 
  あるときは金木犀の風になる      200710
 
   ・詩情ある作品でGOOD! 少し甘いかな(金木犀の匂いゆえ?)。
 
  鉄瓶に活くるとすれば吾亦紅      2007年9
 
   ・なるほど! 一読膝を叩きます。かような一瞬の納得が詩です。
 
  幾千の酢甕の影や星月夜        20069
 
     ・満天に輝き満ちた星、多くの酢甕を見守ります。句姿良く、抒情◎。
 
  蒼白き枯野の底や通夜帰り       200412    
 
   ・感覚的な詩的断定表現に、通夜帰りの深い悲しみの心境が窺われます。
 
 
【入選】
   
  宴席の喧騒遠く庭蛍             2010年06
   
  ユングフラウ窓開放の初夏の旅    2010年05
     
  しぐるるや古道具屋の店じまい      2009年11
   
  隣り家のいまだ戻らず秋の暮     2009年10
  
  新緑や療養の床までみどり      2009年5
 
  焼つけし屋号ごと喰う草の餅       2009年3
 
  よく笑う嫁でありけり蕗の薹        2009年2
  
  主のいない子らの机に飾餅       2009年1
  
  ひとり寝に迷い蛍の寄りて来る     2008年6
 
  細道に女郎蜘蛛待つ関所かな     2008年5
 
  蓮華草厩は馬の売られけり       2008年4
 
  恋猫の10時過ぎたる朝帰り       2008年1
 
  退職日津々浦々の青田波       2007年8
 
  学童の声のみが行く霧の朝      2006年9
  (南日本新聞・南日俳壇 今井千鶴子選)
 
  働きて夜半に物干す冬の月      20051
 
  大根噛む青首ほどの若さかな     200411
 
  赤々と猿酒に酔う狐宿          200410    
  
 
【ネット句会(Slownet サークル句会)高得点句】
 
  芹洗ふ富士千年のもらひ水         2013年02
   
  残菊や昭和のまゝの置き薬         2012年11
      
  黒々と潮の流れや島椿            2012年02
   
  ころころと笑ふ嫁来ておでん鍋        2012年01
     
  しぐるるや町家のなかの芝居小屋     2011年12
   
  吊るし柿ドレミドレミと提げにけり     2011年11
  
  掬われて家族となりし金魚かな     2011年08
 
  親もまた子から巣立ち日卒業歌       2011年03
 
  百年の駅舎仰げば天の川            2010年08
  
  天空に投げてはじまる田植祭        201006
  
  幸せの数ほど金魚買いにけり        2010年05



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