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(5月)
麗らかや子と覗きゐる万華鏡
寡黙なる父の晩酌目刺添ふ
再会や桜蘂降る木の驛舎
田の神の紙垂新しく花の冷え
たらの芽といふ忘れもの終電車
(4月)
書き掛けの便箋で折る男雛
ミモザ咲く土曜の午後のカレー店
霾風に座す千年の磨崖仏
隧道の出口入口やま椿
薬袋の蝌蚪の紐めく退院日
(3月)
豆まきや炉ばたの猫の深ねむり
節分会土鈴いただく当りくじ
門前の閑ある屋台梅三分
冴え返る御堂の床の昼灯
藩政の切石疏水つくし出づ
(2月)
落日の東シナ海朱欒の実
復興の宙を自在に肥後の独楽
初夢は湯葉を頂く二年坂
雑炊の膳に乗り来る計算書
風呂焚きのひょっとことなり女正月
(1月)
石垣のぬくもり日和冬いちご
一角に子らの賑ひ暮の市
しぐるるや客の絶えたる五家荘
二日目の鰤大根と古女房
銀ぶらや屋台ですする薩摩汁
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