俳句コラム | ・うすき雛めぐり | ![]() |
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− うすき雛めぐり −
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九州は雛の国。毎年2月から3月にかけて九州各地でひなまつりが開催される。それぞれに特徴がある。 大分県臼杵市の「うすき雛めぐり」を訪ねた。臼杵は、元々は大友宗麟の城下町だったが、関ヶ原の戦いの武功により美濃から商人たちを引き連れて稲葉氏が入封して以来商業の町として栄えた。今も醸造会社がみそ・しょうゆを、製薬会社が風邪薬を製造している。国宝・臼杵石仏、二王座歴史の道、龍原寺の三重塔、野上弥生子文学記念館、早春賦を作詞した吉丸一昌の記念館など、武の国薩摩とはまた一味違った雰囲気の歴史や文化に魅せられる。 その臼杵のひなまつりの特徴はいっさいが紙の雛であることだ。平面的な和紙製の雛が藁束の台座に竹串で挿されて一つの会場に五百組千体余りも並ぶ。手間暇かけて一体ずつ手づくりした丁寧さと雛の数が会場を華やかにしている。立体的ないわゆる衣装雛は町中一体も見当たらない。 千体の千の影ある紙雛 商業で繁栄した臼杵の旧家の石蔵は頑丈だ。そんな臼杵の雛が紙の雛だけなのは藩政時代に出された質素倹約令に由来する。お供えの菱餅も桃色は贅沢とされ、緑色のよもぎ餅と白餅だけが許された。 錠前の重たき蔵や紙の雛 東部が豊後水道に面した臼杵は、ふぐ料理が有名だが、その日は投宿したビジネスホテル風の宿で鮮魚のお造りを頂いた。 雛の夜や手酌よろしき海の幸 【備考】 (1)本コラムは、2023年(令和5年)2月22日(木)の南日本新聞の「俳歌吟遊」に掲載されたコラムでです。 (2)下記のページで「うすき雛めぐり」の写真はみれます。 旅行記 ・うすき雛めぐり − 大分県臼杵市 |
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