俳句選評2 ワシモ(WaShimo)の気ままに俳句  


 南日俳壇
(南日本新聞の第2、4木曜日付の「読者文芸」欄に掲載された俳句です。
敬称略

  奪衣婆や彼の川に溽暑ありなむ   2025年7月24日 堀田季何選

  春灯や鰻の寝床より舞妓   2025年3月27日 堀田季何選

  薄氷の朝饒舌な客がくる   2025年2月27日 坊城俊樹選

  鉄道の運休四年冬ざるる   2024年12月12日 正木ゆう子選

  しぐるるは五木の辺り肥薩線   2024年12月12日 正木ゆう子選

  芯ずれのコンパス円弧開戦日   2024年12月12日 堀田季何選・評
    開戦に至る危うさを思わせる。

  耳鳴りに久遠の宇宙夜長し   2024年11月14日 堀田季何選・評
    つらい耳鳴りも、「久遠の宇宙」と感じれば、夜長の時間に空間的奥行きが生まれる。

  師に倣い鑢は鬼目夜学校   2024年10月10日 堀田季何選 

  夜の静寂は饒舌や星の恋   2024年8月8日 堀田季何選・評
    <雪だるま星のおしゃべりぺちゃくちゃと 松本たかし>とはまた違う趣がある。

  白南風や余白ばかりの置手紙   2024年7月25日 坊城俊樹選
 
  読みかけのアガサ・クリスティ蚊遣豚   2024年7月25日 堀田季何選・評
    蚊帳や渦巻状の線香でなく、蚊遣豚としたところに妙味がある。話は山場を迎えたか。

  学童の声のみが行く霧の朝   2006年9月28日 今井千鶴子選


 トンボロ芸術村コンテスト(俳句部門)
 「トンボロ芸術村コンテスト」は、甑島(鹿児島県薩摩川内市)の豊かな自然・風土を素材とした作品及び甑島の海や島や暮らしをイメージする作品を募集する芸術コンテストです。

  トンボロに向きたる磁針鳥渡る  第28回(2023年度)大賞

 季語は鳥渡る。季節は秋。俳句では秋になって、日本へ渡って来る鳥、鶴や鴨や鶫(つぐみ)や鶸(ひわ)などの、群れて渡ってくる鳥を渡り鳥として句を作る。ところで、地図もないのに渡り鳥たちは、間違いなく目的地へ到達する。渡り鳥は磁場の方向を測るのに用いる磁針を備えているという。間違いなくトンボロへ渡ってくるのだ。ところで、トンボロを故郷とする人達にも、磁針があるのかもしれません。決して、故郷を忘れることはないのだろうと言うような、俳句の裏にある作者の思いを感じ取れます。作者もまた故郷があり、故郷を思いながら暮らしている一人なのでしょう。(園田千秋・選評)more

  鳩十の犬の遠吠え星月夜  第27回(2022年度)奨励賞

 ※児童文学作家・椋鳩十(1905〜1987年)は、甑島の野犬たちをテーマに作品を書きました。下甑島に文学記念碑『孤島の野犬』像が建立されています。

  トンボロは風の遊び場秋あかね  第22回(2017年度)KKB鹿児島放送賞

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