コラム | ・夜這い星 |
− 夜這い星 −
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今年もペルセウス座流星群に関する記事やニュースが目につきました。流れ星は、大気との摩擦によって灼熱(しゃくねつ)発光した宇宙塵がその正体です。多くは大気中で燃焼し尽しますが、燃えきらずに地上に落ちたのを隕石(いんせき)、あるいは星屎(ほしくそ)といいます。 アンデルセンの童話『マッチ売りの少女』で、少女は、死んでいくのが自分だと気づきもせず、流れ星が流れるのを見て、自分を可愛がってくれた祖母が『流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なんだよ』と話してくれたことを思い出します。 また、中国の『三国志』では、魏(ぎ)の将軍・司馬仲達(しばちゅうたつ)が、大きな赤い流れ星が東北から西南に流れ、蜀(しょく)の陣地に落ちていくのを見て、諸葛孔明(しょかつこうめい)が死んだといって喜ぶ場面があります。 つまり、人々は夜空に浮かぶ星を人間の体から抜け出した魂だと考えていたのです。他の星に縁を切られて落ちていくことから、流れ星を『縁切り星』といったり、他の星に嫁いでいくという意味で、『星の嫁入り』といったりすることもあるようです。 『よばい』(夜這い、婚)という言葉があります。夜中に男性が女性の寝室に忍び込んでいくことをいいますが、そもそも『よばい』は、呼び続ける、言い寄る、求婚するという意味の『呼ばふ』が語源で、本来は『婚』という字を当てていました。 というのは、元来、男が女の所に通う婚姻形式が一般であったのが、のち嫁入り婚が支配的になると次第に不道徳なものと考えられるようになり、『夜這い』などと解されるようになったのです(goo辞書より)。 恋しい恋しいと思い続けた男性の魂が抜け出して、夜好きな女性の許(もと)へ流れ落ちて行く姿に例えられて、流れ星のことを『夜這い星』ともいいました。清少納言は枕草子に、『星はすばる。ひこぼし。ゆふづづ。よばひぼしすこしをかし。尾だになからましかば、まいて。』と書いています。 すばるは、おうし座のプレアデス星団。ひこぼしは、七夕の彦星、すなわちわし座のアルタイル。ゆふづつは、漢字で夕星と書いて、宵の明星、すなわち金星。そして、よばひぼしは、流れ星のことです。 つまり、『星といえば、まず、すばる。彦星や宵の明星もいい。流れ星も興味深い。でも尾がなければもっといいのに。』という意味で、夜這いだというのに明るい尾っぽなどを引いて、人目に留まることがなければいいがなといっているのです。 流れ星は、8月中ごろに最も多く見られることから、俳句では秋の季語になっています(立秋、すなわち8月7日頃を過ぎれば俳句ではもう秋です)。 寝語りも一枚毛布星流る 吉田鴻司 恋人は見ざりしといふ流れ星 遠藤若狭男 旅果てのたましひは風夜這星 丸山海道 まだまだ残暑厳しい日の夜です。流れ星にまつわる、ちっぴり艶っぽい話しでした。 |
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2007.08.22 | ||||
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