コラム | ・俳句鑑賞『闇汁(やみじる)』 |
− 俳句鑑賞『闇汁(やみじる)』 −
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寒い冬には、暖を取る食べ物として鍋物、汁物が欠かせません。よって、寄鍋、鮟鱇(あんこうなべ)、牡丹鍋(猪鍋)、粕汁(かずじる)、根深汁(ねぶかじる)、蕪汁(かぶらじる)、干菜汁(ほしなじる)、のっぺい汁、狸汁、河豚汁(ふぐじる)など、軒並み冬の季語になっています。 やはり冬の季語ですが、闇汁(やみじる)というのがあります。『闇汁会などといって、気のおけない仲間が集まって、灯を消した室内で、持寄ってきた食物を鍋の中に手当たりしだいに放り込んで煮て食べる。食物の名を当てたり、思いがけぬものにあたったりするのを愉しむ。座興であるが、集うものたちの親しさがにじむ。』などと、俳句歳時記やネットの季語解説にあります。 わが古女房殿はいったい何を入れたのでしょうか? 驚かしてやろう、一泡吹かせてやろうと持参し、しめしめと思って鍋に入れたものを、自分が掬ってしまった。苦笑するやら、吹き出すのをこらえるやら。 闇汁に古女房が入れしもの 京極杞陽 闇汁のわが入れしものわが掬ひ 草野駝王 金鍔(きんつば)とは、きんつば焼きの略称で、うどん粉をのばしたものであんをつつみ、刀のつばのように平らに焼いた和菓子。和菓子が入っていたり、バナナが入っていたり。 闇汁に金鍔入れし人や誰 会津八一 闇汁のバナナゆるゆる煮えてきし 辻桃子 何でも大きいもの志向の人。しかし、大きいから常にいいとは限りません。大きくって手に負えないものって往々にしてあり得ます。杓子(しゃくし)に掬い応えのあるものを感じた、しかし何度試みでもするりと逃げてします。そうなるともう気になって仕方がありません。 闇汁の最も大きものすくふ 高橋悦男 闇汁の大きなものをそと戻す 小田沙智子 闇汁の杓子を逃げしものや何 高浜虚子 闇汁の闇の雰囲気もまた面白い。わが足を踏んだ柔らかい足は間違いなく女人の足だった。女人のあたりはほんのり明るい。食べるより気になってきます。これもまた楽し。確かに、闇汁会に眼鏡はなくっても支障ありません。 闇汁の足やはらかく踏まれけり 岸風三楼 闇汁の女人のあたりほの明し 細川加賀 闇汁のほのうす暗に眼がありき 山崎虎行 闇汁の闇に眼鏡を外しけり 山崎秋穂 どんな事件が起きたのでしょうか。事件記者と闇汁の取り合わせが実におもしろいですね。こんな句が詠めたらいいなー。それにしても、唐がらしをぶち込んだら、さすがに『The END 』に違いありません。 事件あり記者闇汁の席外す 宮武章之 唐がらしぶち込み闇汁終りしと 岡田日郎 |
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2017.01.25 | ||||
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