レポート | ・魚付林(うおつきりん) |
− 魚付林(うおつきりん) −
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旅には、旅先の風景や風土、歴史、文化といったものに直に接することができるというほかに、今まで知らずにいたことを知るきっかけに遭遇するという醍醐味があります。『魚付林』も最近旅先で知った言葉です。 京都府の北端、丹後半島の東端に位置する伊根湾の周囲5キロメートルに沿って 230軒もの舟屋が建ち並ぶ伊根の町並みは、平成17年(2005年)に、漁村では全国初となる『国の重要伝統的建造物群保存地区』に選定されました。 その町並みを説明した現地の案内板に、『舟屋と主屋等からなる江戸末期から昭和初期にかけての町並みは、伊根湾や青島及びこれらを囲む魚付林という環境とあいまって独特の歴史的景観をいまに伝えている』とありました。旅行から帰って早速調べてみました。 昔から、漁業を営む地域では、海岸近くの森林が魚を寄せるという伝承があり、そのため海岸林や離れ小島の森林を守って来た歴史がありました。岬の岩場の森林や湾内の小島の森林に鳥居やほこら、あるいは神社を建てて、立ち入りを制限するなどして、一定の保護を行って来た場所がたくさんありました。 森林は風当たりを弱め、魚が集まる木影を提供し、木につく虫や微生物が水中に入って魚の餌となるなど、人々は、魚が集まる効果(魚つき)を経験的に認知し、海岸斜面に存在する森林を魚つき林と呼んできました。 そして、そのような形で残されてきた森林を法的に保護するために森林法で定められたのが『魚つき保安林』で、2011年3月現在、約 6.0万haが指定(他の保安林との重複指定を含む)されているそうです。 さらに近年、海岸の岩礁に海藻が生えなくなる『磯焼け』と呼ばれる現象は、実は山奥の森林の荒廃が進むにつれ、海へ流れ込む成分が変化したためではないかと言われるようになるなど、川の源流を守ることが漁業を守ることにつながるとの認識が持たれるようになり、海岸部に存在する森林ばかりでなく、河川上流部の森林も含めて『魚つき林』と言われるようになりました。 宮城県気仙沼市唐桑町の漁民の集いである『牡蠣の森を慕う会』は、気仙沼湾に注ぐ大川の上流域に広葉樹の森を作り始めるなど、『森は海の恋人』を合言葉に、森と海のつながりを取り戻す運動を展開しているそうです。
(1)魚つき林 - Wikipedia (2)牡蠣の森を慕う会 - Wikipedia (3)EICネット[環境用語集:「魚つき林」 (4)解説シリーズ - 森林総合研究、沿岸生態系:森林の魚つき機能 |
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2015.12.02 | ||||
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