コラム  ・スズランの実   
− スズランの実 −

八王子市にお住まいのせっちんさんから、『21日の雪の庭・スズランです』という題名で、2枚のスズランの実のイラストをお寄せ頂きました。葉はすでになく、すっかり立ち枯れた茎の先端に、熟れ過ぎた赤い実が半ば萎(しな)びてうなだれています。


『いつもはスズランが咲き終わると次のお花のために片付けてしまうのですが、今年はスズラン・ギボウシ・ホトトギスなど少しずつ観察してみようかな〜と残しておきました。雪の朝のスズランと雪の降る前のスズランです』とあります。


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単調な入院生活をしている患者さんの慰めにと、日本赤十字社は、ANA(全日空)の協力を得て毎年北海道からスズランを空輸し、各地の赤十字病院に届けています。6月初めになると、鹿児島の日赤病院にも白い可憐な花をつけたスズランが届きます。


そんなこともあって、南国に住む者も、身近にない草花ではあってもスズランの花は知っています。でも、実がなることは知りませんでした。花が咲けば実がなることは、言われて見れば当たり前のことですから、知らなかったというよりむしろ、可憐な白い花が余りにも印象的なため、実のことまで思いが及ばなかったというのが本当のところでしょう。


ですから、せっちんさんのイラストも最初はピンときませんでした。そこで、調べてみて、花が咲いたあと6月頃に青々とした実がなり、11月頃には、ちょうど黄色の千両の実のように色づき、12月には熟した柿の実のような赤になり、そして1月末、せっちんさんのスケッチのような枯れた佇まいを見せることを初めて知りました。


・スズランの実の四季
   → http://washimo-web.jp/Information/Suzuran.htm


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宮沢賢治の童話に『貝の火』というのがあって、そのなかにスズランの実がでてくることも知りました。川でおぼれそうになったひばりの子供を命懸けで助けたウサギの子供ホモイは、お礼に『貝の火』という宝珠と権力を得ます。しかし、ホモイは慢心をおこし、権力を悪用し始めます。そのために、宝珠は輝きを失いやがて砕け散って、その粉でホモイは失明します。


その童話の中で、ホモイがお母さんのお手伝いに集めてくる食材がスズランの実です。スズランの青い実は、しゃりんしゃりんと鐘のように葉を鳴らします。さわやかで、少し肌寒いぐらいな東北や北海道の初夏の頃を想像してみました。


あの白い可憐な花のスズランが青々とした実をつけ、やがて色づき、翌年1月の雪の時季まで、それぞれの季節を演出してくれることは、本当に思いも寄らぬことでした。そして、さらに冬を耐え、やがて雪を割って新しい芽が出てくるのでしょう。


【備考】
・せっちんさんのHP『ちえこのスケッチ日記』のアドレスは、下記の通りです。
   → http://homepage2.nifty.com/secchin/
・宮沢賢治の童話『貝(かい)の火』は、青空文庫で読むことができます。
   → http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1942.html


2006.02.15
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