雑感 | ・ 中途半端なすき間 |
− 中途半端なすき間 −
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すき間(隙間)は、英語で『 an opening 』、つまり、物と物との間のあいている所のことで、すき間産業とか、すき間風が吹くなどと、抽象的な意味合いで使ったりもします。 機械装置の軸と穴の嵌(はま)り合う関係を、『はめ合い』といいます。軸の大きさ(外径)より穴の大きさ(内径)が小さいと、組み込みが出来ないばかりか、組み込めても軸がスムーズに回転できないので、穴と軸の間にはすき間が必要になります(図1 軸と穴の間のすき間)。下記アドレスをクリックして、参考図をご覧下さい。 ・参考図を見る → http://washimo-web.jp/Report/Sukima/sukima.htm しかし、すき間が大き過ぎるとどうでしょうか。回転するとき軸がガタついて精密な機械となりません。すなわち、はめ合いにおけるすき間は最適な大きさに設計されなければなりません。 一方、機械や装置の安全性を確保する上で、すき間の大きさが大変重要になることがしばしばあります。例えば、機械の前に立って人間が作業する場合に、足元付近で上下移動する扉(とびら)などがあって、それが下降したとき、足元に足の甲の高さより小さなすき間が生じるとしたらどうでしょうか(図2 足元のすき間)。 すき間で足先を詰めて(つぶして)しまう危険性があります。つまり、この場合には、すき間は足の甲の高さより十分大きくなるように設計されなければなりません。 ベルトコンベアの、移動するベルトと固定されたガイド側板とのすき間についても同様のことがいえます。手の指先が入るか入らないかぐらいの中途半端な大きさのすき間があると、コンベアへ荷を積み下ろしする際、作業者がすき間に指を詰めて(巻き込ませて)しまう危険性があります。すき間は指先より十分小さいか、逆に十分大きい寸法に設計されなければなりません(図3 ベルトコンベアのすき間)。 エスカレータの手すりと建物などの壁とのすき間(水平方向の距離)が50cm以下だと、人間が身を乗り出したとき巻き込まれる危険性があるというので、2000年に、建設省(当時)は告示を出し、事故防止のため固定式保護板を設置するよう義務付けました(図4 エスカレータと壁の間のすき間)。 ところが、2007年10月16日、神奈川県平塚市のスーパーで、小学三年の男児(9つ)が、エスカレータの手すりと事故防止のために取り付けてあったアクリル製の固定式保護板とのすき間に頭部をはさまれ、重体となるという事故が起きました(図5 事故が起きたエスカレータの危険防止用アクリル板)。 男児はエスカレータの外側に落とした硬貨を拾おうと手すりから身を乗り出し、保護板と手すりのすき間(14.5cm)に頭部をはさまれたということですから、50cmの中途半端なすき間を埋めるためにわざわざ設けた保護板が、14.5cmというさらに危険なすき間を作っていたということになります。 私たちは、仕事のときだけでなく、日常生活でも機械や装置と共存して行かなければなりません。機械や装置を設計する人は、機械や装置の機能・性能を確保するために必要なはめ合いにおけるすき間の大きさと同様、安全性を確保するたのに必要なすき間の大きさということにも十分に注意を払わなければなりません。 |
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2007.10.24 | ||||
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