コラム  ・新月伐採   
− 新月伐採 −
著者の住む集落には、30歳前後から65歳までの男性で構成された壮年団という組織があって、三本矢旗という太鼓踊りの伝統芸能を継承しています。18名の太鼓打ちが三本の竹竿の頂上に矢旗の飾りをつけたものを背負って踊れば、その先頭を先払いと5名の鉦打ちが行くという踊りです。
 
先週、その壮年団の秋の総会がありました。来年(2013年)は3年に一度の踊りの年だから、矢旗の竹を新しいのに取っ替えようということになり、いつ竹を伐るかが議題になりました。
 
当然、あっきゃげ(秋上げ、秋の収穫を意味する方言)が済んだ11月中旬以降だろうということで落ち着きましたが、林業を仕事にしている一人の団員が、満月の日より新月(満月と正反対の、夜空に月が見えない日のこと)に伐った方が良い、木材も新月に伐ったものの方が数割も値が張るといいます。
 
確かに、先人たちは、陰暦(月の満ち欠けを基準にした暦)を頼りに、種を蒔き、苗の作付けをし、収穫するなどの農事をやってきましたが、へぇ〜、林業にもそういうことがあるんだろうかと半信半疑です。そこで、帰宅して早速ネット検索してみると『新月伐採』(しんげつばっさい)というのがあって、かなりのページが検索されました。
 
新月伐採とは、秋から冬の下弦の月から新月に至る1週間ほどの期間に木や竹を伐採することであり、新月伐採した木材は、デンプンの含有量が少なく、そのために腐食しにくく、カビに強い、害虫に強い、割れ・狂いが生じにくい、燃えにくいなどの利点があるということで、業界では一種のブームになっているようです。
 
質量を持った物体は、すべてのものがお互いに引き合うという、いわゆる万有引力の法則があります。私たちは、とてつもなく大きな質量を持った地球に引っ張られていて、そのため宇宙に放り出されずにすんでいます。
 
月や太陽の引力も受けていますが、遠く離れているためその大きさは小さく、私たちはそれを感じることはありません。しかし、海水は月の引力の影響を受け、満潮と干潮があることは周知の通りです。満月のときは地球と月と太陽が一直線に並びます。このとき、月の引力に太陽の引力も加わって、潮の満ち引きが最大になります。
 
潮の満ち引きと同様、地球上の生命体のリズムも月の満ち欠けの影響を受けているのではないかと考えられてきました。満月の頃には、月の引力が人間の血液や体液をも引っ張り、神経が活性化するから、普段よりも水分をはじめ、栄養素や薬や添加物など、体が何でも吸収しやすくなる、などと、サプリメントやダイエット食品関連などのサイトにあります。 
 
一方、新月の頃も地球と月と太陽が一直線に並び、潮の満ち引きが最大になりますが、下弦の月(欠けていく時の半月)から新月にかけての期間は、吸収力が下がり、むしろ体内からの放出・排出作用が強くなる、などとあります。
 
だとすれば、新月伐採の木材や竹に水分やデンプンの含有量が少ないというのもうなずけない話しではありませんが、これとて裏付けがあるわけではないでしょう。新月伐採に懐疑的あるいは否定的なサイトも結構あります。真偽のほどはどうなのでしょうか?
 
確かなことは、これから中秋の名月(2012年は9月30日)となり、月の綺麗な時季になるということ、そしてわが壮年団の竹の伐採はおそらく、闇夜の日に行われるだろうということです。気力も食欲も充実した十五夜の夜、あなたの家庭ではどんなお供えをなさいますか?

 

2012.09.26  
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.−